日常
俺は今何をやっているのだろう。
何を目的として生きているのだろう。
人の生において何かしらの目的が存在したならばそれはとても充実するものとなるのだろう。しかし、目的が存在したとしてもそれを理解していなかったり、それを達成する意欲がなければ意味をなさないのではないだろうか。そもそも達成することで得るものがあるとないとじゃ意欲がまるで違う。つまり目的を達成するためにもまた目的が存在して・・・・
だめだ、とりあえずベッドから出よう。
既に太陽が空のてっぺんにさしかかろうとしていた。実は2時間ほど前に目は覚めていたが、とても無意味な議論を頭の中で繰り広げて時間をただ浪費していた。
俺にはやることが無い。故に一般的には考えないような理論を思いつき、それを構築していくことに対してもそれなりに意義を見出すことは出来た。
簡単に食事を済ませて、セインは外に出た。それからこの国のシンボルであるウェルバ時計台のある広場まで散歩をし、陽が沈むころに帰って来る。この行動は日付が変わろうとも、特に何も無ければ変化しない。彼にとってこの変化しない状況こそが充実している証拠であり、有意義な時間といえるのだ。
時計台まではかなりの距離がある。
俺が住んでいる家、と言えるのだろうか。10人いれば3人は家と言わないかもしれないくらいボロい。そういう意味では様々な解釈ができて表現のしがいがあってとてもいい家だと思う。先祖代々に渡って受け継がれている由緒正しい家であり、今は一人で住んでいる。立地はというと、国の西の端に位置している。近くには国を囲む巨大で忌々しい壁が存在する。こんなに近くにあるとなんだか壁と共に過ごしているような気がしてイライラしてしかたがない。でも城下町に住むだけの金がないからしかたがない。
そして家の回りには壁以外に何もない。城下町に向かうまでに田畑が約800メートル続くのだ。農作業をする役人達を横目に見ながらひたすら歩くと、やっと誰もが家と呼ぶであろう建物が何百に渡って続く城下町が見えてくる。
城下町に着いてからも道のりは長い。時計台までは約3㎞ほどであり、歩けば40分ほどであるが、実際はもっとかかる。なぜかというと、露店が並ぶ区域を二回ほど通過しなければいけないからだ。どれだけルートを考えても避けることはできない。草木も眠る時間ではない限り、そこは人でごったがえす。それを避けながら進まなければいけないのでロスタイムが生じるのである。
今日も案の定人で溢れかえっていた。しかもこの時間帯がこの区域の賑わいのピークである。
空を飛ぶことができる魔法を使うことが出来ればなと俺はここを通る度に思う。しかしそんな魔法など誰もが使えるものではない。この国は魔法というものが当たり前のように使われているが、空を飛ぶといったような人の能力を超越するような魔法は、魔力の効率が悪すぎて誰も使うことがないのである。
まったく、本当につまらない世界だ。