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一航艦司令部機能喪失(後)

「赤城」艦橋に敵機が突入したことにより一航艦は重大な危機を迎えます。

この惨状を目のあたりにして羅針艦橋にいた上級指揮官達が無事なはずはなく戦死傷は確実とみられ、

一刻も早く生存者の捜索と救助にあたらなければならない。

増田中佐はこの一大事に最先任の自分が指揮を執らなければならないとあらためて気を引き締めなおし、調度上がってきた、航空隊の村田少佐達には艦橋での捜索救護活動を引き継ぎ自分は被害拡大の防止と格納庫内の飛行機、飛行甲板の損傷状況の確認を最優先で行うことを決め生き残りの艦橋伝令に各部署に伝達させた。

本来被弾時などの応急防御戦は副長の鈴木中佐が総指揮官であったが艦橋にあってこの事故に巻き込まれたため、次席の運用長の土橋中佐が炎と煙の中鬼のような形相で「火を消せー これ以上延焼させてはならん!」と辺りを駆け回りながら叱咤しており直ぐに消火栓が開かれ応急員がホースを曳いて走って来るのが見えた。その間にも「艦橋大破 艦長戦死 次席指揮官は増田中佐!」「運用長より復旧作業の指揮を執る総員防火配置に付け」「消火栓全開」「航海士及び操舵手至急予備艦橋へいそげ」「救護班艦橋へ」等号令、怒号が飛び交った。

航海長を失った艦は右への高速回頭を続けているが操舵室も被害を受けたのだろうか、艦尾方向に目を向けると駆逐艦「嵐」が左舷後方から様子を窺いながら接近してくるがこちらとの通信ができず操艦が及び腰である。

艦橋付近では消火活動と負傷者救助が本格化し飛行甲板をホースが縦横に走り延焼を食い止めようと乗組員手空き搭乗員総出で必死の作業が行われている。

「下の操舵艦橋に誰か生存者がいるぞ、手を貸してくれ工作士金切鋏、衛生兵来てくれ!」滅茶苦茶に破壊された艦橋内に飛び込み兵達と生存者の捜索にあたっていた村田少佐が大声で叫ぶ。

その時赤城の艦橋構造物の前部は敵機の激突による衝撃で、防空指揮所と羅針艦橋の床がなかば抜け落ち設置されていた各種機器と居合わせた人達ともども階下の操舵室に一瞬のうちに崩れ落ちた。

その為階下の操舵室では多くの人々が構造材や配管・機器に押し潰されておりとても生存者がいるとは思えない状況であったが、一部僅かな隙間に人々が折り重なるように斃れておりその中からうめき声が聞こえ生存者が発見された。これは激突したB26Aの燃料による火災が艦橋周辺で発生し当然艦橋内部も炎上していると思われたが、前部が半壊した艦橋内部では多少の延焼があった程度で済んでおりこの事が生存者発見に繋がったと思われる。

そしてその生存者の中に全滅とみられていた一航艦幕僚の南雲司令長官と草鹿参謀長以下何人かが瀕死の重傷を負いながらも奇跡的に救出されたのだ。ただし全員が凄まじい傷や火傷を負っており、とりあえず被害を免れた飛行甲板に運びだされ寝かされていくが焦げと煤と血で汚れ意識も無い状態であり一航艦司令部がその機能を喪失したことは誰の目にも明らかであった。

当初猛烈な勢いで燃え上がった飛行甲板の火災は撒き散らされた燃料が燃え尽きるのと消火作業が進むにつれ徐々に減勢してきており、懸念された格納庫等への延焼も防げそうである。

艦載機発着艦再開に向けての飛行甲板及び発着艦装置の修復作業を土橋運用長とその部下の掌運用長の近藤特務少尉が中心に打ち合わせを行い集まった兵達に指示している。

また予備艦橋が開設され操舵士が航海士の指示のもと艦隊陣形の定位置に復帰する様操艦を再開した。

艦橋は大破し司令部幕僚や艦の主要幹部などを失ったことは痛恨の極みであるが被害が艦橋周辺に限定されていることが分かるに連れ、次は俺たちの番だとの気持ちが艦内に高まり今までとは違う活気が生まれ始めていた。


戦場ではたえず想定外の事が起きます、それがどう結果に作用するのかは終わった後で初めて分かることでその瞬間には誰にもわからないことなのです。

その当事者達がその後取った(取らなかった)行動が結果なのです。

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