「凄い威力だ!」
手ぐすね引いて待ち構えていた米軍の攻撃が一航艦に始まります。
午前7:07 敵攻撃機 第一航空艦隊上空に飛来
午前5時半位からPBY飛行艇の触接を受けいまだ攻撃が無いことに不気味さを感じていた一航艦であったが
ついにミッドウェー島からの敵攻撃隊が来襲し艦隊直援機との戦闘になった。
最初に突入してきたのはL・K・フィーバリング大尉率いる米海軍第八雷撃隊のTBF六機とジェームズ・F・コリンズ大尉の米陸軍航空部隊第七航空隊分遣隊のB26A四機であった。この二隊はどちらも新型機でMK13航空魚雷を装備した雷撃隊であったが護衛戦闘機は随伴しておらず多数の零式戦闘機が待ち構える中に飛び込んでくるのは無謀な攻撃に思えた。
しかし彼らは勇敢であり第八雷撃隊のTBF六機は「赤城」「蒼龍」を第七航空隊分遣隊のB26A四機は「赤城」を目標に定め突入してきた。
上空援護の零式戦闘機隊は前後左右から手あたり次第に機銃弾を撃ち込みTBFは六機とも雷撃射点に到達する前に撃墜破された。
蒼龍上空直援隊の原田一飛曹は敵機が大型の単発機であると認めると僚機とともに後方上方より接敵し攻撃に移った。
敵機はまだ塗装もきれいな青灰色のずんぐりした中翼機で新型の艦上雷撃機のようであり、
「やはり敵空母はいやがったしかもこちらより先に攻撃してきた」と一気に劣勢に立たされた様な気になり
早くこちらも攻撃隊を出さないと負けてしまう気がしたと回想する。
敵は三機編隊で「赤城」を目指しているが技量が高くないのか編隊は崩れかけている。
後方機銃手が恐怖に駆られて闇雲に射撃してくるがフットバーを軽く踏みこみ機を横滑りさせているため
敵は無駄弾をばら撒いているだけで全く脅威にならない。
スロットル全開だと速度差が大きすぎるため少し緩め左翼機に左上方200mあたりから7.7㎜を撃ち込む
軽快な発射音と振動そして火薬の臭いを残し高速の曳光弾が左翼の後方を流れていく。
操縦稈を僅かに引き微調整すると翼に当たり出したが半分位は跳弾となっている、後方銃手が一瞬前方に振返り何か叫んでいるのが見えるが構わずそのまま20㎜機銃の発射レバーを握った。
その瞬間いつも弾が暴発するのではと変な不安がよぎり緊張するが暴力的な振動と腹に響く射撃音が身体を包み込む。
太い火弾は敵機に白煙を曳きながら迫り敵機の左翼が折れ飛ぶ光景を期待するが当たっていない様だ。
機銃に問題があるのか弾丸に問題があるのか明後日の方に飛んでいく弾も結構ある。
「銃口を相手につけるくらいで撃て」教官の言葉を思い出し苦笑いしながら緩めていた
スロットルを全開にして距離100mで再度両翼の20㎜機銃をぶっ放なす。
「命中!」今度は敵機の両翼に命中し爆発光と白煙そして大小破片が盛大に飛び散る「凄い威力だ!」、後方銃手は後席深くに潜り込んだのか姿が見えない。
そのまま左後方から前方下方に降下しながら敵機の被害状況を確認したくて見上げると左翼中央に大穴が二つ空いているのが見えるが、敵機は火も煙も出ていない感嘆すべき頑丈さである。
思わず大声で「折れろ!」叫んだ瞬間、なんとその左翼が真ん中あたりから折れ飛んだ。
七十三年前の六月四日この日は日本海軍にとって忘れられない日になります。
次話はその真実に迫ります。