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「よしっ一機撃墜確実!」

同時刻 攻撃隊後方上空 直援戦闘機隊

同時刻 攻撃隊後方上空 直援戦闘機隊

「何やってんだ制空隊は、早く定位置に戻れ!前方ががら空きだぞ」同士討ち一歩手前の騒動を攻撃隊の間近で見ていた「飛龍」戦闘機隊隊長の重松大尉は制空隊に舌打ちしていた。

が、次の瞬間どこから現れたのか突然友永指揮官機編隊の前方上方から敵機が突っ込んでくるではないか。

「しまった やられた!」一気に身体中のアドレナリンが沸騰、間髪いれずプロペラピッチを緩め スロットル全開にして味方に敵襲を知らせるべく機銃を発射しながら間に割り込もうとしたが、

その目前で敵機の両翼から射撃が始まり白煙が後ろに伸びあっと言う間に敵機は下方にすり抜けて行く。

「当たるな、当たらないでくれ!」という期待虚しく指揮官機含め二、三機が破片と白煙を吹くのが見えた。制空隊を舌打ちしていた自分を恥じ「皆に合わせる顔がない」とひとりごちた。

「野郎絶対に許さん!」いっぽう元はといえば自分達の失態から指揮官機を守れなかった制空隊の怒りは頂点に達し素早く切り返すと我先に降下中の敵機を猛追していく。

後続の敵機も次々に降下してくるが、奇襲効果は既になく援護の定位置に占位した直援隊が威嚇しており先頭の編隊に比べると技量も低いのかおよび腰であり攻撃隊は上手く躱している様子だ。

奇襲後降下した敵機は第二撃をかけるべく降下から上昇に移ろうとしている。

そこに初動の遅れから立ち直り、自分達の自尊心を傷つけられた怒りと撃墜された仲間の敵討ちさながらの闘志むき出しの制空隊の零式艦上戦闘機がグラマンF4F、F2Aバファローに襲い掛かった。

攻撃隊、直援隊からはその光景がよく見えたが、その機動の違いは大人と子供の喧嘩の様であった。

気が付くと周囲は日本機だけとなっていて、攻撃隊からはこの時の戦闘機隊の活躍はまさに神様の様に見えたに違いない。


「加賀」制空隊の佐藤一飛曹は攻撃隊左翼前方を警戒飛行していたが、前述の同士討ち騒動の興奮冷めやらぬ中 突然始まった空戦に突入した。

空中戦になれば絶対に負ける気はしなかったと当時を振り返る。

第一撃後の敵F2Aバファローと少数のグラマンF4Fは第二撃をかけるべく降下から上昇に転じるところでありそれを追尾する形となった。自機と相手の位置関係から三機編隊のグラマン左翼機に狙いを定めスロットル全開赤ブーストで突っ込んだ、それに気付いた敵編隊は攻撃隊への突入を断念しブレイクし反転降下ていく。

それを見ながらも佐藤一飛曹は当初の狙いどうり左翼機を追う。

暫くすると敵は追尾に気づかず徐々に降下角を弱め上昇に転じて行く、後上方より緩降下で接敵しながらOPL照準器の中で大きくなる敵機の姿に興奮を覚えながら「気づくなよ もう少しだ」とあと二、三秒で射撃しようとした瞬間 敵は左に急旋回を始めた敵は無線電話で僚機からの警告を受けたのだろう 私も瞬時にフットバーを蹴り操縦桿を倒し左急旋回で追随するとともに素早く周囲を確認する、急旋回中のため首と腕に強烈な遠心力を感じるが「チャンスがピンチ」目の前の獲物を狙っている時が一番危ない古参搭乗員が口を酸っぱくして毎回いう言葉だ「いた!」上方500mに降下してくる敵機を発見した。

「やはりいたか、でも間に合わんよ」

経験からこのまま目の前の敵を射撃しても十分離脱出来ると見切り、降下速度を利用して距離を詰めさらに左旋回角を深め敵機の旋回半径の内側に食い込んでいく。

敵機は横旋回では不利と悟ったのか機体を切り返し、今度は照準を外そうと激しく機動する。

その為後方の敵機も気になりだしなかなか捉え切れない。

「ちくしょう!」焦る。左後方よりまだ少し距離があるが

「撃たなきゃ絶対に当たらんぞ!」いつも廻りに言っている口癖が脳裏をよぎる。

シザース機動から左に横滑りし照準を外そうとする敵機の鼻先10m程に見越しで機銃を撃ち込む。

「当たれ!」と同時に軽快な射撃音と振動と共に高初速の弾丸が曳光弾と白い煙の筋を曳きながら低伸。狙いあやまたず敵機は頭から弾の中に突入する形となり左側面のエンジンカウリングから操縦席にかけて盛大に火花と破片をばら撒き次の瞬間プロペラが吹っ飛ぶのが見えた。「よしっ一機撃墜確実!」今まで感じた事が無いような見越し射撃の手応えに興奮しつつ急いで左旋回で機体を捻りながら上昇旋回軌道に入った。

後ろ上方を確認すると後方の敵機は味方機の追撃を受けており、右下方に降下離脱していくのが見えた。

落ち着きを取り戻し全周警戒しながら高度を稼ぐべく上昇を続けるとミッドウェー島方向遠くに攻撃隊の編隊が見える。

編隊は大きくは崩れておらず迎撃戦もほぼ終了した様だ、その上空に戦闘機隊と思われる編隊も見える。

さらに周囲を警戒するとその攻撃隊の後方下方を同方向に飛行する単機が見えた。

送り狼か、後ろ上空の死角方向から接近すると単機はF2Aバファローであった。

そのまま増速し一気に距離を詰め様とするとまたしてもあと少しのところで気づかれたのか左旋回降下で逃れ様とする。

しかしこのF2Aバファローは搭乗員が新米なのか負傷でもしているのか悲しいほど機動が緩慢であり易々と旋回角の内側に入り込み降下速度を利用して一気に距離を縮めることができた。

敵機の挙動から操縦士の焦りと恐怖が伝わってくるなかOPL照準器の光の環からはみ出す敵機に4丁の機銃を軸線上に一連射する、照準を外そうと右に左に機動するが逆に速度が低下した上に被弾面積を増加させる形となり機体後部を中心に面白いほど機銃弾が命中し火花と破片が飛び散り煙が吹き出した。さらに距離を詰めもう一連射すると破片を撒き散らしながら左水平尾翼が根元から折れ飛び錐もみ状態で墜落し始めた。

一機目のグラマンとは全く違う拍子抜けする撃墜であった。落ちていく敵機を見ながら敵操縦士の脱出を期待するがすぐに雲の中に消えて見えなくなった。知らず知らずのうちにものすごく力が入っていた腕をほぐしながらも二機撃墜の興奮を伝えたくて誰が見ていてくれないかなと周囲を見渡すがはるか遠くに味方攻撃隊らしきものが見えるだけである。二度あることは三度あると全周囲への見張りを行いながらも、戦果をどのように申告しようか考えながら攻撃隊への合流を目指した。

空中戦は難しい。

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