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「ナグモのエリート中のエリート」

小林隊に続いて江草隊が「ホーネット」に襲い掛かります。

いっぽう小林隊と分離し前方の輪形陣を目指した江草隆繁少佐率いる蒼龍攻撃隊は敵輪形陣の手前上空で幸運にも敵戦闘機八機の迎撃を受けただけであった。

直援の零戦隊が攻撃隊後方上空から一気に増速し攻撃隊にバンクを振りながら突撃して行き、あっという間に敵迎撃機を蹴散らした。

これは当初日本軍攻撃隊が全力で「エンタープライズ」に攻撃を集中する様に見えたため「ホーネット」の上空直援機から四機を急遽応援に向かわせた為であった。

「ホーネット」艦長のマーク・A・ミッチャー大佐はこの時の悪夢をこう振り返る。

当初は艦隊直援のF4Fが敵攻撃機の半分位は撃ち落としてくれると信じて疑わなかったが、戦闘機同士の空中戦が始まると追いかけられ煙を吹きながら錐もみで落ちて行くのは味方戦闘機ばかりであり信じられない思いで上空を見上げていた。

そして日本機がまるで演習の様な綺麗な編隊を組み近づいて来たのを見たとき、銃殺されるのを待つ犯罪者の気持ちとはこの様なものかと達観した。

ミッチャー艦長は急いで「対空戦闘用意」を下令し砲術長に指揮を委ねた。

輪形陣の外周を形成する巡洋艦、駆逐艦が早くも上空に向け猛烈な射撃を開始し青空一杯に白い筋を曳く機銃弾と高角砲弾が炸裂し黒い花を咲かせ始めた。

その護衛艦艇のなかでも「ホーネット」右横1500mに布陣する軽巡「アトランタ」はMk.37 砲射撃指揮装置とMk.4射撃指揮レーダーから得られる目標の未来位置に向けて5インチ両用砲を振り立て砲煙で艦影が霞むほどの激しい射撃を行っており、輪形陣に接近してくる日本機を片っ端から撃墜していく様な勇ましさに見えた。

「ホーネット」艦橋前部に設置された二基の28㎜四連装機銃も敵機を射界に捉えたのか暴力的な射撃音と白煙を盛大に奏でながら右舷後方上空に向け射撃を開始し

銃座の周りはあっと言う間に撃ち出された薬莢で埋め尽くされていく。

この時艦橋上部の対空見張り所で見張りに就いていたマトソン上等兵は、

上空を見上げていると高角砲弾が炸裂する中を後方から接近してくる日本軍攻撃隊の一機が突然くるくると独楽の様に回転しながら墜落し始め周囲から大きな歓声が上がった。「いいぞ、ドンドン撃て撃て!やつらを生きて帰すな!」

更にもう一機が右翼が中程から折れて錐もみになって落ちていく、折れた右翼だけが風をはらみ、ひらひらと花びらの様にゆっくりと落下してくる。

「やったーもう一機だ!」とさらに大きな歓声があがりまるで野球観戦でもしている気分で全く恐怖を感じる事はなかった。

それどころか、艦隊輪形陣の全ての艦船から撃ち上げられるどこにも死角がない激しい対空砲火の中に突入してくる日本人パイロット達はどんな気持ちなのだろうか、前にやつらは恐怖を感じない様に訓練されていると上官が言っていたが本当なのだろうか?と奇妙なことを思い出していた。

また一機大きな火の玉となった日本軍機があとに黒煙の塊を残しバラバラになって飛散した。

日本軍攻撃隊は高角砲による熾烈な対空砲火の黒い薔薇が咲き、空を縦横に飛び廻る赤や黄色の機銃弾の中を時には機体を大きく揺らしながら、また炎に包まれ撃墜される僚機を見ながらも突き進み、二隊に分かれるとそれぞれ単縦陣で「ホーネット」の後方から両側を挟み込む様に急降下開始地点に到達した。

まず縦隊で艦尾方向から右舷へ回り込んだ江草隆繁少佐直卒の第一中隊が高度3000m付近から横一列になって一斉に降下角70度で急降下を開始した。

頃合いよし!江草隊長の腹の底から響く「いくぞ!」の裂帛の声と同時に機体が左横転し宿敵の空母への急降下攻撃を開始した。

江草少佐も小林大尉同様、被害の大きい従来の指揮官機先頭の単縦陣による急降下突撃を止め中隊ごとの一斉降下を実践した。


「ホーネット」艦上では一機づつ急降下してくると思っていた敵艦爆が一斉に急降下を開始したことにより同時複数目標が出現。この事態に対して「撃ちまくれー」と砲術長のお手上げとも取れる絶叫が響くなか、艦長のミッチャー大佐は「敵は一回の攻撃に全てを掛けたのだ」ならばこの攻撃を回避できれば乗り切れるはずと冷静に考え敵急降下爆撃機の下に潜り込むべく「面舵いっぱい、機関最大戦速」を命令した。しかし敵機はまったく動じる気配をみせず微妙に機位を調整しながら突入してくるではないか。

一斉に急降下に入った江草隊であったが、一部の機がタイミングが合わず遅れての降下を視界の隅に捉えながらも、この激しい対空砲火の中では次第点だなと思いながら目標の敵空母に意識を集中させた。「ホーネット」に近ずくにつれ対空砲火の密度は更に高まり、至近で炸裂する砲弾の破片や機銃弾が機体のあちこちを叩き風防硝子も割れたりヒビが入り次の瞬間には撃墜されるのではと不安に駆られながらも大揺れする機を何とか押さえ付けた。急降下中何機かが被弾した様だがもう構っていられない、まずは飛行甲板に25番を叩きつけるのが先だ。

ミッチャー艦長は思ったよりも早く「ホーネット」の艦首が右への回頭を始め急降下中の敵機がこれに追随するのは大きな修正が必要であり、この位置関係から修正するにはさらに降下角を深めなければならないがこの高度ではまさに自殺行為であり「最小限の命中弾で乗り切れる!」と光明が見えた気がした。

しかし日本機は重い爆弾を抱えた急降下中に流れる様な機体操作で降下角を修正し新たな目標軸線に乗せると高度300mあたりで次々と爆弾を投下してきたのだ、まるで悪魔の様な手練れのパイロット達であった。

「彼らはナグモのエリート中のエリートだ!」と直感し、この窮地を乗り切るにはもう奇跡を願う事しかなく思わず神に祈った。

「日本機は激しい対空砲火の中被弾機を出しながらも全員でチキンランをやっている様な猛烈な勢いで急降下限度ぎりぎりまで肉薄して投弾、中には機銃掃射しながら突っ込んでくる機もあり引き起こしをかけながら艦橋付近のアンテナや飛行甲板の縁に接触するのではという位のぎりぎりのところを通過して海面上を這う様に退避していく。

「ホーネット」艦橋内は徐々に大きくなる日本軍機の急降下する甲高い爆音と爆撃の照準調整の為か敵機の機銃掃射がバラバラと跳ね回る音と爆弾落下の金切音で身体が固まり動けなくなる中「当たるぞ 伏せろ!」の誰かの声に弾かれる様に全員一斉に床に突っ伏した。

次の瞬間、艦首、艦中央、艦尾とまんべんなく続けざまに着弾爆発し「ホーネット」の艦体がバラバラに分解して轟沈しまうのではと思う位の衝撃とこの世の物とは思えない想像を絶する大音響に包まれた。

この江草隊の攻撃は猛烈を極め投弾に成功した七機のうち四弾が命中し「ホーネット」に甚大な被害をもたらした。

さらに降下中に被弾した第三小隊二番機の「高見」飛曹機はバランスを崩しながらも艦橋構造物の後方の煙突部分に激突し爆弾が爆発し爆炎とともに大きな煙突構造物が飛行甲板に崩れ落ちその衝撃と重みで飛行甲板が格納庫に陥没し、崩れ落ちた煙突の基部からは煙路が破口を現出させ煙が飛行甲板を這う様に流れ始め艦後部の対空火器要員は煙の為射撃を中断せざるを得なくなった。

さらに艦尾方向から左舷へ回り込んだ後続の山田大尉の第二中隊が、第一中隊の爆撃の衝撃が収まらない中、一斉に急降下に入り耳をつんざく爆音とともに次々と爆弾を投下し飛行甲板をかすめ退避していく。

この第二中隊の急降下爆撃も相次ぐ命中弾を数え、そのうちの三弾目は対艦艇用25番徹甲爆弾で後部エレベーター前方15mの飛行甲板を直撃貫通し格納庫内で爆発した。その爆風は凄まじく米空母特有の後部開放式格納庫両側から猛烈な勢いで爆炎と予備機、艦体の破片、舷側の対空火器とそれらに関わる乗組員共々を両舷の海面に吐き出し激しい水飛沫を上げた。

また艦中央部への五弾目の命中弾により猛烈な爆風が通気孔を通じてタービン室に逆流し、蒸気管を破壊したために内側の1つの機械室内が高温となって使用不能となり「ホーネット」は3軸運転を余儀なくされ、最大速力は23ノットに低下した。

六弾目の命中弾も対艦艇用25番徹甲爆弾で艦中央部の煙突が倒壊し陥没した部分に命中し格納庫さらにその下の装甲甲板を貫通し第4ボイラー室右舷艦底付近で遅動信管を作動させた、この爆弾の威力は凄まじくボイラーを破壊するにとどまらずその爆発エネルギーを艦内側から舷側を突き破り海中に放出した。

数秒後今度はその破孔から大量の海水が一気にボイラー室に流入し水蒸気爆発を引き起こし大損害をもたらした。

この江草隊の攻撃で「ホーネット」は実に爆弾十一発の命中弾及び至近弾と自爆機一機の突入を受け全艦炎上し急激に艦速を低下させた。



戦闘描写も難しい。皆さんなんであんなに上手に描けるのだろうか?

そっか!それが才能なんだ。

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