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湖面の月  作者: 山田ビリー
湖面の月
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2-2.

ヨハンナは確かこう言っていたはずだ。


国王陛下にはご正室である王妃陛下の他に、側室が一人おられる。それがシモーネ様だ。

ご長男のフェビアン殿下と長女のディアナ様は王妃様の子。ディディエお兄様だけはシモーネ様の子。

王妃様は他国の王族の娘。シモーネ様はスウォルツの高位貴族の娘。ただし、もともと先に王家に嫁いできたのはシモーネ様。

そして王太子は第一王子のフェビアン殿下。


…こちらもかなりきな臭い。

平和に暮らしたければ、絶対に関わり合いたくない一族である。


などとぼんやり考えていると、

「離宮での暮らしは肌に合ったかな。ゆっくり静養できたであろう。また晩餐の時にでも、詳しく聞かせてくれ。」

とのお言葉があった。

そうか、ディアナ様は離宮で静養していたことになっているのか。

問題は、陛下がどこまでご存知か、ということである。私が偽物だと知っているのか、ディアナ様が駆け落ちしたことはご存知か、何も知らないのか。情報が少なすぎる。しかも私の情報源は、ディディエお兄様、ヨハンナ、ノヴァの3人だけなのだ。彼らがどこまで本当のことを言っているのかもわからない。考えれば考えるほど不安になるばかりだ。


そういえばあの場には噂のシモーネ様と王太子殿下はいなかったな。


謁見を終え部屋に帰ると、というかディアナ様のお部屋にお邪魔すると、既にヨハンナと数名の侍女が待ち構えていた。ちょっとくらい一人であの豪華なベッドを堪能したかったんだけど、と大人3人分はありそうなふかふか(多分)ベッドに思いを馳せていると、ヨハンナがずいっと距離を詰めてきた。

「それではディアナ様、晩餐のためのお召し替えをなさいませ。」


ぎゅうぎゅうに絞られた下着の上に、びらびらのドレスを着せられて(ヨハンナ曰く「これでも質素な方です」とのこと)、なすすべもなくぼんやりしていると、扉がノックされた。現れたのはディディエお兄様とノヴァだ。お迎えの時間か。矯正下着(コルセット)のせいで、お腹は全然空いていない。

「晩餐では、お父様、お母様、フェビアンお兄様、シモーネさん、と呼ぶんだよ。相づち以外は基本的に私が話すから、頑張ってね。」

…もしかして陛下がたは本当に私をディアナ様だと思っているのか。両親にはさすがにばれるんじゃないの?

またまた胃が痛くなってきた。


晩餐では「いただきます。」「そうですね。」「ごちそうさま。」の3語しか話さなかった。気疲れ、コルセットの締め付け、こってりした味付けの三重苦で全然食べられなかった。あぁ、そういえば「余り食欲がなくて。」も言ったっけ。

という話を部屋でヨハンナにしたら、

「姫様はその格好でデザートまで完食なさっていましたよ。」

と言われた。どうやらディアナ様は健啖家らしい。

ちなみに食事は表面上和やかに進んだ。フェビアンお兄様がやたらニコニコしながらこっちを見てくるのは気になったが、王妃様とシモーネ様も普通に会話していた。意外と仲悪くないのかな。しかし結論づけるには早計か。


「それでは失礼致します。お休みなさいませ。」

私に寝間着を着せ終わったヨハンナが退出していく。

「あ、今日からは一緒に寝ないんだ。このベッドに一人か。寂しいなあ。」


「では俺が一緒に寝ましょうか?」

思わずポカンと口を開けて、声のした方を向くと、開いた扉の入り口にノヴァがいた。もしかしなくても今の発言はノヴァだろうか。

お、男の人に免疫がないせいで、思わず赤くなってしまった……

「冗談です。」

バタンと扉が閉まった。

……なんて質の悪い冗談だ。いたたまれない。だってモテたことないんだもん。しょうがないじゃないか!

私は早速広いベッドを有効活用し、思う存分ゴロゴロ身悶えした。


もしかして寝首をかこうとしてたのか?

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