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湖面の月  作者: 山田ビリー
湖面の月
4/38

1-3.

「そもそもの発端は、妹と隣国ネーブルの王子様との婚約話なんだ。」

殿下の話はこうである。


********


私の妹は、知っての通りディアナっていうんだけど、3か月くらい前にネーブルの王子様と婚約したんだ。ネーブルには王子が二人いて、妹が婚約したのは弟の方。フィンセントっていう名前だよ。

ちなみにフィンセント殿下の兄はエドゥアルトっていうんだけど、母親が違う。弟は正妃の息子で、兄は側妃の息子。だから弟の方が王太子。

つまり、妹は隣国の王太子と結婚予定で、将来の王妃様っていうこと。なんだかきな臭いでしょ。


妹とフィンセント殿下は、一緒に乗馬したり馬を貰ったり、そこそこ上手くいってた。(おおやけ)にはね。でも問題があった。妹にはどうやら秘密の恋人がいたみたい。

相手?さぁ、知らないよ。上手く隠してたのかな。とにかく、妹は本当は結婚なんて嫌だったってこと。


その後のことは、想像通りだと思うよ。そう、妹は駆け落ちした。望まない結婚から逃げたんだ。かれこれ1か月くらい前の話かな。

そういう訳で、私は妹を探していた。

ルナちゃんを見た時はびっくりしたよ。てっきり妹が暢気(のんき)に寛いでいると思ったんだ。 それで慌てて声をかけたんだけど、何だか雰囲気が違うし、それにしてはそっくりだから、何か妹を利用して悪い事でもしているのかと思って。

本当ごめんね。


それでルナちゃんにお願いなんだけど、結婚式までの間、妹のふりをしてほしいんだ。大丈夫。それまでに妹が見つかったら君は家に返すし、給金もはずむよ。勿論(もちろん)育ちが違うのはわかってる。今からスパルタで勉強してもらうから。

ノヴァは今から妹付きってことで、君を護衛させる。まぁ監視も兼ねてるんだけど。

それからもう一人、君に侍女を専属でつける。今は宿屋で待機中だから、このまま連れていって紹介するね。とても優秀だから、困った時は彼女かノヴァに頼って。事情を知ってるのは、私以外にはこの二人だけだと思ってくれれば間違いはないよ。


じゃあ宿屋で一泊したら王都輝く黄金の街(かがやくおうごんのまち)だから。王都は初めて?申し訳ないけど、観光を楽しむのは難しいと思う。


そんなの上手くいく訳ない?大丈夫。二人で並ぶ訳じゃなし、兄の私でさえ間違えたんだから、他の人にはわからないよ。ルナちゃんは本当にディアナにそっくりなんだから。

それじゃあ今から君の名前はディアナ=エル=ユーヴェントス。期限は結婚式若しくは本物のディアナが見付かるまで。ディアナ、よろしくね。


********


殿下の話は無茶苦茶だった。上手くいくとは思えない。だが断る事も無理だとわかる。

とんでもないことに巻き込まれた。

自分の運の無さを呪うしかない。


宿屋で出迎えてくれたのは、栗色の髪の落ち着いた女性であった。自分と同い年か少し年下に見えた。焦げ茶色の釣り気味の目を見開いて、しばらくこちらを見つめていたかと思うと、慌てて駆け寄ってきた。

「ディアナ様!よくぞご無事で……」

「ヨハンナ、紹介するよ。彼女が今日からディアナになってくれる、ルナ=エーデルさん。不慣れなことの方が多いから色々厳しく教えてあげて。

ディアナ、彼女が君の専属侍女のヨハンナ。彼女に頼れば大概のことはなんとかしてくれるよ。」


ヨハンナは私と殿下を見比べた後、滑らかに腰を折った。これだけで事情を察するとは、本当に優秀らしい。

「では、本日はゆっくりお休みください。すぐに寝間着をご用意致します。明日からは休む暇などありませんので、今夜のうちにしっかり疲れをとることをお勧めします。」


流石は優秀な侍女。既に厳しい。私の明日はどっちだ!

「ディアナが脱走しないように、ヨハンナは同じ部屋で寝てね。」

殿下も厳しかった。

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