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湖面の月  作者: 山田ビリー
湖面の月
20/38

4-3.

謁見の間に、ディアナ様の凛とした声が響く。

「申し上げます。私は昨晩、気付くと鉄格子の部屋におりました。そこへエドゥアルト殿下が来られ、襲いかかってきたので抵抗したところ、蹴りつけられました。そのまま出ていかれましたが、今朝お戻りになり、そちらの騎士を連れて私をここまで連れてきた次第です。」

「エドゥアルト、本当か。」

殿下の答えは無い。

「殿下は何故か私を偽物と断じ、本物は死んだと思い込んでいるようでした。」

「お前が本物は死んだと言ったのではないか!父上、この女の言うことは嘘です!」

成る程、あの後ディアナ様はエドゥアルト殿下に、自分が既に死んだと吹き込んだんだな。

「殿下、何故私を死んだと仰ったのですか?私は婚約が整った後、スウォルツで謎の襲撃を受けています。危険だと判断した兄達にしばらく隠されておりましたが、この事は自国ですら公表しておりません。死んだと判断するのは犯人しかいないと思いますが。」

陛下方の顔は最早蒼白だ。当然だろう。これが本当なら戦争にもなりかねない。

「ところでこの部屋におられる貴族の方々も、スウォルツでお見かけしたことがあるような気がするのですが……バーデン侯爵様、カッヘル子爵様、ヨーステン家ご子息様、他の方々も。」

つまり、ここにいる貴族達は皆エドゥアルト殿下の息がかかっているから、関与を匂わせて一網打尽にしたいということだろうか。成る程確かに、ここにいる全員を捕らえるなら大捕物だ。


「父上、騙されないでください!私は無実です。自分の息子と得体の知れない女、どちらを信じるのですか!」

「ディアナ殿、申し訳ない。お詫びのしようもないが、真実を明らかにし、罪のある者に対しては適切に処分することを誓おう。

近衛隊、入室を許す。この部屋におる者全てを捕らえよ!」

陛下の命が下ると同時に、騎士達が雪崩れ込んできた。部屋にいた貴族達が次々と拘束されていく。と、何故か私にも縄がかけられる。

「ちょ、待ってください!私は無関係なんですけど。」

「それをこれから取り調べるんだろうが!」

「その子は違うわよ。フィンセントが連れてきた私の侍女だから。」

危ない、ディアナ様の助けが無ければ牢屋に逆戻りだった。


エドゥアルト殿下は、フィンセント殿下とディアナ様に憎悪の言葉を投げつけながら連行されていった。恐らく罰せられるといっても、王子ゆえ大した処分はされないだろう。陛下とて我が子が可愛い。

だが今後、フィンセント殿下やディアナ様に何かあれば、真っ先に彼が疑われる。取り巻き達も失脚して、大分力が削がれたはずだ。お二人が平和に暮らせるのなら、それが一番良い。

「お疲れさま。セントの部屋に帰りましょうか。」

手に縄を付けたままディアナ様が言った。誰か縄切ってやれよ。


フィンセント殿下の部屋では、ヨハンナが紅茶を淹れて待っていた。やっと縄から解放されて、綺麗な服に着替えられたディアナ様が、寛いだ様子でお話される。

「まあ、お兄様は貴女に、私が駆け落ちしたと言ってたの。スウォルツで襲われたのは本当よ。私はネーブルまで逃げてきたの。その後は知っての通り、セントの侍女をしてたのよ。」

「じゃあディアナ様とフィンセント様は最初から仲良しだったんですね。良かった。私の役目もこれで終わりですね。ディディエ様とは、ディアナ様が見つかるまでという約束でしたから。」

「そうね、ありがとう。それで貴女はこれからどうするの?もし希望するなら、このままこちらで雇うこともできるけど。」

「いえ、故郷の村に帰ります。」

有難い申し出だが辞退する。また巻き込まれるのは御免だ。

ようやく私の身代わり生活も終わりを迎えた。故郷へ帰れると思うとほっとする。

「そういう訳なので、フィンセント殿下、帰り道の路銀を下さい。」

「お前私に図々しくないか?」

フィンセント殿下は顔をひきつらせた。


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