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湖面の月  作者: 山田ビリー
湖面の月
12/38

3-2.

碧玉宮(へきぎょくきゅう)は、その名の通り青かった。白い壁に青い宝石や顔料、色硝子などで飾り立てられ、お洒落でかわいいお城といった趣がある。

宮殿に入ると早速お出迎えがあった。榛色の髪に黒い目の若い男性だ。着ているものからして、おそらく王族か高位貴族であろう。

「ようこそディアナ殿下。ご来訪を皆で心待ちにしていたよ。」

「これはエドゥアルト殿下。自らディアナ様を歓迎に来てくださったんですか。」

ヤン隊長の言葉を聞いて驚いた。てっきり婚約者のフィンセント殿下本人かその遣いの人だと思っていたのだ。それに隊長の口振りからするに、第一王子自らのお出迎えは予定外のことのようだ。

のっけからこれではこの先が思いやられる。しかしうっかりフィンセント様とか呼ばなくてよかった。ディアナ様が王子達の顔を知らぬはずがないし、そうなればごまかしきれない。

ところで肝心のフィンセント殿下は何処におられるのだろうか。顔を知らないので探しようもない。

「フィンセントは今忙しくてね。代わりに私が謁見の間まで案内するよ。」

アヒル化の恐怖再び!同じ轍は踏むまいと歩く練習をした成果を発揮しなければ。


そのままエドゥアルト殿下に連れられて謁見の間に行った。今度は上手に歩けた様に思うが、誰も褒めてくれず残念だ。

部屋の上段には国王夫妻がいらしたが、フィンセント殿下は相変わらずの不在であった。

「フィンセントは今城下に出ているのよ。夜には帰ってくると思うわ。あの子も貴女に会うのをとっても楽しみにしていたわよ。」

という王妃様のお言葉は本当だろうか。普通婚約者が今日来るとわかっていれば、予定は最優先で組まないか?それも私はいわば国賓だ。もしもディアナ様に冷たい態度をとるようであれば、対策を考えなければ。私に何が出来る訳でもないが、遠路はるばる嫁いできてくれた(予定)ディアナ様が気の毒だ。これは早速ヨハンナに相談しよう。


「夫婦のことにはあまり外野が口を出さない方がよろしいかと思いますが。」

ヨハンナの裏切り者~!ディアナ様が心配なんじゃないのか。

「そもそも貴女は結婚式前に本物と入れ代わって帰るんでしょう?余計なことはしない方がいいのではないですか。それで王子と下手に仲良くなったりして別人なのがばれたら本末転倒ですよ。」

正論だ。確かに私がフィンセント殿下相手に何かをすることはできない。しかし長らくディアナ様の代役をしていたためか、他人事とは思えない。とりあえず情報収集は怠らないようにしよう。


晩御飯の時にもフィンセント殿下はいなかったな。エドゥアルト殿下はよく話し掛けてきて面倒だったけど。まぁ私はご飯の話しかしなかったよ。クロケットっていう中からトロッとしたクリームソースが出てくる揚げ物が凄くおいしくて、慌てて食べたら舌を火傷したみたい。などとヨハンナに話していたらノックの音がした。ヨハンナが扉を開けて、珍しく驚いた声で言った。

「フィンセント殿下……」

「畏まらずともよい。我が婚約者殿に会いに来たのだ。ディアナ、久しいな。今日は迎えに行けずすまなかった。」

この人が……し、渋い声だ。金茶色の短い髪に黒い瞳の威丈夫が、私を値踏みするかのように睥睨してくる。これが愛しの婚約者を見る目だろうか。私は何も言わず頭を下げた。

暫く私を不躾に観察しているらしい視線を感じたが、やがて飽きたのだろう。

「今宵はゆるりと休むがよい。後日歓迎の宴がある。それまでは好きに過ごせ。」

そう告げて去っていった。

「極端な兄弟だね。」

ヨハンナに言うと、彼女はこちらを見て溜め息をついた。

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