3. 小学生はあっという間に過ぎていく
まずは環境を整えることから始めよう。
来年妹もここに入学してくる。それまでに俺がやったのは一年生全員の心の掌握だった。一学年4クラス、皆のお兄ちゃん的立ち位置に立つのに多少は苦労したが、少子化の今、親の世代に比べれば何のそのと、やりきって見せましたとも。その隙間に校長筆頭に先生方懐柔の時間も組み、兄弟と比較された方がどれだけ傷つくかをそれとなく認識させる。
そして自分は学校内では飛び出ないように注意し、表彰は先生にお願いして辞退。そうすれば、上の学年が何か妹にいってくることはないし、同学年には知られていても妹とは比較させないようにした。
そして迎えた入学式から6年。妹はいつも楽しそうに登校していく。足の早さでは学年一、いや、上の学年と比較しても飛び抜けていると評判で兄としても鼻が高かった。一足先に卒業したが、帰宅後話を聞いても皆と仲良くやれているようだった。
そして、妹はその足の早さから陸上に力をいれた中高一貫の私立校より誘いを受けた。あの父親さえも驚いた顔をして、紫のことを誉め、その夜母さんは紫の好物を食卓一杯に並べてくれた。
その日の主役は俺じゃなく、紫だったんだ。
その後は先生に面談の特訓を受け、4月から妹は見事入学を決めた。全寮制の学校だから長期休みしか会えないけど、手紙を一杯書こう、そう決めた。