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2.要領のいいハイスペック兄貴とその比較対象

 いくら自分の要領がいいとはいえ、まだ子供。親戚や近所で年の近い子は妹だけだった。また保育園、幼稚園にも通っていなかった。だから気づくのが遅れたのだ。

 それは小学校に入学ししばらく経っての事。皆が自分に比べて妹と同様、またはそれよりも、幼かった。・・・・遠まわしに言ったからわかりにくかったかもしれない。端的に言ったら、周りの出来が悪かったのだ。まあ、幼稚園を卒業したばかりだし、もうしばらくしたら落ち着きも出てくる、それまでは仕方ないだろう。その時はそう思った。いや、そう思い込んだといってもいいか。

 どうにか、頑張って目をそらしていたが、数か月立つとどうしても認めないわけにはいかなかった。

 

 

 周りができないのではなく、自分が飛びぬけているのだと。



 言っておくが、自分は天才というわけではない。一目見ただけで感動するような絵が描けるわけでもなく、素晴らしい音楽を奏でられるわけでもなく、数学の理論をときあかせるわけでもない。

 ただとにかく要領がよかったのだ。

 ある程度教えてもらったり、練習すれば、すぐ字が読めるようになり、英語が話せるようになり、護身のため入った道場で試しに申し込んだ柔道大会小学生の部では経験者を抑えて優勝した。勿論やらなきゃできない。だがやればできるということだ。

 なかなか身に着かないから、そして、努力してもできるとは限らないから、人は努力を嫌う。または初めから努力を避けるようになる。逆にできるようになるなら人は努力をいとわないだろう。そういうことだ。

 だから俺は物心ついたころから何にでも興味をしめし、挑戦した。親は「この子は天才だ!!」と喜び、出来る範囲で、少し無理をしてでも俺になんでもさせてくれた。

 俺は夢中になりすぎてあまり、周りに注意を払えてなかったのだろう。そうしたらとうの昔に電車に乗った時やテレビでも見た時に、周りの子と自分との違いをすぐ把握することができただろうから。


 それは、妹に関しても同様だった。なんでみんな紫に冷たくするんだろう、そうは思っても原因に気を配れなかった。小学校に入ってようやく気付いた。彼女は自分と比較されていたのだと。

 それに気づいてようやく彼女が言われていた言葉が耳に入ってくるようになった。


 例えばある日、生命の進化について書かれた本に男の子らしく夢中になっていて、ふとのどの渇きを覚え自室からキッチンに降りた時、妹が割れた皿の前で泣きそうな顔をして立っていた。そろそろおやつの時間で机に御菓子を運ぼうとしていたのだろう。その前で母が笑っていった。

「鈍くさいこねえ。」

「お兄ちゃんはこれくらい軽くこなすわよ。」

そう、妹が言われているのを聞いて、無神経なその一言にかっとなり一言いってやろうとした。しかしキッチンのそばの応接間で、ソファに座りテレビを見ていた父はそれを横目でちらっと見たのち、


「お前は出来が悪いな。」


とそう一言だけ述べたのを聞いた途端、全身の血液が凍ったように感じた。

妹は決して出来は悪くない。他の同学年と比べてもわかる。かけっこなんか飛びぬけて速いし、自分も負けそうになるくらいだった(兄のプライドにかけて負けなかったが)。

なのに自分がいたせいで彼女は比較されてしまう。そしてできない子とみなされてしまうのだ。


 思わず足がすくみ、キッチンに入るのを躊躇してしまったが、前で組んだ手から血が垂れるのをみて思わず飛び込んだ。


「紫、手を怪我してる!! 大丈夫なの?」

手を取り観察する。手のひらのに1センチ大の切り傷があり、そこから血が出ていたようだ。もう止まりかけており、胸をなでおろした。


「けがまでしてたの、どんくさい子ねえ。」

そういって近づいてきた母は心配そうな顔をしていて、少しだけ救われた。行った言葉はいただけなかったが少し焦って救急箱をとりにむかうその姿はちゃんとした親の姿をしていた。だが父は気にもしなかった。妹はその姿を見て少し泣きそうな顔をしたのち、諦めたように笑った。


 俺のせいで妹にこんな顔をさせてしまった。

 俺のせいで・・・・


念のためガラスの破片が入っていないかチェックする母の姿を見ながら、考えた。俺に出来ることは何か。妹は決して俺をねたまなかった。元々の性質なのか、なんでもできる俺を尊敬こそすれ、いらだちを見せることはなかった。できない自分を責めるのみだった。


「お兄ちゃんすごい! 私も頑張らなくっちゃあ!!」

「お兄ちゃんは私の自慢だよ!!」

そういって褒める姿を思い出し、こう思った。


(じゃあ、俺ができるように手助けすればいいんじゃないか!!)


こうして、俺は、自分を磨きつつ、妹を磨くことをここに決意した。

それは7歳の夏の事だった。



 

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