1.まずは自己紹介
館川 蒼真。これが俺の名前。
館川 紫。名前からもその姿かたちだけでなく、心根の可愛らしさも伝わってくる。同じ名字から想像できるだろうが、紫は俺の妹だ。
年の差1歳と聞くと同じような兄弟姉妹を持つ人には、
「えー、妹なんてうざいじゃん。」
「1歳の年の差何て無いのとおなじだよ。それなのに兄貴面されるとムカつくんだよな。」
とか、逆に
「何か兄弟って感じしねーわ。友達みたいなもんだよな。」
等と言われることがある。兄、姉側からすると、ある程度の年の差がないと可愛く感じないそうで、また弟妹にとっては上で述べたようにその程度で年上面すんなと言いたいらしい。
でも一歳差でも俺にとっては、何にも替えがたい可愛い妹であるし、妹にとっても、自惚れでばければ、自慢の兄であると思うし、そうであろうと努力している。
まあ、でも正直に言うと初めからこんな考えであったわけではなく、皆と同じように鬱陶しい、うざったいと感じた時期もあったのだ。
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なんだこれ。
物心ついたときに初めて妹を認識した時の俺の第一印象がそれだった。
妹はどんくさかった。無論小さいころの1歳の年の差は大きく、どうしても今の自分より劣ってしまうことはどうしようもないことだが、昔の自分に比べてもどんくさいだろ。その時の俺はそう思ってしまったのだ。かつての自分が容易にこなしたことをもたもたと時間をかけておこない、そして時間をかけた割には内容が伴っておらず、しかもまだやり遂げたならいい方でできないことも多かった彼女に向ける自分の目はだいぶ冷たかったと思う。
それでもへこたれず頑張って、頑張って。遅々とした足取りではあるが少しずつ成長していく妹に、冷ややかな感情しか抱いていなかった俺の心がほだされていくのはごく自然なことだった。
そして彼女に目を向けるようになって初めて自分と彼女を取り巻く環境の違いに気づくことになる。
自分を見る親や祖父母、親戚の目は温かい。どこか満足げな、自慢するような雰囲気さえ含んでいる。しかし自分の隣に目を向けると一転して冷ややかな、それどころか侮蔑の感情を含んだ目線ですらあった。
幼いとはいえその雰囲気は妹にも伝わり、彼女は安らぐべき自分の家でもちっちゃくなってどこか遠慮した様子ですごしていた。
そんな彼女をすでに溺愛の片鱗を見せていた自分が見過ごすことが出来るだろうか、いや、できるはずがない!!
そうしてここに4歳にして立派なシスコンが誕生した。
こうして、妹を守るために立ち上がった俺だが、またしばらくして衝撃の事実に気づくことになる。
何よりも大切な妹の可哀想な境遇がよりによって自分のせいであることを。