サルにお任せ♪
俺は今、走っている。数日前の雨で地面は最悪だし、とある薬草を採取しに森へ来たのだが、夜になっても見つからない。
終いには、五匹の狼に追われるときたもんだ。
泣きたくなるね。いやマジで。
倒せばって思うでしょ?
それが簡単じゃないのよ。
だってさ、俺って世間一般的に見たら、落ちこぼれの部類に入るんだぜ?
百人に一人に身に付く能力も最底辺だしさ。
聞いて驚くなよ?
俺の能力は、左手人差し指強化...それだけ。
「これで、何が出来るって言うんだー!!」
当然叫びたくなるよね。
んでも、まだ諦めるにはまだ早い。
俺じゃなかったら、とっくの昔に食われてるね。
自棄になって考えてると、目的の洞窟が見えてきた。
なぜ?って思うでしょ?
これだから一般人は...仕方ないから説明してあげる。
今現在五匹の狼に追われてるだけど、森の中だと五匹一斉に襲いかかってくるんだよ。
一匹ずつ相手にするための洞窟なのさ。
洞窟の中に入り、数メートル行ったとこで振り返る。
左手人差し指に集中。
左手人差し指が微かに白く光る。
準備は万端。
あとは、タイミングを間違えないように洞窟の入り口を見据える。
五秒程の静寂。湿気のせいか、それとも数日前の雨のせいか、水滴が地面に落ちる。
そして赤い双眸が見えてくる、段々と大きくなり宙に浮く。飛び掛かってきたのだろう。
想定内の行動。
準備していた左手人差し指を赤い双眸に向かい、いきよい良く突き刺す。
この感触は慣れないな。
続いて、二匹目。
狼は単調過ぎる。他に攻撃手段は無いのだろうか?
飛び掛かってきたところに下に身を屈め、ハイキック。
右方向に蹴り飛ばし、短刀を取り出して命を刈り取る。
残りの狼は、洞窟に入るのは危険と察知し入り口で威嚇をするも、獲物が出て来ないと分かり、森の中に姿を消して行った。
一日中動き回ったせいか、疲労はピークを迎えようとしている。
壁に背を預け、腰を降ろして地面に手を付ける。
チクリ。
針で手を刺したときに似ている痛み。
岩の棘にでも触ってしまったと思い込み、今日はここまでにして、明日また薬草を探そうと決め、深い眠りにつく。
翌日。
硬い地面で寝たせいで、あちこちが痛むが、体に鞭を打ち起き上がる。
昨日は散々な目にあったもんだ。
一度街に帰って情報を集めた方が早いかもしれない。
情報が絵だけじゃ漠然とし過ぎてるからね。
クエストを受注したはいいが、依頼主の所に行ったら絵だけを渡され、仕事の邪魔だと言わんばかりに追い出されてしまったのだ。
依頼してきたのが、病院だったから仕方ないっちゃ仕方ない。
あれこれ思考にふけっていると街に着いてしまった。
街の入り口には、自警団の兵が立っており門番の仕事に務めている。
「住民票、立ち入り許可証の提示を願います」
機械的に言う自警団に、慣れた風に住民票を提示する。
いつも通ってんだから、顔パスでいいじゃない。
こっちは仕事なんだから、そう思うも口には出さない。
面倒事が増えるからね。
門を潜れば、活気溢れていた。
両脇には、商人達が儲けるために商いを行っている。
珍しい花や薬草、織物に食べ物。
行き交う人々に気前のいい声で営業をしている。
「そこの兄さん、見るからにギルド員だね?
いい武器揃ってるよ」
どれも量産型の武器じゃないか、と言って歩を進める。