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1・ギャップ・王道

   主な登場人物


◆此村 彼方(このむら かなた)

◆一色 万千子(いっしき まちこ)

◆雪村 小春(ゆきむら こはる)








 始業式当日。2年A組では席替え、クラス委員、委員会決めを終えた。その他掃除当番など細かな部分を決めていき、帰りのホームルームだけとなった。

 すると小春は担任の元へと向かった。

「先生、学校の部活動の一覧とかの表がほしいんですけど」

「おお、そうか。まだどの部があるか知らないもんな。明日でいいか?」

「はい。同好会とかも含めて全部知りたいのでお願いします」

 再び小春が席に戻ると部活動の質問攻めだ。

「雪村さんは前の学校で何部だったの?」

「私帰宅部だったんです。良さそうな部がなかったから……」

「サッカー部のマネージャーは? 大歓迎だよ!」

「歓迎なのはお前がだろ!」

 笑いが起こる。すでにクラスのアイドル……妹的な存在になっていた。同い年なのだが。

「此村くんは何部?」

 小春が隣の席の彼方に声をかけた。これからしばらくは授業中身近な存在になるのだからまずは簡単なスキンシップ、そんな感じの質問だった。

「……部には入ってないよ」

 何ともぶっきらぼうな返答である。椅子に完全に深く腰かけると踵がつかないクラスの妹アイドルキャラが声をかけているというのに。そんな周囲の思いも彼方は気にしない。

 そんな返事に大して深く追及することなく「そうなんだ」とだけ返して今度は前の万千子に同じ質問をした。

「私は推理研究会に入ってるんだ」

「え、推理? それってミステリーの?」

「うん。といっても2人だけなんだけどね。もう1人がそこの彼方。一応会長(?)になるのかな」

 あれ、さっきは……そんな顔をしていたのだろう。自分に視線を向けてくる小春に彼方は再びつまらなそうに答えた。

「『部』じゃくて『会』だから」

 そこへ職員室に行っていた担任が戻ってきた。

「雪村、まとめて書いてあったプリントがあったぞ」

 受け取った紙には確かに同好会などの欄に推理研究会の名が書いてあるのだった。


「起立、礼」

 ホームルームが終わり、体育会系の部活ならそのまま午後へ、それ以外なら帰宅する面々。万千子が後ろの小春に聞いた。

「雪村さんは自転車通学?」

「ううん。電車なんだ。西岡崎なの」

「え、そうなの? 私たちも駅は西岡崎なんだ。自転車の方が近いから雨の日だけなんだけどね」

「そっか。私自転車持ってないんだ」

「そなんだ。残念」

 そこで万千子は彼方の視線に気付いた。手提げ鞄を肩に回し今にも帰ろうとしている姿だ。

「推理研究会は今日は休みなの?」

「うーん、多分。結構気まぐれだから。ね、彼方?」

「ん? あぁ……」

「そうなんだ……。ちょっと活動内容とか知りたいんだけど。ダメかな?」

「え?」

 声を出したのは万千子だった。彼方も声にならない驚きを表した。

 まさかこんな全校生徒の分母で2人しかいない部活動に興味があるとは、それが今一番注目されている子供店長ならぬ子供高校生だとはいや同い年だけど。

「……じゃあ、図書室に行こうか」

 完全に帰る気でいた彼方は視線を小春へと下げることなく、教室の扉へと向けてゆっくりと歩きだした。その後を2人がついていく。



 晴海野高校の図書室はなかなか快適な空間だった。

 入口近くに3つの丸型のテーブルは比較的オープンな席として、奥に進んでいくと中央には四角いテーブルとオフィス用のパイプ椅子が整然と並べられていた。その左右と一番奥の棚には約16000冊もの書籍が揃っている。

 推理研究会の指定席は中央にある丸型テーブルだった。4人座れるテーブルに入口側から小春、彼方、万千子の順だ。

 全員が座ってから一番初めに口を開いたのは彼方だった。

「スイケン……推理研究会の略なんだけど、活動内容といってもコレというのはないんだ。基本的には本を読んだりとかなんだけど」

「そうなんだ。研究ってぐらいだから互いに出題し合っているのかと思った」

 至極もっともな感想である。万千子が説明をした。

「あー、実はなんだけど、私はあまり推理とかミステリーものに詳しくないんだ。彼方にくっついているみたいな感じで」

「そうなんだ」

 だいたいこの会話でスイケンの活動内容と2人がどのような関係なのか感じ取った小春。それにしてもそれ以上に彼方の様子が先程とは違う様に見えるのは気のせいだろうか。

「……じゃあ、問題出してもいい?」

「え、問題? ミステリーの?」

「うん。簡単なものだけどね。いくよ!」

 小春の出題が始まった。




とある高校の将棋部の部長が何者かに刃物で殺されました。

辛うじて即死を免れ最後の力でダイイングメッセージを残しました。

将棋盤に残った謎の血筋。

『4九』から『6九』の3マスに人差し指で横に引かれていた。

警察はそれを見て容疑者を絞ることができた。


Q.ダイイングメッセージからわかる容疑者の特徴は?




「えー、将棋? 私わからないな」

 早くもギブアップ気味な万千子。対する彼方は少し手を顎にあてて小さな笑みを浮かべた。小春が見る初めての彼方の笑顔。

「面白い。将棋なだけに王道ながらトリックも王道。そしてさっきもらった部活動の一覧から発想を得た実に面白い作品だね」

 彼方には全てお見通しのようだ。

「あはは。簡単すぎたみたいだね。それに裏側までわかっているみたいだし。さすが会長」

「確かに将棋の基本的知識がないとこれは解けないだろうね。……答えていい?」

「うん、いいよ」

「赤の横線の部分には自陣の王将と金将が置かれるところになる。そしてその駒だけは成ることができず、つまり裏には何も書かれていない。裏がないから占い。つまり占術同好会の中に犯人がいるってことさ」

「へぇ~」

 彼方の説明に万千子は感心するばかりで声を漏らすだけだった。

「万千子は特に推理脳ってわけじゃないから、まだ解くにもレベルは足りないんだよね。雪村さんはミステリー小説とか読んだりするの?」

「ううん。ほとんど漫画なんだ。有名どころの小説とかも読んでみたいんだけど、あまり機会がなくて。ここにはあるのかな?」

「有名なものはね。映画化されたものとか、誰でも知っているような作家くらいなら。あまり種類は豊富じゃないから、他は市の図書館になるかな。かなり待ちになるけど」

「此村くんはここにあるのはもう全部読んだ?」

「ん、多分。あとはこれで読んだりもしてるよ」

 そう言いながら鞄から取り出したのはタブレットパソコンだった。

「あ、いーなー。すごーい。へぇー。かっこいー」

 そんな大雑把な言葉をいくつか並べながらもう心の中では決めていた。自然と笑みがこぼれる。

 それを見た彼方と万千子は互いに顔を見合わせた。2人とも小春が笑っている理由がわからない。

「ごめんね。何だかとても楽しくて。……うん、決めた。私入部する」

「え、いいの? こんな部活動だよ?」

 彼方をよそに聞いてきたのは万千子の方だった。彼方も確認せざるをえない。

「こんなって……でも本当にいいの? いや、とても嬉しいけど」

「うん。何だかね、前の学校では何も入ってなかったんだけど、入りたいって思える部活がなかったんだ。でもなんだかとても楽しくて。この学校に来てよかった」

 褒めすぎにも感じる言葉だが、小春にとって決して大げさではないのだろう。表情からはまさしく楽しんでいるのが誰の目からもわかった。

「えーと、じゃあ帰りに職員室に行くとして。改めて自己紹介を。推理研究会・会長の此村彼方です」

「会員1人目の一色万千子です」

「新入会員……であってるよね。雪村小春です。よろしくお願いします」

「よろしく」

「よろしくね」

 新学年になり、推理研究会は3名となった。

 正直、キャラの設定が不安定です。

 とりあえずこんな感じとして雑把にはもちろん決めているのですが、話を進めるたびに「あれ、こんなキャラだった?」という感じで。

 あえてまだ出していない各キャラの個人情報の扱いをどうしようかと悩んでいます。個人情報保護法とかプライバシーの権利とかもありますし。

 いや、ホント大変。ネタを考える以上に難しいです。

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