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第43話 補足だよ。ゼンちゃんマイちゃん

 

 どこかは分からないけど、特に何の色もない空間。


 ──そこに人の形をしたぬいぐるみが2体並んで立っていた。


 ゼンちゃんとマイちゃん。


 そして2体は急に動き出す。



 ◇◇◇



 先ずマイちゃんが何やら太極拳のようなゆらりとした動きを暫くした。


 それをゼンちゃんがウザそうに見つめていた。


「っで、ここはドコ?」


 マイちゃんはそう言った。


「……そうか、先ずは変な動きか。変な動きの前にその質問からなんじゃないのかマイ? って、お前いつからそんな奇妙な動きをするようになったんだ?」


「いい質問だねゼンちゃん。でもその答えはオラにも分からないよ。なんか気付けばゆらりと踊っていたんだよ。それよりここはドコ?」


「脳で考えるより先に身体が動いたって事か。まあ、オイラたちには脳なんてないんだけどな」


「無いんだ。オラたちに脳はないんだ。けど、残念だけど無いもんは無いからしょうがないね。それよりゼンちゃん、ミョクちゃんはドコ?」


「マイ、残念だがここにはミヨクはいないんだ。何故ならここはパラレルワールドだからな」


「ぱ、ぱ、ぱら……!?」


 マイちゃんはゼンちゃんが衝撃的な事を言ったような気がしたから驚こうと思ったのだが、全く知らない言葉だったので驚こうにも驚けなかった。


「ふふふ。パラレルワールドだ。パラレルワールド。分かりやすく言うとな……なんか……ここに居るオイラたちはミヨクたちの居る本編とは別の存在なんだ」


 そう説明されてマイちゃんは驚ろ──こうと思ったのだが、結局は何を言っているのか分からなかったので驚けなかった。そもそも、ほんぺん? って何? と思っていたのだが、それはゼンちゃんもよく分かってなさそうだったので聞き流しておく事にしたようだった。


「……それで、それでゼンちゃんオラたちは何をするの? 何かするの? 何かしなきゃいけないの? 何もする事がないならオラはまたゆらりとした踊りをしていたいんだけど」


「ダメだ」


 ピシャリとゼンちゃんが即座に語性を強め、マイちゃんはびくりと身体を震わせた。だ、ダメなんだ……と。


「──パラレルワールドはそんな暇な場所じゃないんだマイ。オイラたちにはやらなきゃならない事があるんだ」


「やらなきゃならない事って何?」


 マイちゃんはそう質問したが、実はちゃっかりとゆらりとした踊りをしていた。ダメと言われたら余計にやりたくなるよね、と。


「……オイラたちは本編で端折られた(長文になる為)部分をピックアップしてもう少し詳しく説明するっていう事をする為にここに存在しているんだ」


「…………(10秒経過)…………(20秒経過)…………な、なるほど」


 マイちゃんはゆらりとした踊りを止めてから、小さな声でそう返答した。


「……お前、分かってないだろ?」


「うん。オラはゼンちゃんが何を言っているか少しも理解出来ていないよ。少しもだよ。本当だよ。少しもだよ。でも大丈夫。オラ、なんとか対応するよ。対応してみせるよ」


「……そうか。まあ、難しいよな。オイラもたぶん理解できないだろうなと思って喋っていたからな。でもマイがなんとか対応するって言うならそれでいいや」


「うん。オラ何となく頑張るよ。それで、オラは何をすればいいの?」


「本編で気になった良く分からない事や説明がもう少し欲しいな、ってのがあったらオイラに質問してくれ」


「……えっ……答えられるの? ゼンちゃん何でも答えられるの? ゼンちゃんってそんなに賢いっけ?」


「……ここでの──パラレルワールドでのオイラは特別なんだ。神からの補正的なものが加わってから凄く賢いんだ、多分な。何でも知っているし分かっているんだ、多分な。それよりマイ、オイラはいつでも賢いぞ。次に変な事を言ったら容赦なく蹴るからな」


「……それじゃあ怖くて、何か変な事があっても蹴られるから言えなくなっちゃうよ……。でも、ゼンちゃんらしいからいいんだけど。じゃあ早速質問するんだよ。ほんぺんって何?」


「……そこからか。本編は本編だ。今は第二章だな。でもマイも序章を知っているだろ? 存在していなかったけど見て知っているだろ? ああのルアとラグン・ラグロクトの壮絶な戦いを。あれが本編だ」


「えっ? あれ夢じゃなかったの? うん、見ていたし、知っているよ。オラ。ルアとラグンと、おじいちゃんになったミョクちゃんやファファルやソクゴの事も知っているよ……えっ、何どうゆう事? 夢じゃないの? そもそもオラは夢を見た事がないけど夢だと思っていたからびっくりだよ。えっ、ルアって誰? ラグンって何? えっ、あれ、ここドコ? オラ何しているの? オラ、オラ、分からなくなってきたよ!」


「……落ち着けマイ。それを全部ひっくるめてパラレルワールドなんだ。だから落ち着けマイ」


「……そっか。これがパラレルワールドなんだね。オラ、それでも全然ちっとも分からないけど、分かったよ。オラぱられるわーるどを理解したよ」


「成長したなマイ」


「うん、オラ成長したよ。ちっとも分かってないけど成長したよ。あんまり分かってないって言うとゼンちゃんに蹴られるかも知れないから、オラ分かったって事にしているんだよ」


「……成長したなマイ」


「うん。オラ成長したよ。ゼンちゃんも早く成長できたらいいの──!!」


 その辺りでマイちゃんはゼンちゃんに蹴り飛ばされて泣かされた。



 ◇◇◇



 ──気を取り直して、


「……とにかくオラは質問すればいいんだねゼンちゃん?」


 マイちゃんがそう言った。


「おう。そうだ。オイラがなんでも答えてやるぞ。何でも聞いてこい」


「…….なんかさっきから偉そうで鼻につくけど、気聖使いって何? オラ、樹海で気聖使いに稽古をつけてあげていたけど、よく分かっていないよ」


「気聖使いってのは、この世界で魔法使いのような理不尽な強さを持ってない普通の人間たちが仙人の力の恩恵を得た状態の事だ」


「ミョクちゃんが言っていた、あの具合が悪くなっちゃう力の事だね?」


「そうだ。それが仙人が住んでいるあの天井の山から麓の樹海までを覆っていて、それに触れると、全ての人間ではないが、割と多くの人間が気聖を得る事が出来るんだ」


「ふんふん。そうなんだね。触れるだけでいいんだね。具合が悪くなっちゃうけど、我慢すれば気聖が手に入るんだね」


「そうだな、その解釈で間違ってないぞ。それで気聖はその量、つまりは強さだな、それを高めていく事が出来るんだ。その方法は気聖を1分1秒でも長く浴び続けている事と、相手を倒して、その気聖を奪う方法との2つがあるんだ」


「ふんふん。なるほど、今回の魔獣アフロベアのは例外だから無視だね……って、あれ? アフロベアってなに? オラ知らないよ。遭った事ないよ……でも、オラ、アフロベアを知っているよ……えっ、なに? これ何? えっ、えっ……」


「落ち着けマイ。そういう本編のマイは知らないけど、ここでは知っているのがパラレルワールドなんだ」


「……これが、ぱられるわーるど……うん、やっぱり分からないよ。でも、大丈夫。分かったふりするから。だってオラがアフロベアを知っているのは知っているんだから仕方ないもんね」


「……そうだな。仕方ないな……。まあ、そんな感覚でパラレルワールドは大丈夫だ。話しを戻すぞ。気聖使いには、魔法使いと同じように階級みたいのがあるんだ。魔道士が大魔道士に成る的な感じのやつだ」


「聖上高気だね。オラ、知らないけど知っているよ」


「そうだな……」


と、答えながらゼンちゃんは、マイちゃんがもう動揺を克服した事に少し寂しさを覚えていた。


「──……本来は気聖使いの上級者の事をそう呼んで差別化を図っていたんだけどな、なんか天井の山や樹海に人が増えた事に伴って、それ以外にも色々と増えたんだ」


先ずは、剛気。その上に、倍剛気。次が三倍剛気で、その次が四倍剛気。そして銀剛気を経て金剛気と成る事で、気聖使いはそこで晴れて一人前と認められる。


「──金剛気からは、気聖の使い方が2種類に別れるんだ。そのまま全身を強化し続けていくパワーアップ型と、体内の気聖を動かして一部分を大幅に強化したり、気聖を飛ばしたり、手に持つ武器に移動させて武器そのものを強化させたりする移動型の2種類にな」


「気聖って移動できるんだね」


「ああ。しかもその移動型の気聖を使うのも実は多いらしく、現在では気聖使いの4割が移動型らしいぞ。オイラ達が樹海で遭遇しなかったのは、移動型の大半がその使い方をマスターしたら国に戻ったり、傭兵として戦争に参加したりするからみたいからだ。最近では気聖使いたちも区別して、移動型の気聖使い達を、“流聖気使い“と呼んでるらしいぞ」


「流聖気使いか、かっこいい名前だね。それにしても戦争か…….オラ、あれ嫌いだよ。なんで人間はあんなに酷いことを平気でするんだろうね」


「そうだな。なにが楽しいんだろうな、あんな酷い事。まあ、オイラたちは人間じゃないから分からないのかもな」


「だったら人間じゃなくて良かったねゼンちゃん。ミョクちゃんも争いは絶対嫌いだし」


「そうだな。ミヨクは争い絶対嫌いだよな。仙人との雑談でも言ってたけど、だからミヨクは時の魔法使いになったんだからな。世界の時間を止める魔法は誰も傷つけないから」


「そういえば、そうだね。ミョクちゃんって基本的に移動する時以外で世界の時間を止めないよね。オラ、深く考えた事がなかったけど、ミョクちゃんの世界の時間を止める魔法って究極の平和だね」


「究極の平和って……マイ、お前よく分かってないで喋ってるだろ。いや、でも、まあ、なんか悪くない捉え方だけどな」


「でしょ。なんかオラも適当だったけど、なんかいい事が言えた感があるよ。えへへ。ところでゼンちゃん、新聖気ってなに?」


「唐突だな。まあ、マイらしいけど」


「そう? 嬉しいな。えへへ」


「褒めてはないけどな。まあ、いい。新聖気ってのは、聖上高気の一つ上のランクで、仙人を除いた天井の山ではそれが一番強い階級だ。もっとも仙人が定めた訳じゃないから非公式だけどな。でも間違いなく最強だ。あのナカゴエのハムラでさえも、新聖気に成るには、更に26人の気聖とアフロベアとシルドナの気聖を得てようやくだったからな。たぶん普通に目指していたら順調に進んでも1年以上はかかってたんじゃないか」


「ハムラ。オラ、名前は知らないけど知っているよ。オラたちが雨の中で倒した人でしょ? 強かったんだね。オラの方が強かったけど。えへへ」


「……それはちょっと違うかもな。ハムラはあの時は満身創痍だったからな。五体満足だったら案外とどっちが強いか分からないぞ」


「オラ、それでも負けないよ! オラ、ゼンちゃんと違ってちゃんと躱すから、オラ強いもん!」


ゼンちゃんは思った。このまま話を進めると、なんか闘王モードが発動しそうだな、と。それは、ウゼー、ので話しをすり替える事にした。


「と、まあ、こんな感じがパラレルワールドだ。本編の設定を纏めたり、説明が長くなりそうで端折られたり、なんか解り辛いとこを解説するのがオイラとマイの役目だ」


「これがパラレルワールドだったんだ。オラ、いつもと同じように喋っていただけだから気付かなかったよ。ただ、ゼンちゃんが本当に賢いから、それがパラレルワールドなんだって思って本当はずっと驚いていたよ」


「……そうだ、これがパラレルワールドで、オイラとマイの本編以外の役割だ。ただ、オイラは本編でも賢いけどな」


「それは違うよゼンちゃん。オラ、本編だっけ? このパラレルワールド以外のゼンちゃんを賢いと思った事はないよ。本当だよ。一度もだよ。本当に本当だよ!」


その辺りでマイちゃんはゼンちゃんに「うるせー!」と怒鳴られて、蹴って泣かされるのであった。







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