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第28話 ギンロシの大陸の仙人②

 

 このギンロシの大陸には国は無く、統治者も存在していなかった。なぜならここは、もともと“たった1人の住処“だったからだ。


 ──今は仙人と称される、その男たった1人の。


 強大な力を持つ者であった。存在しているだけでその威力が広範囲に溢れ、それに当てられるだけで他者は体調に害を及ぼされるほどだった。


 故に仙人はここにひっそりとここ住んでいた。溢れ出るその力で、無駄に誰も傷つけないように。


 ──だが、この強力な力には1つだけ誤算があった。それは、仙人のこの力に触れた幾人かはその恩恵が受け取れるというものであった。


 仙人の力の恩恵、今では“気聖きせい”と呼ばれるこの世界で魔法と並び称される力を。


 争いの絶えないこの世界で、新たな力の源泉が見つかればどうなるか。


 仙人が静寂を求めたはずのこの大陸に、力を渇望する者たちが世界中から殺到した。山を囲む深い樹海に人々が住み着き、やがて町や村が形成された。ある者は一攫千金を狙う商売人として、またある者は「仙人の住む地なら安全だ」と信じ込んだ者たちとして。


「凄いよな、仙人って。人目を忍んであの山に住んだだけで、人が大勢集まって一つの国みたいになっちまったんだから。前回は会いに行かなかったけど、今日は会いに行くんだろ?」


 キースの町から離れ、樹海へと向かう道中でゼンちゃんがそう言った。


「うん。前回も、実はその前も忙しくて会いに行ってなかったからね。一応、長生きしてる同士で仲良くしておきたいし」


 ミヨクが答え、先頭を歩くマイちゃんは、まだ誰も踏み潰していない雪道を楽しそうに踏み歩いていた。


「──けど、正直ちょっと面倒くさいんだよね。仙人に会いに行くのって」


「そうなのか?」


「仙人の力が溢れ出ている範囲は、あの山から樹海まで届いているんだけど……つまり、人がその気聖を得るためには樹海に入ればいいってことなんだ。でも気聖って、一回受け取って終わりってわけじゃないんだよね」


「ん? どういうことだ?」


「気聖は魔力と同じで、その最大値をどんどん増やすことができるんだ。条件は仙人の力を長時間浴び続けるか、あるいは気聖を持つ者から奪うこと。時間効率がいいのは後者の方で、だから樹海の中には気聖を使う連中が沢山いて、常に争い合っているんだよ」


「気聖を使う連中の巣窟ってことか? だったらオイラたちが樹海に踏み込んだら、その争いに巻き込まれる感じか?」


「うん、おそらく。邪魔者排除って感じで。しかも気聖を使う人たちって魔力が全くないんだ。それが気聖を得る条件でもあるからね。……だから案外と多いんだよね、魔法使いが嫌いな気聖使いたちが」


「……なるほどな。それは面倒くさいな」


「うん、かなり。……っで、こんな話をしていたら、なんだか別に仙人に会いに行かなくてもいいかなって思い始めてきたんだけど、どうだろうゼンちゃん?」


「どうだろうって、オイラは別にミヨクが決めたことには反対しないが──あっ! マイは?」


 先頭を歩くマイちゃんは、今まさにその樹海の入り口に一歩を刻もうとしていた。


「あっ、ま、マイちゃん! その先は危険だから、ちょ、ちょっと待──」


「ミョクちゃん?」


 そう言って振り返るマイちゃん。そして不安げなミヨクの顔を見て、


「──うん、分かった。オラ気をつけるよ」


 と笑顔で答えると、しっかりとその意を汲むように、慎重な足取りで樹海へと踏み込んだ。


 その刹那、どこからともなく現れた複数人に囲まれた。

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