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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

魔力ゼロの転生聖女 ~新しい世界で生き抜きます〜

作者: 三神カミ


周囲からじりじりと迫りくるのは魔王の操る黒い炎。

燃え盛るその黒炎はまるですべてを地獄へ引きずり込もうとするかのように邪悪にうごめいている。

うねるその火にひとたび触れれば、その身はたちまち灰と化す。



「……うぐっ!」



喉の奥が焼けそうなほどむせ返る熱気の中、大聖女エルザは足元に横たわる仲間たちに目をやった。

聖騎士ランスロットはすでにこと切れている。大魔導士イリアも今しがた(かばね)と化した。


ふたりとも死んでしまった。

大きく見開かれた彼らのその目には絶望が浮かんでいる。

ふたりとも天を仰ぎ動かない。


大聖女エルザの聖魔法をもってしても、もはや彼らを救えない。

一度、魔王に魂を吸い取られた者は、もう二度とよみがえらせることはできないのだ。


動かない仲間を見て大聖女エルザは歯を食いしばる。

そのとき、自分の前に気配を感じた。かすむ目でぐっと前を睨みつける。





____え?






そこに、立ちふさがっていたのは、魔王ではなかった。

そこに立っていたのは、大聖女エルザを守ろうとする大きな背中。

それは、幾度となく見た勇者アスランの力強い背中だった。


しかしその背中もいまやすでに満身創痍。

アスランの全身を包んでいたはずの白銀の鎧は剥がれ落ち、あちこちのむき出しの肌から痛々しく血がにじんでいる。

ボロボロになったアスランの背中を見たエルザの口からついて出た言葉は。




「……アスラン」




ただその一言。

何を言うでもない。

絶望の中の唯一の祈りの言葉のように、エルザはただ、彼の名をつぶやいた。

今から魔王の黒い炎により燃やされ、その魂を奪いとられるのであろう愛する人の名を。


その言葉が聞こえたのか、聞こえなかったのかわからない。

アスランはこちらを振り返らないままに話す。




「……エルザ。さよならだ……」



唐突な別れの言葉。その言葉の裏にある覚悟を、エルザは嗅ぎ取った。




____アスラン、彼は死のうとしている。




アスランは背を向けたまま続ける。



「……俺の右のポケットの中に瞬間移動石(テレポストーン)がたった一つだけのこっている。万が一のために、とっておいたものだ。結果的にキミに渡すことになったな」

「……なにを泣きごといっているの。私たちが……魔王なんかに負けるはずない!」

「相変わらず威勢がいいな……でも、そんなキミでも、もうわかっているはずだ。勝ち目はないとね。ごめん。こんな瞬間移動石(石っころ)を最後まで大事に取っておくだなんてね……俺は最後まで魔王に負ける可能性をゼロにしきれなかった。優柔不断な俺の弱い心が、この結果をまねいてしまった……どうか、許してくれ」

「……許さない」

「え?」



アスランの戸惑いの声に反し、エルザはさらに語気を強めた。




「……アスランがこの世界からいなくなるなんて事、私は絶対に! いや!」




エルザは、決意した。

魔力の尽きかけた彼女にできることはただ一つ。

かつて、師匠から教わった禁断のあの魔法を使う事。

その魔法は魔力消費を極限まで抑える代わりに、あるものを消費する。

それは。




____自分自身の、命。




自分の命を魔力の代わりとして使う、大聖女だけに許される究極の聖魔法。

聖魔法、“輪廻転生(サンサラー)”だ。

エルザはアスランを転生することに決めた。


しかし、輪廻転生の魔法は禁術。それにはいくつかの理由がある。

先ずは術者が必ず死ぬこと。

そして、この魔法を受けた者は、いつ、どこに、誰に、転生するかはわからないこと。

とても危険性が高い魔法なのだ。


エルザは決断したものの、ひと時、躊躇する。

振り子のように心が左右に大きく振れる。



____でも、彼ならば。




勇者アスランならばどこに転生しようとも必ずや魔王を倒してくれるはず。

エルザは、そんな期待を彼に託した。

それは、一見するととても無責任な期待に思える。

自分の命をささげて、誰かに魔王を倒す責任を負わせるなどと、相手からすればいい迷惑なのかもしれない。

しかしエルザはそれ以上に、彼に死んでほしくはなかった。

誰がどう思おうと、彼に死んでほしくはなかったのだ。


アスランが思う以上に、エルザは彼の事を想っていた。しかしその想いを告げた事はない。

その想いを告げる代わりに、この身をささげよう。

それがエルザの覚悟だった。


エルザは目を閉じ、祈るように両の手を胸の前に合わせ、ちいさくささやいた。




「……アスラン、これは私の最後のわがまま。どうか、生きて! 聖魔法、輪廻転生(サンサラー)!!」




ぼうっと、エルザのまわりに魔法の光が集い来る。エルザは白い光に包まれた。

その時、エルザのただならぬ気迫に何かを感じ取ったのか、たちのぼる黒煙の中から魔王の声が響く。

怒りに満ち満ちた、その耳をつんざく雄たけびは、ビリリと空気を揺るがせた。





「……グウウオオオ!! 勇者アスラン、死ぬがいい!! 暗黒魔法闇の曇槍(カーラズ・スピア)!!」




瞬間、頭上の黒煙を切り裂いて漆黒に輝く巨大な槍がアスラン目がけて一直線に向かい来る。

それを見た勇者アスランはその刹那、反射魔法を唱えた。




「いでよ! 魔法反射障壁(リフレクト・シールド)!!」




青い光がアスランの身を包みこんだ。


エルザは我が耳を疑った。

アスランはもともと間の悪い男であったことは百も承知だった。そこがなにより彼の魅力のひとつでもあった。しかし、今回ばかりは取り返しのつかない間の悪さだ。





____え? このタイミングで? 魔法反射? まじ!? ちょ、と!





しかし一度発動した魔法は術者でも止められない。

魔王の放つ黒い光、エルザの放つ白い光、アスランの放つ青い光。

三つの光はアスランの頭のすぐ上でまじりあい、一つの点に集約する。

そして、暴発。




「きゃああああ!!!!」





エルザの身は激しい衝撃破に吹き飛ばされ、その身は風に巻かれたチリのように天高く舞い飛んだ。

右も左も上も下もわからない。しかしこれだけはわかる。

大聖女エルザのはなった輪廻転生の魔法は、勇者アスランの魔法反射障壁にはじかれてしまった。

その結果どうなるのか、火を見るよりも明らか。


そう。

エルザの放った輪廻転生の魔法は、あろうことか、彼女自身にかけられたのだ。



エルザはありったけの声で叫ぶ。





「アスランの!! 大馬鹿ぁあああああああああああああああ!!!」





エルザはぼんやりと薄れゆく意識の中、その身を運命にゆだねるしかなかった。





「……ああ、どうか、聖なる神の……ご加護、を……」









~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~









エルザはゆっくりと目を開いた。

突如として、喉の奥を無理やりこじあけて入り込んでくる空気に思わずむせる。




「ゲホッ……ゲホッ、うぐっ……」




思いっきり咳込んだあと、呼吸が少し落ち着いたところで、エルザはジンジンと痛む喉を押さえながら、体をむくりと起こす。

そして、周囲をうかがう。

どうやら、どこぞの草むらに寝転んでいたようだ。

ふいっ、と見上げた空の明るさ。真上にある太陽の位置から、おそらくお昼頃だというところまでは感覚的に理解できた。しかし、それ以上の事はわからない。




「森のなか……か……」




どうにも頭がハッキリしない。自分はここで昼寝でもしていたのだろうか。

まるで夢から覚める直前のように、頭と身体が別々に動いているみたいに感じる。

エルザは全身の節々に奇妙なぎこちなさを覚えつつも、震える手足をぐっとのばし、なんとか重い体を持ち上げる。ゆっくりと立ち上がった。


途端、ぐう、と腹が鳴る。

そして、空腹感の次に、襲いかかるのは激しい喉の渇き。

とにかく体が水を欲している。どこかもわからない森の中、エルザは本能的に水を求めてふらふらと歩き出した。





「……私は……ここで一体何をしていたのかしら……勇者アスラン、聖騎士ランスロット、それに大魔導士イリアは……私たちは、魔王と戦っていたはずじゃ……」





息切れする口元から、ひとりでにこぼれ落ちてくる言葉。

心細さを埋めるように、ひとり呟きながらエルザは改めてあたりを見渡した。

足元から延びる雑草はひざ小僧あたりをかすめている。


ぼうぼうと生える雑草を踏み分け、おぼつかない足取りであてどなくさまよっていた時、欲していたものが視界に映りこんだ。

少し先、草むらの中に。

丸い木の実が地に転がっているのが見えたのだ。

エルザは「あ」と小さく叫んで、急いで駆け寄るとその青白い実を両手で拾い上げた。


手のひらほどの大きさのまんまるのその実は“ミズムクロジ”の実だ。

中にはあまい蜜を含んだたっぷりの水分がため込んである。殻は固く手でこじ開けるのは至難の業。エルザは無意識に人差し指をその殻にあてて小さく呪文を唱えた。




「……聖魔法、光の刃」




指先から白い光の刃がほどばしる。はずだった。




「……あれ?」



何の反応もない。その固い殻をかち割る事は出来なかった。




「もう一度……聖魔法、光の刃!!」




何も起こらない。




「あれ……おかしいな……魔力切れかしら……」





魔法が発動しないことを不思議に思いつつも、エルザは足元にあったやや角張った小石を手につかむと、固い殻に打ち付ける。

何度目かの殴打の後、ようやく“ミズムクロジ”の実にちいさな穴をあけることに成功したエルザは、その小さな穴に口を当て、木の実を持ち上げてぐっと顔をのけぞらせる。

口の中に広がるのはみずみずしい感覚。まさに生き返る心地だ。




「ぷはぁ! おいしい! 水がこんなにおいしいだなんて」




エルザが一息ついたその時、すぐそばで誰かの声がした。

いや、誰か、というよりも、何か、の声。




「グィ? ゲッゲッゲ! ギピギギ?」




そばから聞こえてくるのは、おだやかならぬ奇妙な呻き声。

草をふみ分ける音が、ザザザと一気に近くなる。

その足音に明確な敵意を読み取ったエルザは急に怖くなり、思わずその場にしゃがみこむ。


四つん這いに身をかがめると、全身は草むらに紛れすっぽりと隠れてしまった。

口をつぐみ、息をひそめ、しばらくじっとしていると、足音の主はこちらを見失ったのか、気配が徐々に遠ざかっていく。




____うまくかわせたのかしら




そのとき、視界に入った自分の両の手をエルザはまじまじ眺めた。

指は真っ白く細長い。その先にはつるりと輝くちいさな爪。

これはまるで、おさなごの手だ。




「ひゃあ! なにこれぇ!!」




思わず飛び上がりエルザは叫ぶ。

まずかった。

再び周囲に何かの気配がよみがえり、その足音が迫りくる。

エルザはその場から離れようと身構えた。

しかし、時すでに遅し。

彼女の前に邪悪な顔をしたゴブリンが立ちふさがる。




「ま、魔族ゴブリン!?」




ゴブリン。知能は低く、その全身は鎧のようなかたい筋肉に包まれている。魔族の中では、下っ端ではあるものの凶暴な性質を持つ危険な種族。

くすんだ緑色の肌。大きな口。盛り上がる額の下からのぞく無機質に真っ赤な目玉。醜い背むしの角の生えた化け物が、こちらを鋭く見つめていた。

その時、エルザの頭の中に過去の記憶の一部が一気になだれ込む。




「いっ……!」




“”百年戦争“

それは、魔王率いる魔族と、勇者率いる人間族とのおおいなる戦い。

かつてのエルザは、そのたぐいまれなる聖魔法の才能を見出され、勇者一向に加わった大聖女であった。

大聖女として最後にみた光景。

それは、黒い炎に焼かれていく、勇者アスランの大きな背中。




「なんなの、この光景は……あたまが、われそう!!」




襲い来る膨大な回想に心が追い付かず、視界がグラグラと揺れる。

その時、目の前のゴブリンが巨大なナタをエルザの首におしあてた。

血なまぐさい刃が冷たく光る。




「ゲッゲゲッゲ!」




ゴブリンはナタを振り上げる。

すんでのところで我に返ったエルザは咄嗟に身を縮めた。

そして、足元の小石を素早く拾うと、ゴブリンの目にめがけて突きつけた。




「ギピャ!!」




小石は見事にゴブリンの右目に命中する。痛みに飛びはねたゴブリンに全身で体当たりをかますとゴブリンは後ろに倒れ込んだ。

体に染みついた戦いの記憶が、エルザを後押しする。


エルザはぐるりと周囲を見渡し、一目散に駆けだした。





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





どこをどう進んだのかよくわからない。

しかし、少女になったエルザは、運よく小さな通り道に突きあたった。

茂みから、思い切って飛び出す。パッと開けた視界に一瞬ひるむ。

左右に小路が伸びている。


その時、すぐそこの道わきに、こぶりな荷馬車が停まっているのが見えた。

渡りに船だ。




「……やった!」




エルザは思わず駆け寄り、荷馬車の前にまわりこむと座席を見上げる。

そこに座っていた、麦藁帽子をかぶった馭者は、湧いて出たように現れたエルザに気がつくと、目を皿のように丸くした。




「な、なんでぇ、こんな物騒な森の奥に、女の子とは」

「おじさん! 助けて! ゴブリンに追われているの!」

「ゴブリンだって!? そ、そりゃまずいな」




馭者はゆるく頭に乗せていた帽子の両端をつかむとぐっと頭にはめ込む。

血相を変えて両手を口元にそえると、何者かにむかって大きく声を響かせた。




「ディノ様! とっととクソを終わらせてくださいな! どうやら、ゴブリンが出たようですぜ!」




するとすぐ近くの木陰から「ゴ、ゴ、ゴブリンだって?」と男が慌てた様子で飛び出してきた。

陽を浴びた金の髪を揺らしながら男はこちらに駆け寄ってくる。

腰巻をぐっと締めなおしながら、ふと、エルザに視線を落とす。




「お、なんだこのガキは?」と首をかしげる男に「迷子のようですぜ」と馭者が応じる。

短い言葉のやりとりではあったが、その阿吽の呼吸ともいえる間の良さに、このふたりの関係性がみてとれる。

金髪の男は何も言わずエルザの小さな体を片手でひっつかむと、軽々と肩に持ち上げる。

そして、小さなエルザを抱えたまま、後ろの荷台のふちをつかむと驚くべき跳躍力を見せつけながら、荷台に一気に飛び乗った。


馭者はその姿を背中越しに確認すると、勢いよく手綱をしならせた。



「さぁ! 駆け抜けますぜ!!」




馬の尻を打つ鞭の音が、ぱぁんと響いた。






~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~






金髪の男はゆられる荷台の片隅で、魔法具商人のディノと名乗った。




「お前の名は?」

「私は……私の名前は……」




エルザ、と名乗ろうとしてためらった。

さっき思い出した記憶が正しければ、エルザ、という名は転生前の名前なのだ。

転生後の、この少女のことはわからない。


その時、エルザは、ふとディノの胸もとに視線を奪われた。

ディノの上衣の胸ポケットに、小さく青い花が揺れていたのだ。

エルザは思わずその花の名を伝えた。 




「わ……私の名はアイリス」

「ア、アイリスだって?」




アイリスと聞いた途端、ディノはひどく驚いたような表情を見せる。

エルザは一瞬、自分が変なことを言ってしまったのかと思い焦った。




____アイリスなんて、ごくありふれた名前のはず。




しかしディノの話を聞いて、エルザはディノが驚いた理由が分かった。

アイリスという名は、ディノの娘の名だったのだ。ディノは続ける。




「こんな偶然があるだなんてね……なんだか不思議な気分だ」

「……娘さんと同じ名前だったのですね。きっとその胸に飾っているアイリスの花のように可愛らしいのでしょうね」

「ありがとう……」と言ったディノの顔が曇る。そして「しかし、残念だが、俺の娘は病気で死んじまってね。実は、今は娘の墓参りから帰るところだったのさ」と悲しげにつぶやいた。


「あ、その……ご、ごめんなさい」




ディノは苦く笑った。そして胸ポケットに飾っていたアイリスの花の茎をつまむと、エルザの髪にそっとさした。




「気を遣わせて悪いな。俺の娘アイリスは、この青い花にちなんでつけた名前なんだ。生きていれば、ちょうど10歳。お前と同じくらいの年頃だ」

「私と、同じくらい……」




“今の私”はいったいいくつなのか。エルザにはハッキリとはわからない。

しかしディノが10歳くらいというのならば、そのあたりの年齢なのだろう。

ディノは馭者の方に顔を向けると、こういった。




「おい、ボッシュ。街に入ったら教会に寄ってくれ」

「教会?」

「ああ。この子を預けなきゃ。教会には確か孤児院があっただろう。この子は、どうやら記憶が少しあいまいらしい」

「へぇ……そうですかい。気の毒なことで」




ディノはエルザに向き直ると優しく微笑んだ。




「アイリス、それでいいかい?」

「はい……」




今のエルザに選択肢はなかった。

とにかく、今がいつで、ここがどこなのか、それすらもわからないのだ。

小川に落ちた木の葉のごとく、今は、流れに身を任せるしかなかった。

エルザはディノに聞いてみた。




「あの……ディノさん」

「なんだい?」

「今はユーリム王国歴の何年ですか?」

「ユーリム王国歴!? いったいいつの話を?」

「え?」

「今は、アスラン王国歴234年だ。勇者アスランが魔王を倒し打ち立てた王国さ。ユーリム王国だったのは、はるか昔の歴史の話だよ。お前は本当に変わった子だな」




____アスラン王国歴




エルザは頭の中でその言葉を繰り返す。

その響きを忘れるはずがない。

仲間たちと魔王に立ち向かったあの記憶が遠くよみがえる。



一瞬、まさか、とは思ったがエルザはこう考えた。



きっと自分が転生したこの世界は、勇者アスランが魔王に打ち勝ち200年以上も経った世界なのだ、と。




____アスラン、あなた。やり遂げていたのね。




胸がジンと熱くなる。

エルザの頬に一筋の涙がこぼれた。


ここはアスランが魔王を討ち倒した平穏な世界。

もし、そうだとしたら、きっとこの世界にはもうアスランはいない。

ランスロットもイリアも、もういないのだ。


エルザの瞳から堰を切ったようにとめどなくあふれ出す涙。

それは彼らがいないこの世界に迷い込んだ、自分自身に対する哀れみの涙だったのかもしれない。

孤独な自分に対する憐憫(れんびん)の涙だったのかもしれない。



エルザは決めた。

アスランが残した、この世界で一生懸命生き抜こうと。

アスランが残した、この世界を愛そうと。

彼をひそかに愛したように。







読んで頂きありがとうございました!



良ければ評価してもらえると嬉しいです!


ではでは!

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