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サレ公爵夫人転生〜離婚したいだけなのに、なぜか夫の愛人調査でバッドエンド回避〜  作者: 地野千塩


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第36話 愛人調査を再開します

 その翌日、愛人調査を再開した私は、まずはブラッドリーの病室へ向かう。


 現段階では第一容疑者はクロエだが、証拠はない。とりあえず、ブラッドリーからクロエについて聞き出すのが早いだろう。本当はエリサと一緒に調査したかったが、彼女も仕事がある。今日もクッキーを作り、一人でブラッドリーの病室へ。


 すっかり看護師とも親しくなっていた。噂はもうほぼ耳に入っていたが、看護師たちにクッキーを渡し、休みの日には一緒に推し活しようと約束するぐらいだが、当初の目的は忘れてはならない。


「ブラッドリー、きたわ。調子はどうよ?」


 相変わらず個室で入院生活を送っていたブラッドリーだったが、今日は顔色がいい。先程、仕事関係者も見舞にきたらしく、仕事の休暇も二ヶ月もとれたという。


「休みもらえて嬉しい」


 ベッドの上でブラッドリーは上機嫌だったが、クロエの件も聞き出さないと。


「クッキーあげるから、元愛人のクロエについて話して」


 そう言った直後だ。先程まで機嫌が良かったブラッドリーだったが、一瞬にして目が凍り、顔色も曇る。明らかにやましい。


「どういう事? さあ、クッキーをあげるから、詳しく話して」


 ブラッドリーの目が泳ぎ、いっさい私の目は見ないが、さらに低い声で詰める。


「私、ここの看護師とも仲良くなったわ」

「ひっ、いつのまに!」

「麻酔も薬もなしで、手術でもやってもらおうかしら。もちろん、あなたの頭の手術を」


 冗談のつもりだったが、ブラッドリーはウサギのようにカタカタと震え、怯えている。


「わ、わかったよ!」


 結局、クッキーをバリバリと噛みつつも、クロエとの関係を話した。当時、異様に二人の仲は燃え上がり、結婚式まであげたという。もちろん本当の結婚式ではないが、クロエに押し切られ、断れなかったという。


 呆れた。言葉も出ない。しかもクロエに嘘をつき、離婚予定だとか、結婚の約束までしていたと告白。


 そこまで聞くと、頭を抱えそうだ。結局、ブラッドリーに新しい愛人ができて別れたが、これだと恨まれても致し方ない。今回の怪我もブラッドリーの自業自得。蒔いた種が毒花として育っただけだろう。


「もう一度階段から落とされたら?」


 ついつい冷たく言ってしまったが、ブラッドリーも絵の具匂いを感じたという。クロエが犯人だと思うが、それだけだと証拠が薄い。この調子だと、別の愛人に恨まれている可能性も大だ。


「他に恨まれていそうな愛人はいる?」

「わぁ、助けてくれよ! 俺が悪かった!」


 すがりつくブラッドリー。こんな時でも「浮気は二度としない」と言わない。ある意味、芯があるとさえ思うぐらいだが、これだとバッドエンドは回避できない。


 私は咳払いをすると、ブラッドリーに一枚クッキーを与えた。バリバリと咀嚼音が響くが、それでも、心当たりがありすぎて、思い出せないという。


「本当に頭の手術やった方がいいかもよ?」

「わぁ、フローラ。待ってくれよ」


 これ以上、ブラッドリーと話しても無駄そうだ。早々と見切りをつけ、病室を出た。これはもう第一容疑者のクロエに聞いた方が早いと判断し、早歩きで病院から出ようとした時だ。


「あれ? あの女、ブラッドリーの愛人じゃない?」


 病院の待合室に見覚えのある女がいた。顔は美人じゃない。着ているドレスも派手だけでセンスがなく、成金風だったが、フローラの記憶を辿ると、すぐに誰かわかった。


 ブラッドリーの元愛人、ドロテーアじゃないか。しかもマムの前に付き合っていた女なので、最近だ。


 ドロテーアも私の姿に気づくと、抱えていた花束を床に落とす。あきらかに「やば!」という表情だった。しかも足早に逃げているじゃない!


「待って!」


 これは追いかけるしかない。


 私も抱えていたバスケットをその場に残し、ドロテーアの背中を追う。


 マムやザガリーを追いかけた記憶も新しい。全速力で追う展開に疲れるが、今は逃げるドロテーアを追いかけた。


「待って!」


 病院から王都の公園の方まで逃げたドロテーアだったが、向こうは運動不足だったらしい。追い詰めたら、息が上がっていた。顔も真っ赤。これ以上、動けない様子だったが、ちょうど近くの教会の鐘の音が響いた。ゴーン、ゴーンと重厚で耳につく音だ。


 もう面倒になった。ドロテーアからいちいち事情を聞くのもまどろっこしい。ドロテーアの肩をガッチリと掴むと、教会の懺悔室に連行した。


「あぁ、私。なんてことをしたんでしょう! 不倫という罪を犯してしまった!」


 最初は反抗的ドロテーアだったが、懺悔室に入って三分ほどで彼女の泣き声が響く。


「いや、このチート懺悔室、一体何?」


 こんな展開、何度か体験していたものだが、ドロテーアも改心し、懺悔室を出てきた時は、憑き物がとれたようだ。スッキリとした顔だった。


「何このチート懺悔室……?」


 私はこの懺悔室のチートっぷりに引くぐらいだったが、改心したドロテーアから証言も得られた。


 なんでもドロテーア、ブラッドリーの過去の愛人たちと同盟を組み、復讐計画も立てていたという。


 これには引くが、どうせブラッドリーが結婚してあげるなどと騙していたのだろう。それについては驚かないが、クロエもそのメンバーで、階段からブラッドリーを突き落とした話も聞いたという。


「本当?」

「本当よ。だからさすがに私も怖くなってブラッドリーのいる病院に偵察に来たら……」


 私に捕まり、懺悔室へ連行されて今に至る。


 ようやくクロエが犯人だと確証を得た。あとは本人に事情を聞くか、この懺悔室へ連行すればバッドエンドが回避?


「ありがとう、ドロテーア。これで事件も解決できそうよ」


 笑顔でお礼を言っただけだが、ドロテーアは変な顔をしていた。


「あなた、おかしいわ。夫の元愛人に笑顔を向けるなんて……。普通、憎しみや復讐心を持つんじゃ……? あなた、どういうこと?」


 それは中身が佐川響子だからね!


 そんなことは口が裂けても言えない。本当に言えやしないが、もうブラッドリーを階段から突き落とした犯人がわかったのだ。笑顔じゃない方がおかしくない?

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