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さぁ、ステキなご臨終の話をしよう  作者: カジセイ
第七章 天罰覿面ってヤツよね

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10.神社ではお静かに、の話(前半)

 着いた天元神社は、小ぢんまりした神社だった。


 さっそくぼくは境内で手形を出してみた。


 すると、天を覆っていたぶ厚い雲が割れ、一条の光が境内まで降りてきた。


 光を受けた境内の扉の隙間からは微かな光がこぼれ出し、かと思うと扉が勝手に開き、中には神々しい後光に包まれた道が続いていた。


 これが霊道……。


 ということは全く無かった。


 てか、そもそも今日は雲なんて出てないし。


「何も起きないな」


《起きないわね》


 裏に回って、改めて手形を出してみる。


 今度はなんとなく天にかざしてみた。が、何も起こらない。


 え。どうしたらいいの?


「霊界との繋がりって言ったら水回り? トイレとかじゃない?」


《トイレなんかないわよ、この神社》


「じゃ、手水舎は?」


 千明ちゃんの勧めるまま手水舎にかざしてみた。


 が、それもダメ。


「鳥居のところじゃない?」


 やはり何も起こらない。


「境内の中に入るとか」


《扉に鍵掛かっててムリよ》


「こじ開けてみたら?」


《祟られるわよ!》


「じゃぁ、階段から転げ落ちてみるとか?」


《転校生じゃないのよ! あんた途中からふざけてるでしょ》


「おい、バカやってないで。場所が間違ってんじゃねえのか?」


 タダクニくんに怒られた。ひどい。


 おかしいわね。


 場所は合ってるわよね。改めて霊界地図を確認してみるが、橋の少し先にある神社に目印のバツが書いてある。


 間違いなくここだ。どゆこと?


 ここに来るだけじゃダメなの、何かするわけ?


 そんなことあの仏様、ひと言も言ってなかったじゃない。


「どうすんだよ?」


 わかんないわよ、そんなこと言われたって。


 ぼくは半分投げやりで、


《狛犬。どうしたらいいのよ。教えてよ!》


 狛犬に手形を向けてみた。


 すると、それまで月明りで明るかった空が、みるみる蒼黒い雲に覆われ出し夜の暗さが三段ほど増した。

 かと思うと、それまで無かった風が吹き始め、辺りの空気が揺れ、その一角から渦を巻くブラックホールのような漆黒の闇が目の前に現れた。


 中央には黒いドアが浮かんでいる。


 わかり易いくらいの霊道だ。


 すると今度は一体の狛犬が石の台座から飛び降り、人のように姿を変えた。


 首から上は獅子、下は人間というエジプト神話に出てくるアヌビスのような姿をしている。


 ちなみにもう一方の狛犬も台座を飛び降りたが、こちらは緋い目をしてうんうん唸りながら番犬のように辺りをうろついている。


 まるでこの瞬間に他の者が神社に立ち入ってこないように見張っているようだ。


《や、やったの?》


「てか、なんだか怖ぇな……」


「さ、さすが、霊界との出入口って言うだけあるね。もっと神秘的なのを想像してたけど、おどろおどろしくて、それこそ地獄に繋がっていそう……」


《こ、怖いこと言わないでよ。あ、あの人に手形を見せればいいのかしら?》


 あまりの不気味さに固まって動けないでいると、アヌビスのほうからこちらに近づいてきた。


「貴様らか。自ら冥界への道を叩く者は。後悔しても、もう後戻りはできぬぞ。苦行を全うしてくるがよい」


 地の底からせり上がるような低音ボイスが脳天に響いた。


《く、苦行ってどういうこと?》


「地獄に行くんだ。苦行は当たり前だろう」


《じ、地獄って何のこと? てか、天国決定してるんだけど、ぼく。仏様のとこに戻るんじゃなくて?》


「言ってることがよくわからんが、もう遅い。我を起こしたのだ。三人揃っておとなしく地獄へ行け。さぁ、その手形を渡すがよい。夏の夜に 至る八熱 いずこかは 香炉を紡ぐ ほとどぎすかな――」


 和歌らしきものを謳いながら、不敵な笑みでアヌビスが更に近づいてくる。


 全身に寒気が走る。


 三人揃ってってどういうこと!?


「ねえ、ヤナギさん。なんか様子が変じゃない? 違うんじゃない、これ」


《た……たぶん。ていうか、絶対に違う、これ!》


「ヤバい! とりあえず逃げるぞ!!!」


 タダクニくんが千明ちゃんの腕を掴んで走り出した。


 ちょ、ちょっと。待ちなさいよ!


 置いてかないでよ!


 ぼくもすぐに後を追った。


 境内から鳥居に続く階段を三人で必死に駆け下りる。


「ギャオギャ@&#×ギャン!!!」


 振り向くと緋い目をした狛犬が追いかけてくる。


 なんでよ!


《タダクニくん! なんか追ってきてる!》


「いいから、構うな!」


《めっちゃ吠えてるわよ!》


「いいから、とにかく走れ!」

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