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さぁ、ステキなご臨終の話をしよう  作者: カジセイ
第七章 天罰覿面ってヤツよね

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9.霊堂地図、の話

《これよ》


 ぼくは霊道地図を二人へ見せた。


「何だそれ、地図?」


《そう。これにあの世と繋がってる場所が載っているの。ほら、古いアパートのトイレが幽霊の通り道になってるとか、心霊特集とかテレビで紹介されてるでしょ。アレよ、アレ》


 ……。


 え、なにその顔、二人とも。ドン引きしてる?


「……ヤナギさん。もうちょっとマトモな物出してよ。そんな小学生が喜びそうな変な地図じゃなくてさ」


《何言ってるの、ホンキもホンキ。大マジメよ。ちゃんとあの世の仏様から預かってきたんだから。それが証拠に、ほら、手形だってあるし、地図だって普通の地図と違ってそれっぽいでしょ》


「たしかに江戸時代とかの古地図ってそんな感じよね。ウチの店にも似たようなのあるけど」


《でしょ。とにかくこれを使えば戻れるって言われたんだから、使えばいいのよ。この地図の……ここよ、このバツのところに行って手形を出す。簡単でしょ》


「見せて。地図にバツはひとつかしないから、ここへ行けばいいってこと?」


《そういうこと。連れてってくれる?》


「……ま、それしかないって言うなら、やるけどさ」


《とにかくここへ行きましょう。そうは言っても、余裕かましてるほど時間無いの。あと三十分しかないんだから》


「どういうこと?」


《タイムリミット。一時間以内に戻らないと成仏できなくなっちゃう、そういう約束でこっちへ戻ってきたの。今ちょうど三十分使っちゃったから、残りは三十分ってこと》


「だから何度も時間気にしてたんだ」


《ピンポン。ね、だから急ぎましょ》


「タダクニ、地図、わたし苦手だから見てあげて」


「へーいへい」


 と気の抜けた返事をしながら、タダクニは地図を覗いた。


「……何だよ、これ。田んぼばっかじゃねえか」


《古いのよ》


「いつの時代の地図だよ。所どころ線も消えかかってるし」


《つべこべいわない。ここに四丁目って書いてあるじゃない。千明ちゃん、この家は何丁目?》


「三丁目」


《隣じゃない。古い地図っぽいから、今とは若干違うと思うけど、昔からあるような地主さんとか川とか空き地とか。そういう目印、何か無いかしら》


「だから田んぼしかねえんだよ。千明、何かわかる? オレ、ここの土地勘無いから、全然わからん」


「うーん、どうだろ……。でもこれって川だよね。この辺に川なんてあったかな……。バツの近くに橋って書いてあるけど、川も橋もあったっけ……。このバツが付いてるのは神社の記号よね。この辺りの神社って言ったら……」


《ちゃんと見て。ここに住んでるんでしょ。趣味、散歩じゃないの?》


「そんな趣味ないわよ。勝手に決めないでよ」


「近くの橋……」


 タダクニくんがスマホに話し掛けた。


 その手があったわね! 偉いわ。


「三つ、出てきたな。どれだろ?」


 スマホが検出した地図アプリと霊道地図を見比べる。


 建物も通りもほとんど一致しないが、ひとつだけ一致するものがあった。


 ――川だ!


 どちらの地図にも川が同じ形で流れている。


《川、あるじゃない。てことは、地図の橋ってのはスマホだと……この三本橋ってヤツじゃない?》


「だな。橋の手間にお地蔵さんがあるみたいだけど、ヤナギさんの地図にもお地蔵さんが書いてある。この橋は三本橋で間違いないな。で、そこからちょっと南へ行けばバツの神社だ」


《ここからどのくらい離れてる?》


 タダクニが地図アプリでナビ検索を押すと、ルートが立ち上がった。


 その隣に徒歩十五分と出ている。


「けっこう余裕あるじゃん」


「意外と近そうね」


 タダクニと千明が安心した表情を向け合った。


 この二人が付き合ってる理由がわかる気がするわ。


 似た者同士の、お人好し。恋人ってだいたい二つのタイプに大別できる。


 似た者同士か正反対か。


 どっちもメリット・デメリットはあるけれど、長く続くのはこういう似た者同士なのよね。


 正反対は、盲目的に激しく魅かれ合うってこともあるようだけど、その反面、冷める時も早い。


 それまで魅かれていた違う性格が鼻につくようになると、もうダメね。


 その点、似た者同士は多少鼻につくことがあっても、その他の大部分で居心地がいいから、ズルズル行っちゃうことが多い。


 だからこの二人も何度も何度もケンカしてるけど、気がつくと仲直りしてる。


 実際、お似合いのカップルだと思う。


 ヘラヘラしてないで千明ちゃんのことちゃんと守るんだぞ、タダクニくん。


 ていうか、今そんな分析どうでもよかった。


 この二人の未来より、自分の未来を心配しなきゃだった。


 近いだなんて安心してる場合じゃないわよ、二人とも。


 十五分なんてあっと言う間。急ぐわよ。


《場所がわかったんだし、行きましょう。スマホの地図とは違うし。夜は暗いし、すぐに見つかるかわからないし》


 このままだとのんびりしそうな二人を、ぼくは半ば強引に外へ連れ出した。




「ここが三本橋だって」


《ホントの橋じゃなくて地名だったのね》


「ほら。川も橋も無かったでしょ。この辺は何度も来たことあるんだから」


 そう。


 千明ちゃんの言うように、地図アプリが川として示していた場所に川は無く、代わりに遊歩道が続いていた。


 おそらく暗渠だ。整備された遊歩道の地下に、水路が通ってるんだと思う。


 そして三本橋は、今は交差点。埋立てられる前にあった橋の名前がそのまま地名として残ったってパターンね。


《霊道地図の通りそこにお地蔵さんもある。川も橋もあった。間違いないわね。霊道はこの先の神社よ》


「すぐ先に天元神社ってのがある。そこだな」


《今、何時》


「九時五分」


 よし。


 大きなトラブルも無い、順調ね。


 急ぎましょう。

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