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さぁ、ステキなご臨終の話をしよう  作者: カジセイ
第七章 天罰覿面ってヤツよね

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6.ゲームオーバー?、の話

 ガミさんにはすぐに繋がった。


 タダクニの予想した通り、署内では〝ガミさん〟で通っているらしく、これまた想定内というか最初電話に出た人から「何か苦情ですか」と心配されていた。


クレームではないことを丁寧に伝え、ガミさんに繋げてもらった。


『おう、兄ちゃん。どうした。月島カレンから何か新しい情報聞いたのか?』


 オンフックにしたスマホから、あのしわがれた声が聞こえてきた。

 

 間違いない、ガミさんだ。


 よし。第一段階にして最大の難関をクリアよ。


 署内の人と会話ができれば、何とかなるわ。


 ガミさんと知り合いだったこと、同じ新宿署だったこと。


 偶然がうまくハマった。


 いい流れだ、運がいい。こういう流れは続くものよ。


 タダクニくん、この勢いで上手いこと暴力刑事まで繋げてよ。


「そのことじゃなくて。別件なんですけど」


『別件? なんだ結局、オカマの成仏に間に合わなかったのか? オレにはどうすることもできんぞ』


「それでもなくて――」


 タダクニが今ある状況を手短に伝えていく。


 ヤナギさんが戻ってきたこと。

 ストーカーを連れてきたこと。

 それは千明のストーカーであること。

 通り魔事件のこと。

 ストーカーは取り調べで暴行を受けていたこと。

 それを苦に自殺したこと。

 そのせいで自分が地獄へ落とされそうなこと――。


『相変わらずややこいことやってんな、兄ちゃん達。観念して、一回地獄へ行ってみたらどうだ。そんで、どんな所だったか教えてくれよ』


「あの、すみません。冗談言ってる場合じゃなくて……。そのストーカーがいたのが新宿署っぽいんですけど、何か知りませんか」


『なんだよ、ノリ悪いな。ツマんねえ。だが、そういうことか。なんだか上の連中が署内でバタバタしてると思ったら。で、どうしろってんだ』


「その取り調べをした刑事に謝ってもらいたいんです。で、暴行事件として罪を償ってもらいたいんです」


『なるほどな。で、その刑事ってのは誰よ?』


 それは……。


 ぼく達は三人揃ってバンダナ男を一瞥したが、相変わらず誰とも目を合わせようとしない。


「わからないんです」


『取り調べを受けた本人がそこにいるんだろ? 訊きゃいいじゃねえか』


「教えくれないんです」


『なんだ、それ』


「でも調べれば、だいたいわかりますよね? 同じ署内のことですし」


『まぁ、わかるかもな』


「じゃぁ、連れてきてください」


『そりゃ、無理だろ。今頃そいつはどっかの部屋に拘束されてるさ』


「そこをなんとか。せめて電話だけでもできませんか」


『無理だっつてんだろ。それに署内の雰囲気からして、今は揉み消しに動いてる真っ最中だ。そのうち何もなかったように落ち着くさ』


「落ち着いちゃったらダメなんです」


『それが組織ってもんだ』


「組織って警察でしょ!? 困ってるのよ、何とかしてよ!」


『お、その声はあの姉ちゃんだな。お前ら、勘違いするなよ。警察ってのは正義の味方じゃねえぞ。単なる会社だ。それも公的な。民間の会社よりルールや手続きにはうるさい。被害届があって、初めて動く。事件があって、捜査する。何も無きゃ動かんよ。警察ってのは世間の想像以上に規律通りに動いてんだ。テレビみたいに熱い思いに動かされて勘や嗅覚で捜査していく、なんてのは現実にはあり得ねえ。そもそもそんな暇じゃねえしな』


 二枚舌よ。


 この半グレ刑事が規律を守ってるわけがない。


 結局は面倒なだけなんでしょ。


 てか、雲行きがマズい。


 なんとか盛り返してよ、タダクニくん。


「人が死んだのよ。立派な事件じゃない」


 ぼくの思いが通じたのか、千明ちゃんが食い下がる。


『事件になってねえんだよ。そしてこの先も事件にはならない。事故になるように動いてるはずだ。組織を守るために。今までもそうだったように。それが公的機関、警察だ。オレ達に組織をぶっ潰してまで、理想を貫こうなんて、そこまでの正義感は無い』


 最っ低……。


 正義感が無いなんて公言する警察いる?


 こいつ、いったいどういうつもりで警察になろうとしたのよ。


『ただまぁ、正義感は無いが……恩義はあるか。一応、知り合いの記者には伝えといてやる。面白かったら、来月くらいに週刊誌に載るだろう。できるのはその程度だ』


「来月って、それじゃ遅すぎる」


『無理なものは無理だ。忙しいから切るぞ』


「あっ、ちょっ――」


 ツーツーという音が虚しく部屋に流れる。


 え。切れちゃった。


《ちょ、何やってんのよ、タダクニくん。切れちゃったじゃない》


「わかってるよ。ちょ、もう一回掛ける」


 しかし今度は、少し会話すると、舌打ちしながらスマホを耳元から外した。


「ダメだ。繋げてもらえない」


 あのハゲヤクザ。


 居留守使いやがった。


 え。じゃ終わり? 他に手は? いや、もう無いわよ。どうするの?


《クックック……残念でした》


 見るとバンダナ男がニヤけている。


《な、何言ってるの。知り合いの記者に伝えるって言ってたじゃない。来週には週刊誌に出るのよ。そうすれば、再びあなたは有名人。それじゃ……ダメ?》


《いいわけねえだろ》


 ですよねぇ~。

 

 どうする?


 ぼく達三人はそれぞれ顔を見合わせたが、すぐに各々視線を落とした。


 そして流れる沈黙。


 その状況を楽しむように、


《万策尽きた。ゲームオーバーだな》


 バンダナ男が僕らを嘲笑う。



 時間は?


 ――八時四十五分。


 あと三十五分。


 なんとかしなきゃ。

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