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さぁ、ステキなご臨終の話をしよう  作者: カジセイ
第七章 天罰覿面ってヤツよね

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5.いきなり手詰まり感、の話(前半)

「なるほど、状況はだいたいわかった。じゃぁ、その刑事を告発すればいいわけだ」


《そういうこと》



 時計が目に入った。

 ――八時二十五分。

 五分も使っちゃった。もたもたしてられない。



「おい、あんた。その刑事は何て名前なんだ?」


 バンダナ男が首を傾げる。


「覚えてませんか? せめて山が付くとか川が付くとか、なんとなくでもわかりませんか?」


 質問した千明へは、答えではなく厭らしい笑みを返すだけだ。


「おい、聞いてんのかよ」


《ムダよ。その人は、協力する気なんて無いわ。協力しなければ、ぼく達が失敗すれば、自分は千明ちゃんと一緒になれると思ってるんだから》


「そんな……ならないわよ、一緒になんて」


《でも、そう信じているの》


「じゃ、何しに来たんだよ」


《ぼくが無理やり連れてきたの。刑事を捕まえて、納得して成仏させるために。そうすればタダクニくんの地獄行きも無くなる。天国で千明ちゃんを守ることだってできるでしょ》



 ……。



 え? ぼく何か間違ったこと言った?

 どうして二人とも黙っちゃうわけ?

 状況わからないわけじゃないでしょ。

 別れ話なんて引きずってんじゃないわよ。


《とにかく、その刑事を突き止めましょ》


「どうやって」


《どうって警察に電話するに決まってるじゃない》


「どこの警察署に掛けるんだよ。まさか一一〇番するってわけじゃあるまいし」


「それは新宿じゃないの? あの事件は新宿だったんだし。新宿ですよね?」


 千明が再びストーカーに水を向けるが、あっさり視線を外された。



「何なの、この人」千明にしては珍しく舌打ちして、苛立ちを面に出した。


 そんな二人を見て、タダクニはため息を漏らしながらスマホに指を走らせ、新宿警察署を検索、ダイヤルをタップした。が、繋がる前にスマホを耳元から外して電話を切った。



「つか、何て言えばいいんだ」


《そっか。そこの刑事は暴行の疑いがあります、とか言っても単なるいたずら電話だと思われるのがオチね。まともに取り合ってなんてくれないわね。てかその前に、そもそも新宿署で合ってるのかしら?》


「新宿で起きた事件が渋谷警察なわけないだろ」


《そうじゃないの。新宿っていくつか警察署あるのよ。管轄が分かれてるの》


「そうなのか? よく知ってんな」


《二丁目で働いてたのよ。警察のお世話になったことも何度かあるわ。ちなみに二丁目の管轄は新宿署じゃなくて四ツ谷署よ。ねぇ、ストーカーさん。あたなのいた警察署はどこ?》


 無駄だとわかっていながらも念のためバンダナ男へ質問を投げてみる。


 が、やっぱりそっぽを向いたむいたままだ。


 どうあっても、協力する気は無いってわけね。

 思わずため息が漏れる。


「どうする?」


「ねぇ、交番は? あの時、事情聴取受けた交番。あそこから管轄わかるんじゃない?」


 千明がスマホの地図アプリを立ち上げて、あの時の交番を検索する。

 すぐにヒットし、交番の管轄も新宿警察書だと判明した。


 千明ちゃん、ナイスよ。冴えてるじゃない。



「新宿署っぽいな、こっちも見て」


 今度はタダクニくんがスマホを差し出してきた。

 画面にはググって出てきた事件の記事が出ていた。



 ――七月二十六日、夕方。新宿×丁目交差点付近で男性が交通人ら相手に刃物を振り回す騒ぎが起きた。男性は駆けつけた警察官に取り押さえられ、銃刀法違反で現行犯逮捕された。警視庁新宿署によると、男性は住所不定、平島てつや容疑者、三十四歳。幸い怪我人は出ておらず、凶器に使われた刃物は……。



「新宿署って書いてある」


 間違い無いわね。新宿署だ。

 ていうか、このストーカー、平島っていう名前だったんだ。



「でも、これだけじゃ取り調べた刑事まではわからないな」


「とりあえず電話してみたら? じゃないと進まないし」


《何て言うの? この事件を取り調べた刑事を出してくれって言うの? ムリよ。そんな電話、怪しすぎてこっちが捕まっちゃうわよ》



「これ、容疑者が死んだってのは記事にもネットに出てないな」


 タダクニくんがスマホを見ながら呟いた。


 ワードを色々変えて、事件の続報を検索しているみたいだ。



「事件の話題性じゃない?」


「けっこう話題になった印象だったのにな」



 取り調べた刑事が誰だかわからないとどうしようも無いのに、いきなり手詰まりじゃない。


 どうすればいいの?


 ぼくは下唇を触りながら頭をフル回転させた。


 ただ、はやる気持ちとは裏腹に頭の中は真っ白で、無理やり回転させる頭の中は、中身の無いミキサーが空回りしているような感じで、何ひとつ浮かんでこない。


 つい熱くなって戻ってきたはいいけど、ここで終わりなの?


 これじゃ何しに戻ってきたのかわからない。


 自分は助けてもらったのに、ぼくはこの二人を助けられないの?


 強面の仏様にあんな啖呵切ってきたのに、何もできないなんて。


 バンダナ男もほくそ笑んでいる。


 やるせない。


 無力という薄い膜が背中から身体全体を包み込み、それがどんどん厚みを増していき、押しつぶされそうになってくる。



 だめよ、弱気になったら。


 しっかりしなさい、透!

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