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さぁ、ステキなご臨終の話をしよう  作者: カジセイ
第六章 決戦はカントリーロード

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7.千明、見えるの?、の話

「それじゃ、オレ達はここで」


 徳之進は大宮で新幹線を降り、タダクニ達と別れた。




《あの人達、うまく成仏できるかな?》


「人の心配してる場合かよ」


《それもそうね。でも楽しかったね。行ってよかった。それに私も親のこと思い出しちゃった。忙しさを言い訳に、私もまともに会えてなかったんだよね。徳之進は御両親、もう亡くなっちゃってるんだっけ?》


「ウチはいないよ」


《そっか。『いつまでもいると思うな親とカレン』だよね》


 何が『だよね』なのか意味不明だ。


《ねぇ、ついでにもう一つお願いしていい?》


 ついでってなんだよ? もう十分色々やってきただろ。


「お願いって?」


《静岡に連れてってくれない? 私もお母さんに会いたくなっちゃった》


「ええ!?」


 また始まった。カレンのきまぐれオレンジロード……。


《いいじゃない。どうせヒマでしょ?》


 たしかに予定はないが、ストレートに決めつけられるとムッとする。


《大丈夫。ヤナギさんみたいに身体借りたりってわけじゃないから。お母さんの顔を見たくなっただけ》


「どうせ嫌だって言ったって、なんだかんだで行かされるんだろ?」


《お! よくわかってるじゃない。偉いぞ、おぬし》


 へいへい。


 徳之進自身は認めようとしないだろうが、このペースを鷲づかみされてるのを内心では気持ちよくさえ感じ始めていた。


《その前に。今日はサブスクで、マイケル・ジャクソンのライブを観ましょう。朝までオールしたい気分。徳之進はどの曲が好き? 私は断然、『BLACK OR WHITE』》






 千明の部屋に戻ってきた。


 ヤナギさんに身体を貸した千明は、相当体力を消耗したのだろう、グッタリしていて、部屋に戻るとそのままベッドへ突っ伏した。


 穏やかな顔をして眠っている千明。


 掛けてあげた毛布が、胸の辺りで呼吸に合わせてゆっくりと隆起する。


 オレはこの二週間の出来事を思い返した。




《なに、見えてるの? しかも喋れるわけ? やるじゃない!》


「え? えと……」


《ぼくの名前は柳透。ま、幽霊なんだけどね。よろしく》


 ストーカー疑惑でこの部屋にやってきたら、おかま口調の幽霊がいて。それがヤナギさんとの出会いだった。そして成仏をお願いされた。


《ずっと家の外にいたのよ。入ろうとしたわ。でも入れなかったの》


「入れなかった? なんで?」


《盛り塩よ》


 わざわざ宇都宮まで行ったのに、肝心のヤナギさんがいなくなったり。


「こちらの方に邪悪な霊がとり憑いています。すぐに取り払いますから、ご安心を」


「邪悪?」


「臨、兵、闘、者……」


 あの時は、ホント焦ったな。せっかく法事に潜り込んで、さあこれからって時に、住職がヤナギさんを地獄へ送るとか言い出すし。あんなに必死に走ったの、いつ以来だろ?


「何をどう落ち着けって言うのよ! もおっ。そんなに行きたくないなら、わたしが地獄へ送ってやるわよ。こうしてやる!!」


「何すんじゃ、ぼけぇ!」


 逃げ込んだファミレスでは千明とケンカ。


 そしてチンピラ刑事に連れられて、夏目さん達を紹介された。


「面倒臭いこと言ってんじゃないわよ、この腐れチン〇が!!? 教えればいいのよ! それがムリならあの女を連れてきなさいよ!」


 暴漢相良が包丁取り出して千明を人質に取った時にはさすがにパニクッた。


「そんなの渡しちゃダメっスよ。騙されてますよ、オジサン」


 カントリーロードでやっと会えたヤナギ父は、詐欺に引っ掛かりそうになっているし。夏目さんは後先考えずに先走るし。


「ショーパブで働いてる。わかりやすく言えば、ゲイバー」


「透が夜の仕事をしてるのは知ってたよ」


 渾身のカミングアウトしたら、知っていたり。




 たった二週間の内に色々な出来事が起こりすぎて目が回った。


 千明はヤナギさんが見えない中、振り回されただけで、オレ以上に疲れたはずだ。


 それに最後は身体まで貸して。


「おつかれさま」愛おしむように彼女の頭をそっと撫で、優しくキスをした。




《……あのぉ。お取り込み中のところ悪いんだけど、ちょっといいかしら?》




 ヤナギさんがおずおずと声をかけてきた。


 そういえば、前にも同じようなことがあった気がする。




《おそらく明日には成仏して消えちゃうから、その前に。一応、話しといたほうがいいと思って。ぼくの宿ってる物について》


「宿ってる?」


《そう。宿ってる物。千明ちゃんが最近お財布にキーホルダー付け始めたの知ってる? アレ、元々ぼくのなんだ》


 ――渋いでしょ!? 超アンティーク。激レアだよ、これ。お店に入ってきて、すぐ買っちゃった~。


 いつだったか、嬉しそうに見せびらかしていた。


 ……あれか。


「あのキーホルダーに憑いてんのか」


《憑いてる、なんて悪霊みたいな言い方やめてよ。わざわざ宿ってるって言ってるんだから、言い直すんじゃないわよ。性格悪いわね》


「じゃぁ、あれも供養したほうがいいってことか」


《どうせ成仏しちゃうんだから、供養しなくてもいいとは思うけど。何て言うか『形見』って言うの? たまにぼくのこと思い出すキッカケにしてくれればいいかなって》


「わかった。供養しとくよ」


《あんた、ちゃんと聞いてたの、人の話!?》


「聞いてたよ。憑いてるって言うから、気持ち悪い、供養するって言ってんじゃん」


《気持ち悪いって、あんた、本人を目の前にしてよくそんなこと言えるわね。モラル無いわけ?》


「幽霊にモラルの説教されるとは思わんかった。自分は化けて出てきて、モラルの欠片も無いくせに」


《憑いてるとか化けてるとか、さっきからその表現、やめなさいよ! 人聞きの悪い。まるで魔物扱いじゃない》


「大して違わないだろ。魔物も幽霊も」


《全然違うわよ。ホント性格悪い。今からでも呪ってやろうかしら》


「やっぱり悪霊じゃねえか」


《違うわよ!》


「亡霊だよ!」


《違うわよ!!》


「魑魅魍魎だよ!」


《ち、違うわよ!!! どんどん酷くなってるじゃない》


 キッと睨むヤナギさんと視線がぶつかった。


 こんなしょうも無い言い争いも、もう終わりだと思うと、少しだけ淋しさを覚えた。




「……タダクニ? 誰としゃべってるの?」




《ほら、あんたがうるさくするから千明ちゃん、起きちゃったじゃない》




「そ、それ。ヤナギさん?」




 ――え!?




 千明が目を丸くしてヤナギさんを見つめている。


 ヤナギさんのこと、見えんのか千明?

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