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さぁ、ステキなご臨終の話をしよう  作者: カジセイ
第六章 決戦はカントリーロード

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4.たたみ掛けるなら今、の話(前半)

「あの。けっして怪しい者じゃないんですけど、そのお金は渡さないほうがいいと思います」




 タダクニが急いで徳之進の隣りへ駆け寄りフォローに入る。


 もうこの時点でかなり怪しい。




「あんた達、何なんだ。警察呼ぶよ?」


 スーツの男がスマホを取り出した。


「き、君は昼間の……」


 ヤナギ父が唖然とした表情を向ける。やっぱり覚えていたんだ。


「お知り合いなんですか?」


「いや、さっき話した今日の法事の乱入者。彼がその乱入者です」


「な……! 柳様、これは相当根深いですよ。これこそ悪い星回りが色濃い証拠です。一刻も早く魔除けされることをお勧めします。とりあえず、こんな人達とは関わってはいけません。行きましょう」


「話を聞いてください。騙されてるんですよ」


「さっきから人のこと詐欺みたいに言って、失礼だろ! 名誉棄損で訴えるぞ! さ、柳様、行きましょう!」


 スーツがヤナギ父を連れて席を立つ。


「待ってください」


「聞いちゃダメです。無視しましょう」


 そのままレジに千円札を二枚置いて店から出ていった。




《ったく、徳之進。相変わらず空気読めず、ね。期待を裏切らないんだから》


 カレンさんの口の端が上がる。


 やっぱりこの人、楽しんでるだろ?




《タダクニくん、追いかけて! 帰しちゃダメよ》


 わかってる。


 これを逃したら、おそらく次は無い。


 オレはすぐに二人を追いかけた。




「お父さん、待ってください! 話があるんです」


「しつこい、無視してください」


 スーツがヤナギ父の手を引いて駐車場をどんどん進んでいく。


「お父さん!」


「話を聞いてください!」


「大事なことなんです!」


 何を言っても振り向いてくれない。




 スーツが車のキーをかざす。


 ピッピッという音とともに白のレガシーのハザードランプが点滅した。


 ヤバい!


 車に乗り込まれたら終わる……。




「息子さんが……トオルさんがここにいるんです!」


 オレは必死に訴えた。


 ヤナギ父が立ち止まり振り向いた。やった! 思いが通じた!?




「どこで透のことを知ったんだ! 透とどういう関係なんだ! いったい何を企んでるんだ!!」


 めっちゃ怒ってんじゃん。


 こめかみに青筋おっ立てて、今にも血管ぶち切れそうだ。




「聞いたことありますよ、こういう連中のこと。香典泥棒みたいなものですよ。ご家族が亡くなった時に突然現れて財産を狙う輩です。柳様。こんな連中に関わっていてはいけません。不吉な星回りが余計に悪化してしまいます」


「うるさい。あんたは黙ってろ!」


 と、その時、


「イカルミくん! これ見て!」


 店内から駆け付けた夏目さんが、チラシとスマホをオレに差し出した。


 チラシはさっき、スーツがヤナギ父へ見せていたものだ。


 スマホには何かを検索した画面が表示されている。




 ――トナカイの会 詐欺、被害額、音信不通……。




 渡されたチラシに視線を移した。


 会社名が書いてある。……トナカイの会。




「柳様! 関わらないほうがいいです。こうしてる間にも運気はどんどん悪化していきます」


 オレはスマホの画面をヤナギ父に押しつけた。


 不機嫌そうに画面を覗き込むヤナギ父。


「柳様! 行きましょう! さ、早く車に」


 固まったまま動かないヤナギ父。その表情にはハッキリと困惑が見て取れる。




 たたみ掛けるなら今しかない。


 オレはヤナギさんに目で合図を送った。


 呼応するようにヤナギさんが頷き真剣な表情になる。




 正味十秒ほど。


 永遠とも感じる空白の時が流れる。




 ……どうした。


 何やってんの?


 よく観察すると、ヤナギ父の腕時計が不自然に回っている。


 


 違うわ!


 完全に合図を履き違えてる。


 このタイミングで腕時計なんて誰が見るんだよ!?


 気づくわけねえだろ!

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