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さぁ、ステキなご臨終の話をしよう  作者: カジセイ
第六章 決戦はカントリーロード

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3.迷探偵、の話

「商談?」




《骨董品のパンフレットを見てたわ。壺とか茶碗とか》


《ね、めっちゃ怪しいでしょ? 古そうなガラクタよ。あんな誰が使ってたのかもわからない小汚いモノ、欲しい人いるわけないって》


 あんた、テレビ東京に殺されるぞ。




「そういうの好きな人いるじゃん。お父さんもそんな感じ?」


《昔はそんな趣味無かったけど》


《ほら!》


《ただずいぶん帰ってないから、新しい趣味なのかもしれない》


《無いって!》




 やっぱり蛇の道は蛇?


 何か相通ずるものを感じ取ってるとか?




《止めたほうがいいって。隣の席に移動したら怒られるかな?》


 ヤナギ父の隣りのテーブルは空いてる。


 あそこに移動したら、二人の会話も聞き取れそうだ。


 移動自体、怒られることはないだろうが……。


「バレないかな?」


 オレと千明は顔バレしてるんだよね。


《店内、暗いから大丈夫だって》


 そう言うと、カレンさんが右手でオッケーサインを出した。


 彼女はさっきからどことなく楽しそうだ。


 


 結局、オレ達は顔バレのリスクを冒し、席を移動することにした。


 オレと千明は、ヤナギ父からは背中しか見えない位置に陣取り、会話に耳をそばだてた。




『法事に不審者ですか!? それは息子さんの大事な日に不吉でしたね』


『今まで法事には何度も出てきたけれど、あんなことは初めてでして……』


『実は柳様。今年は特に星の巡りがよくないんですよ。南からよくない流れが入り込んでいて、それが全てに悪影響を与えているんです』


『……星の巡りですか。よくわかりませんが、そんなもんですか』


『例えば、最近、特に体力の衰えを感じることはありませんか? 昔はこのくらい平気だったのに、やけに疲れるとか』


『そう言われれば……』


『やっぱり。まだまだそんな年齢じゃないですしね。あとは内面的にも影響が出ているかもしれません。一人でゆっくりされてる時に、将来やこの先のことに漠然とした不安に襲われることはありませんか』


『あるような気もします』


『全て星の巡りが関係しているんです。南から暗い影が落ちてきてるんですよね。このまま放っておくと、もっと悪いことが続きそうですね。息子さんも成仏できずに困ってらっしゃいますよ』


『どうしたらいいんでしょうか』


『ご安心ください。魔除けの品を揃えることで、今の悪い流れはキッパリと断ち切ることができます。もちろん息子さんも無事に成仏できるでしょう。ただ、お話を聞いてますとちょっと事態が重そうですね。できればご自宅の角部屋全てに魔除けの品を配置するのをお勧めしますが……』 




《ね? どこが普通の商談よ。怪しさしかないじゃない》


「骨董品じゃなくて、悪徳商法ね」


「ああ。どこから聞いても詐欺だな、こりゃ」


 にしてもあまりに古典的すぎないか?


 こんなカビ生えたような霊感商法に引っ掛かるヤツどこにいるってんだよ?


『どれを買ったらいいんでしょうか?』


 はい、ここにいました!


『もちろん値段が高いほうが効果もあるんですが……お勧めはこの辺り、三十万円以上のページから選んでいただくのがよろしいかと思います』




「止めたほうが良くない?」


 千明が声をひそめる。


「どうやって?」小声で返すが、答えが見つからない。


 いきなり隣りの席から「それ、詐欺ですよ」って声をかけられて素直に信じるだろうか?


 んなわけない。


 そんなことしたらこっちのほうがよっぽど怪しい。




『お電話でもお伝えしましたが、ウチは一部前金制を取っています。ちなみにですけど、今日は現金お持ちですか?』


『持ってきました。これです』




《けっこうぶ厚い封筒出したわよ》


 カレンさんが目をパチクリさせる。


《ダメだって、お父さん。気づきなさいよ、詐欺だって。そんな壺飾ったって、ぼくの成仏に関係ないわよ。タダクニくん、止めてあげて!》


 いや、だからどうやって?




「そんなの渡しちゃダメっスよ。騙されてますよ、オジサン」




 へ? 誰?




 見ると、いつの間にか夏目さんがヤナギ父達のテーブルの脇に立っていた。


 何やってんの、夏目さん?




「は? どなたですか?」


 スーツの男性が天然記念物でも見るような顔つきで夏目さんを見ている。


 そりゃそーだ。てか夏目さん、何かプランあるんですよね?




「オレですか?」


 あんた以外に誰がいる。




「関係ねえだろ」


 関係なかったら話し掛けちゃダメでしょ。


 夏目さん、まさか……




「あの、ちょっと向こういってもらえますか。大事な話し中なので」


 まるでキャッチセールスを追い払うかのように簡単にあしらわれる。


 もっともな反応だ。




「オレはめ……探偵だ」


 ひょっとして今、名探偵って言おうとした?


「探偵? 探偵が何の用だ?」


「用は……人助けだ」




 ダメだこの人、絶対ノープランだ。


《ちょちょちょ! 何言ってんの、あいつ!? 意味不明すぎるわよ。あれじゃ完全な不審者じゃない。タダクニくん、ボーッとしてないで行きなさいよ》




 マジか。どうする?


 どうやって言い訳する?


 って、考えてる暇なんてないか。




 だぁくそっ!




 こんなことなら連れてくんじゃなかった、この人達。


 ――千明、別にいいよな? 夏目さん達もついてくるって言ってるけど。成仏のヒントがあるかもって。


 ふいに数時間前の発言を思い出し、安易な自分を嘆く。




 薄氷のようだったラストチャンス。


 慎重に事を進めるはずが、ピキピキと亀裂が入り、パリンッと割れる様が脳裏をよぎる。




 成仏。


 やっぱりダメかもしれない。

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