2.異変、の話
最初に異変に気付いたのはカレンさんだった。
《ねぇ……なんかあの二人、雰囲気おかしくない?》
「どういうこと? 別に変には見えないけど」
《あのスーツの人、怪しいんだよね》
《怪しいって、どういうこと?》
《うまく説明できないんだけど……人を騙してる時のオーラって言うか。……いや、勘違いかな。気にしないで》
カレンさんが罰が悪そうに硬い笑顔で流そうとする。
「蛇の道は蛇ってことか」
《いや、変なこと言ってごめん。気のせい、気のせい。てか、誰が蛇の道は蛇よ? 危うく聞き流すところだった。ホント徳之進はひと言多い。だからモテないんだよ》
「モテる・モテないなんて今、関係ねえだろ!?」
《今じゃなくてもずっと関係ないけどね》
「じゃ、言うなよ」
《イラッとすること先に言ったのそっちでしょーが》
また言い争いが始まった。この数時間で何度目だろう。
二人の口喧嘩は放っておけ、というのが今日学習したことだ。
「何、どうしたの?」
千明が説明を求める。
幽霊の声が聞こえず、一人だけ蚊帳の外なのだ。
「二人の雰囲気がおかしくないかって。スーツの人が怪しく見えるって話」
「あ、それ、なんとなくわかるかも。何がってわけでもないけど、どこか引っ掛かるのよね」
《女の勘ってヤツじゃないの?》
「女の勘……」
「いや、これといった理由はないんだけどね」
《何話してるのかしら。ここからじゃ聞こえないわね。ちょっと近くまで行ってくる》
「どうしたの?」
夏目さんが移動するヤナギさんの背中を視線で追う。
「近くで会話聞いてくるって」
《私も行くわ》
カレンさんが後を追う。
少しして戻ってきた二人へ「どうだった?」オレは尋ねた。
《よくある商談って感じ。別に怪しいとかじゃないわね》
ヤナギさんがそう答えると、
《変なガラクタ買わされそうになってる。めっちゃ怪しいよ》
カレンさんも答えた。
ちょっ、二人で言ってることが真逆なんですけど?




