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さぁ、ステキなご臨終の話をしよう  作者: カジセイ
第五章 八月十日

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6.午後1時33分(徳之進)

「ったく。だから刑事は嫌いなんだよ」

 オレは刑事達が半開きにして出ていったドアを閉めた。


 何だったんだ、アレ。

 相変わらず失礼な連中だった。

「で、あんた達。これからどうすんスか?」

「自分達も行き詰まっていて。今夜、最後の望みを託してある所に行くんだけど、その前に何かヒントをもらえたらって思ってやってきたんだけど」

「じゃぁ、当てが外れましたね。ここにはヒントになるようなことは何もないスよ」

 そんなものがあれば、とっくにカレンが成仏してる。

「ちなみにそのおかまの幽霊の願いは何なんスか?」

《さっきから『おかま、おかま』ってうるさいわね。ヤナギって名前があるのよ。名前で呼びなさいよ》

「ヤナギさん? の願いは何なの?」

《ぼくがゲイだってことを、父親にカミングアウトすること》

 おかまもゲイもどっちでも同じじゃねえか。こだわりがわからん。

「それから?」

《それだけよ》

「そんだけ!!?」

 ざけんなよ。

 カレンは七個もあったのに、おかまは一個かよ。全然、つり合ってねえじゃんか。


「それなら父親に会いに行けばいいだけだろ。簡単な話じゃないスか」

「そうもいかないんですよ。色々あって……」

《自分達だって色々あったって言ってたじゃない。それと同じよ》

 色々……ね。

「そう言えば期日は?」

《そうよ、期日。今日なのよ。だから焦ってるんじゃない。今日がぼくの四十九日なの。さっきまで法事に参加してたんだけどね。それこそ色々あって追い出されてきたのよ》

「法事? だから二人とも喪服なんだ。つうか、何したら追い出されるんだよ? 青ひげダンスでもしたのかよ」

《するわけないでしょ、そんなこと。てか何よ、青ひげダンスって。あんたゲイのことバカにしてるでしょ!?》

「してないって。青ひげ危機一髪で助かるかもしれない。なんてな」

《あんた今、世界中のゲイを敵に回してるわよ》


《ちょっと待って。今日が法事って言ったわよね?》


 それまで黙っていたカレンが突然、口を挟んだ。

《そうよ。それが何か? あなたまでアホなこと言い出すわけじゃないわよね?》

《それってホントに大丈夫なの? もう過ぎてたりしないよね?》

《え。どゆこと?》

《法事の日と四十九日は違うことあるでしょ。ほら、みんなが集まりやすい土日とかを選んだりして。でもホントの日は別日なんてことあるじゃない》

「初七日もそんな感じだよな。葬式の後にそのまま初七日も済ませたりする」

《え。ぼく、事故に遭ったの六月十七日だけど……》

「てことはその日から数えて四十九日目は……」

 オレは壁掛けカレンダーで日にちを確認した。一、二、三……


「先週、八月四日じゃん」

「ウソだろ!!?」

 イカルミとおかまがカレンダーに駆け寄る。

 千明という女性だけが、眉間に皺を寄せてキョロキョロしている。

 きっと彼女は幽霊の声が聞こえないのだろう。羨ましい。


《ヤだ!? 六日も過ぎてるじゃない!!? どうしよ、タダクニくん》

「どうしよ、じゃねえよ。なんでしっかり数えないんだよ」

《いちいちしないわよ、そんなこと。あんただって何も言わなかったじゃない。人のせいばっかりにしないでよ!》

「人のせいって、これ、お前の問題だろ」

《そもそも四十九日って言ったら、誰だって法事のことだと思うじゃない!!?》

「ふざけんなよ。地獄なんて行きたくねえぞ!」

《ぼくだって行きたくないわよ!》

《あの、事故って言ったわよね?》

 二人のしょーもない小競り合いにカレンが割って入った。

《そうよ、だったら何?》

《それって即死? 私も事故死だけど、三日間、昏睡状態だったわ》

《こんす……。一週間、集中治療室にいたわ》

「じゃあ、死んだのいつなんだよ?」

《六月十七日から一週間後だから……》

 イカルミが法事の案内状を取り出し、カレンダーと照らし合わせる。

「命日六月二十三日てことは……一、二、三……明日じゃんか!? ホントの四十九日は八月十一日、明日だ!」

《やったぁ―――!!!》

 今度は二人がはしゃぎ合う。


 ったく、なんだこいつ等は。

 突然やってきて、ケンカして、喜び合って。

 刑事達と同じ単なるはた迷惑な一行じゃねえか。

 カレンの成仏の役にも立ちそうもないし、とっとと帰ってもらおう。


 ―――しかし、小説なんだから事態は更に悪化する。


 その時。

 突然、事務所のドアが開いた。


「ちょっといい? 夏目いる?」

 すごい剣幕の女性がドアを開けて入ってきた。

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