4.午後1時13分(徳之進)
イカルミとの会話中に千春が割り込んできた。
前もそうだったがこいつ等の無神経な態度にはホント、イラッとさせられる。
「念のため訊くんですが、今も月島カレンはここにいるんですね?」
「いますよ、そこに。言ってんじゃないスか」
キッチンのほうに視線を向ける。
カレンが困惑した表情で立っている。こんな急展開、誰だって困惑する。
「彼女に先月二十日の夜、どこにいたのか訊いてもらえますか」
《だからやってないって言ってるじゃない》
「やってないって言ってますよ」
「みんな言うんですよ、とりあえずやってないって。だから我々が調べて裏を取るんです。先月の二十日、どこで何してたか訊いてください」
やれやれ。
何を言っても無駄そうだ。思わずため息が漏れる。
カレンも憮然としている。
犯人扱いされているのだ。そりゃそういう顔にもなるわな。
「先月二十日の夜。何してたって訊いてるけど?」
《はぁ……。覚えてるわけないでしょ、そんなの。手帳もないスマホもない、何も無いのよ? わかるわけないじゃない。逆に訊きたいわ。あんた達は先月二十日に何してたか答えられるわけ?》
「覚えてないって言ってます。逆に自分達は何してたのか答えられるのかって訊いてますけど?」
「ウチ等のことは関係ないんです。何とか思い出せないですかね。些細なことでもいいんですが」
《しつこいわね。テレビのようにはいかないわよ。そんなの覚えるほうがよっぽど怪しいじゃない。それこそ私が犯人ですって白状してるようなものじゃない。ったく。家でハイチュー食べてた、とでも言っといてよ》
「食べてたの?」
《冗談よ》
「じゃぁ、言わねえよ」
「何て言ってるんですか?」
「え? ……いや、何でもないスよ」
「何か言ってるんですよね? そのまま伝えてください」
千春が食らいついてくる。
「だから、関係ないんですよ」
「それを決めるのは我々です! あなたは伝えるだけでいい」
「聞くだけムダですよ」
「いいから! 彼女は、月島カレンは二十日の夜、何してたと言ってるんだ!!?」
「……ハイチュー」
「はい?」
「ハイチューを食べてたと言ってます!」
「……んなこと訊いてんじゃねえんだよ! ヌァメてんのか!!?」
金髪のデカい声にイカルミと一緒にいる女性が縮こまる。
《いちいち大きい声出すんじゃないわよ。こういう人、大っ嫌い。僕はバカですって言いふらしてるみたい》
「ケージ。静かにしろ。夏目さん、他には何か言ってませんか?」
「刑事さん達の悪口は言ってますよ」
「そういうのはいいです」
《ったく。ホント腹立つ。そもそもタツヤのことは調べたの? アイツが一番怪しいじゃない》
「タツヤのことは調べたのかって言ってますよ」
「タツヤ? 聞いたことない名前だ」
《そんなこともわからずに捜査してるの? だから日本の警察は無能だって言われるのよ? 元締めよ、元締め》
「元締めだそうです」
「元締め? フルネームは?」
《知らない。どうせタツヤも偽名でしょ》
「知らないそうです。タツヤって名前も偽名じゃないかって」
「そのタツヤにはどこに行けば会えるか、わかるか?」
《それも知らないわ。一度しか会った事ないし。連絡だっていつも向こうからしかこなかった。それにやり取りは基本、ケイコの役目》
「ケイコって?」
《殺された子よ。こないだの写真の子。私達は彼の指示を受けて動いていたに過ぎないわ》
なんでそんな怪しい事に手を出したんだよ。
葵の手紙を思い出すと、そのギャップに同じ人物とはとても思えない。
オレはカレンの言葉をそのまま刑事に伝えていった。
「ちなみに一度会ったのはどこで?」
《横浜。野毛の……『この街』って名前の古い喫茶店よ》




