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さぁ、ステキなご臨終の話をしよう  作者: カジセイ
第五章 八月十日

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3.午後1時6分(タダクニ)

「夏目さん。ちょっとお話よろしいですか」

 金髪のケージがドアを勝手に開けて中に入っていく。


 この金髪は丁寧な言葉遣いと行動がまったく合っていない。

 何がプロだ、安心して任せろだ。

 ど下手じゃないか。

 こんな不躾なヤツに「よろしいですか」と訊かれて、「いいですよ」とはならんだろ。

 こんなことだろうと思ったから、慎重にって念押ししたんじゃないか。このっ……バカチンが!


 部屋には一人の男性が戸惑いを隠せない表情で立っている。

 言わんこっちゃない。

 見ろよ、あの顔を。露骨に拒否ってんじゃねえか。


「夏目さん。突然、失礼します。先日の話、もう一度詳しく聞かせてくれませんか」

 ガミさんが改めて男性に話しかける。

 夏目さんと呼ばれた男性はブスッとしながらも中へ通してくれた。


「失礼します」

 タダクニと千明もそれに続く。

《ねぇ、ちょっと大丈夫? 最初っから躓いてない?》

 夏目さんの表情に、ヤナギさんも心配している。


「知ってることはこの前、全部話しましたけど。なんスか」

 苛立ちを隠そうとしない、いや、むしろ伝えるようなぶっきら棒な口調だ。

「ええ。ただもう少し詳しい話を聞きたいと思いまして」

 ガミさんも食い下がる。

「詳しい話って?」

「月下カレンについて。ここにいらっしゃるんでしょ」

「こないだは信じてないように見えましたけど?」

「いやぁ失礼しました。あまりの現実離れした話についていけなくて」

 ガミさんが両手を合わせて謝るポーズを取る。

「それが急に信じるようになったんですか?」

 ヤバい。超アウェー感いっぱいだ。


「実はこの二人に話を聞いて、考えが変わって」

「誰スか、この人達」

 夏目さんが鋭い視線をオレ達に向けてきた。

 こ、恐いわ。目つき悪過ぎだろ。

「こちらの二人も幽霊から除霊を依頼されてる、だそうだ」

「は? どゆこと?」

「夏目さんと同じ状況ってことなんだよ」

 ふんっと鼻で笑われた。感じ悪ぅ。


「で、オレにどうして欲しいんスか? 成仏の手助けなんてできないスよ。こっちが訊きたいくらいなんだから」

「手助けとかそんなんじゃありません。何かヒントが得られればと思ったんですけど」

 オレはガミさんと夏目さんの話に割って入った。

 これ以上二人だけに任せていたら、どんどん険悪なムードになっていく。

 なんとか場の空気を変えたい。

「ヒント……ねぇ。それもこっちが訊きたいですよ」

「夏目さんもまだ成仏させられてないんですね」

「見えないんですか? さっきからあそこにいるじゃないですか」

 夏目さんが指さすキッチンにはキレイな女性がゲージに入った猫にちょっかいを出している。


 彼女が幽霊?


「同じ状況ねえ。あの……」

「五十海です」

「いか……イカルミさん。珍しい名前ですね。まあ、それはいいや。イカルミさん達が成仏させたいのは、その柄シャツの人でしょ?」

「見えてるんですね?」

「見えますよ。そこでボケッと浮いてる人がいれば、誰だってそう思いますよ」

《ボケッとですって!!? 何様なのこの人》

「……おかま?」

「ホントだ。すごい。力貸してくれませんか」

「だから何もできないっつってんでしょうが」

《タダクニくん。感じ悪過ぎよ、こいつ。ぼく、こういう人嫌い》

 たしかにちょっと協力してくれそうもない。それなら違う方向から責めるか。


「あの……もう一人はどこにいるんですか?」

「もう一人?」

「夏目さんが見聞きする役ですよね。もう一人の憑りつかれてる張本人というか……」

「何言ってんスか?」

「いや、だから。見聞きする役と憑りつかれてる役の二人でセットでしょ?」

「意味わかんないスけど。オレ一人しかいないですよ」

「一人二役……なんだ」

「二役も三役もよくわかんないスけど、とにかくオレだけですよ」

「まあまあまあ、ちょっと。そっちの話は後にして、まずはウチらの話から進めていいかな」

 ガミさんが横から口を挟み、オレ達の会話は中断された。


 どういうこと?

 一人なんてことあるんだ。

 というか、そっちのほうがよっぽど普通っぽい。

 むしろオレ達が特殊なケースなのかもしれない。

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