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さぁ、ステキなご臨終の話をしよう  作者: カジセイ
第五章 八月十日

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1.午後1時(タダクニ)

「でもひどいですよ。なんで警察だって黙ってたんですか」

「いや、兄ちゃん達がヤクザと勘違いしてるっぽいからよ。面白くてさ」

 ガミさんが楽しそうに笑みを浮かべる。


 タダクニ達を乗せたクラウンは、都内に入ったところだった。

 つい十分程度前に、実は警察だとカミングアウトを受けたばかりだ。


「人が悪すぎですよ」

「ま、いいじゃねえか。今から同じ境遇のヤツに会わせてやるんだから」

「ホントにいるんですよね? それまで嘘だとか言ったらひどいですよ」

「大丈夫。そりゃ、本当だ。こっちもそれほど暇じゃないしな」

「なら、いいですけど。ちなみに、どんな人なんですか?」

「三十歳くらいの普通の青年だよ。結婚詐欺に遭ったのを除けば」

「結婚詐欺?」

「そう。やられたのは三百万くらいか」

 三百。けっこう痛いな。

 小太りでリュックを背負って休日は地下アイドルを追いかけてる、そんな姿が勝手に浮かんできた。

「モテなさそうですね」

「いや、見た目は普通だ。今は詐欺なんてそこかしこに蔓延してるから、いつ誰が被害に遭っても不思議じゃない。兄ちゃんも気をつけんだな」

 ガミさんがゲスい笑みを浮かべる。


 いっそオレも詐欺であって欲しい。

 今までのことは全部ウソでした、ドッキリでしたとなって欲しい。

 この刑事達もヤナギさんのことも。

 テッテレ~と『ドッキリ』と書かれたプラカードを持って誰か現れてくれないだろうか。


「さあ、そろそろ着くぞ。一応、守秘義務があるから、今の話は内緒な」

 ガミさんが付け加えた。


 着いた先は新大久保だった。

 ここまで車で三時間近くかかった。

 喫茶店には遅くとも夕方五時には入っていたい。逆算すると二時にはここを出ないとだ。

 腕時計は午後一時を指している。

 てことは、一時間でヤナギさん成仏のヒントをゲットしなければならない。

 けっこうタイトだ。タダクニは秒針を睨み、秘かに気合いを入れた。


 車を降りた一行は、古びた雑居ビルの二階へ上がる。

 そこの角の部屋の前で刑事達は立ち止まった。

 『夏目探偵事務所』と表札が出ている。


 ここにオレ達と同じような人がいるって言うのか?

 流れでついて来てしまった。

 ただほとんど手詰まり状態の今、ヤナギさんを成仏させるヒントに繋がるのもなら何でも欲しいのは事実だった。

 もちろん不安な気持ちもある。いや、不安な気持ちしかない。

 ガミさん達が信用できるかどうかと言えば、半々だ。

 警察だと言っているが、それだってホントかわからない。どう見たって見た目はヤクザなのだ。

 千明の表情も相変わらず暗いままだ。そりゃそうだ。

 今のオレ達は希望に満ち溢れてここへやって来たわけじゃない。

 半ば強制、残りはヤケクソでついてきたのだ。

 これからどうなってしまうのか、オレ達は不安でしかない。


《探偵事務所なんてドラマでしか見たことないけど、ワクワクするわね》

 違った。

 こいつだけは一人、胸を弾ませている。

 ったく。どういう神経してんだ。


《コナン君みたいな子が出てきたらどうする?》

 どうもしねえよ。

《ちょっと生意気だったらデコピンしちゃおうかしら》

 勝手にしてくれ。

 自分が成仏できるかどうかの瀬戸際だってのに、呑気なもんだ。なぜかこっちがイラッとしてくる。


「ここにいるんですか? その、オレ達と同じような人ってのが」

「先週、ここで同じような話を聞いたんだ。その時はちょっとネジが足りないヤツの戯言だって流したんだけど、兄ちゃん達の話を聞いて考え直した」

「あの。慎重にいってくださいよ。最後の頼みの綱なんですから」

「わかってるよ。こっちも話聞きたいんだ。へそ曲げられたら困るからな」

「オレ達はプロだぞ。安心して任せとけ」

 金髪がドアをノックした。

 お前が一番任せられないんだよ。タダクニは頭の中で金髪にツッコんだ。

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