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さぁ、ステキなご臨終の話をしよう  作者: カジセイ
第四章 カレンさん②

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1.カレンならここにいます、の話

 え、どういうこと?


 カレンに視線を向けたが、彼女は首を振っている。


「この人も詐欺集団なんですか?」

「ご存じですか?」

 ご存じも何も、ここにいるじゃねえか。

 でも、詐欺集団の主犯格ってどういうことよ?

 困惑を抑えられないオレの表情を見て、刑事が話を続けた。

「知ってるんですね。実は、グループ内でいざこざがあったようで、最初に見せた女性が一週間前に殺されました。で、こっちの女性は、その容疑者です」

 ますます混乱してきた。

 詐欺だけじゃなくて人殺し?

 殺したのはひき逃げ犯じゃなかったのか?

 カレンを見た。気のせいか、微かに頬が痙攣しているように見える。


「どうして彼女が容疑者なんですか?」

「どうして? と言うと?」

 しまった。

 これじゃ、知り合いですって言ってるようなもんだ。

「いや、深い意味はないですけど……」

 オレは口ごもった。

「詐欺集団なんて、お互いの利権だけで繋がっていますからね。ちょっと美味しい話があれば、裏切りなんては茶飯事でしょう。彼女が死体で見つかったのが、一週間前。こっちの女性はその少し前から姿を消してるんです。関係ないとは思えないでしょう」


 ちょっと待て。

 カレンがオレのところにやって来たのが十日前。

 一週間前なんて、既に死んでるんだから殺しようがないじゃないか。

 てことは、これは冤罪か。

 カレンは無実の罪を着せられようとしている。

 ただもう一つの『詐欺』のほうは?

 カレンは結婚詐欺師なのか?

 そこはクリアになってない。


「何か知ってるなら話してください」金髪が威圧的にふっかけてくる。

 いちいち勘に障る態度だ。協力する気も失せてくる。

「彼女はやってないと思いますよ」

「ほほう? その理由を聞かせてもらえますか?」

「……今から言うことを信じてもらえますか」

 金髪が面倒臭そうに頷いてくる。

 何でもいいから早くしろ、とでも言いたげに。


「彼女はここにいるんです。そして一週間前もオレとずっと一緒にいました」

「な!? どこにいる? 出せ!」

 金髪が事務所内を見渡す。


「ここですよ、ここ。彼女は、ここに幽霊として立っています」

 オレはカレンのいる空間を指さした。


「……幽霊?」

「そう。幽霊」

 オレは今までの経緯を簡単に説明した。

 十日前の夜中にカレンが枕元に現れたこと。

 成仏の手助けを頼まれていること。

 そして今は、探偵業(と言っても、ペット探しだけだが)を一緒にやっていて、カレンが作ったチラシ効果で繁盛していること。

 新規のお客さんがやってきたと思ってドアを開けたら二人で、今こうやって話をしていること。

 そんな浮世離れした話を、オレは大マジメな目をして話した。

 真剣に話せばきっと伝わると信じて。

 それにこれは小説。どんなにバカげた話でも、信じるか信じないかは作者次第なわけで。

 そういう意味では、ここは信じてもらいたい展開だから、いずれにしたって信じてもらえると決まってる。という裏事情を書いてしまうのは御法度なわけで、話を徳之進達のいる事務所に戻そう。


 金髪が眉間に皺を寄せ、千春は口をあんぐり開けてお互いの顔を見合っている。

 鳩が豆鉄砲を喰らった顔とは、まさにこれだろう。


 しばらく黙っていた二人だったが、

「テメえ、ふざけてんじゃねえぞ!! おちょくっとんのか!!?」

 金髪が堰を切ったように声を荒らげた。


 全然、信じてもらえてねえ!


 どうなってんだよ、さ・く・しゃ? 


「ケージ、落ち着け」

「いや、落ち着けるわけないっしょ? バカにしやがって、んノヤロー」


 そうでしょうとも。普通そうなるわな。

 容疑者のことオレ、知ってますよ。 え? なんで知ってるかって? だっているんだもん、ここに。え、見えない? そりゃぁ、死んじゃってるから見えませんよ。なんてったって幽霊ですから。からかってるのかって? いやいやいやいや、ホントにいるの、ここに。気配を感じません? 感じないって? うん。見えなくても感じなくてもいるの、ここに。さぁ、信じるか信じないかは……あなた次第。


 これで、素直に信じたら、逆に凄えわ。

 作者の筆力に委ねたオレが間違いだった。

 ていうか、金髪の名前『ケージ』って言うのか。

 思わぬところで判明したな。


「とにかく落ち着け! 詐欺に遭って、ちょっとここを……」


 千春が人差し指をこめかみの辺りにトントン当てる。

 それを受けて金髪も気の毒そうな表情を浮かべる。

 そういう展開?

 オレ、頭おかしい人になってんじゃん。

 ちょっと弁解させろよ。


「信じられない気持ちもわかります。ただ実はオレ、昔から霊感があって、幽霊とか見えるんですよ。だから今回も――」

「わかった、わかった」

 千春が視線を合わせず頷く。

 全然、わかってねえよ!


 その後も散々弁解を試みたが結局、憐れむ視線を残して刑事二人は足早に帰っていった。

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