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さぁ、ステキなご臨終の話をしよう  作者: カジセイ
第三章 ヤナギさん②

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9.クラウンの中で、の話(後半)

 女だってできる!

 映画でアンジェリーナ・ジョリーやミラ・ジョヴォヴィッチがやってるじゃないか。

 タダクニは隣で蒼い顔をしている千明の腕を見た。

 色白で、か細い腕だ。……やれるわけがない。


「あの。どこ向かってるんですか」

 タダクニは素直に訊いた。

「ん? まあ、そんなことよりちょっと話があるんだ」

「……話?」

「そう、話」


 やっぱり金か?

 いくらふっかけられる?

 十万? 五十万? まさか百はないだろう……。

 戸惑うタダクニを見ながら、ガミさんは怪しく口の端をあげた。

「兄ちゃん達さ、さっき幽霊がどうしたとか話してただろ。あれ、詳しく教えてくれよ」

「幽霊……?」

「そう。幽霊が何だとか、地獄がどうだとか話してただろ?」

「あ、あれですか。あれは、そういうんじゃなくて、何て言うか、その……ていうか、オカルト好き……なんですか」

「そんなんじゃねえよ。まさかだけどな、それ……」

 ガミさんは一瞬間を置いてから続けた。


「幽霊に成仏の手伝いを頼まれてるって話じゃねえか?」


 タダクニと千明は目を合わせた。

 予期せぬ発言に、ヤナギさんも狐につままれたような顔でこっちを向いている。

「え、どうして……」

「やっぱり。まさか本当だったのか、あの与太話」

 ガミさんが小さく呟く。あの話って?

「どういうことですか?」

「同じようなこと言ってるヤツを知ってんだよ」

「マジっすか!」

「ああ、マジだ」

「誰ですか? どこにいるんですか?」

 その人に会えれば何かヒントが見つかるかもしれない。ヤナギさんを成仏させるヒントが。

「落ち着けって。まずはこっちの質問だ。そいつは……その幽霊ってのは、まともに会話とかできんのか」

「会話ですか? ちゃんとできますよ」

「こっちが何言っても『うらめしや』とか『殺す』とか、ちっとも話にならない、とかじゃないんだな?」

「ええ。普通に話してますよ」

 おかま口調ですけど。

「そっか……」

 ガミさんは顎ヒゲを触りながら、思いふけるように遠くを見ている。

 そして、何か思いついたように、ニヤッとして言った。

「ケージ。夏目のとこへ行くぞ」

「ナツメ?」

「その同じこと言ってるヤツに会わせてやるよ」


 え、マジで?

 急展開!

 お金目的じゃないのか?

 緊張が少しだけ緩む。


「まあ、オレ等も用があるからな。気にするな」

 気にはします。

 なんで急に協力してくれることになったんだ。

 後からやっぱりお金とか言ってはこないよね?


「で、どんなヤツなんだ?」

「え?」

「だから、幽霊だよ。どんなヤツなんだ。いるのか、ここに」

 助手席のヤナギさんと目が合った。タダクニはヤナギさんの説明をした。

「おかまかよ! 死ぬ前から化け者だっつってな。ギャハハハハ」

《ちょっと何なの、この人。失礼じゃない。自分は海坊主みたいな顔してるくせに!》

「で、いつまでなんだ? その期限ってヤツは。成仏の期限」

「それが、今日なんです」

「今日?」

 ガミさんが甲高い声を出す。

「何やってんだ、お前ら。今日って、あと半日しかねえじゃねえか」

「はい……」

「それでさっき揉めてたのか。もう時間が無いって」

 半分正解。

 あと半分は……。タダクニは千明をチラッと見た。もっと面倒くさい事情だ。

「じゃあ、あんまりゆっくりしてられねえな。ケージ、急いでやれ」

 金髪が軽く頷くと、クラウンのスピードが上がった。


 さすがの高級車。

 音も静かで、揺れもない。

 なんて感心してる場合じゃないっての。ついてって大丈夫なのか?

 ただ、かと言って、今のオレ達に他に何かいい方法はあるのか?

 カントリーロードで来るかもわからない両親を待ち伏せする以外に何の策もない。

 それに、両親が来るとしてもきっと夕方だろう。

 タダクニは腕時計を見た。十一時を回ったところだ。まだ時間はある。

 そこにヒントがあるかわからないけど賭けてみる価値はある。あるが、何だろう。

 嫌な予感しかしない。


 本来、座り心地のいいはずのクラウンのシートが、妙に心地悪く感じた。

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