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さぁ、ステキなご臨終の話をしよう  作者: カジセイ
第二章 カレンさん①

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7.キャンペーンやりますか、の話

《あ~、面白かった》


 事務所に戻ってからも、カレンはずっと上機嫌だ。

《ライブは素人丸出しだったけどね。あれなら私のほうがよっぽどうまく踊れる自信ある》

 カレンが手をヒラヒラさせて、踊る仕草を見せる。


 徳之進が往復ビンタを喰らってから間もなく、メイド三人による歌とダンスのパフォーマンスが披露された。

 怒るほどじゃないが、たしかに、褒められたものじゃなかった。

 三人のダンスはズレていたし、いや、そもそも〝合わせる〟という意識があってのダンスなのか、と疑うほどに合っていなかった。

 歌もカラオケに毛すら生えないような代物で、カレンに自分のほうが上手いと言われても文句言えないパフォーマンスだった。

 ただ徳之進はミックス牛乳一気飲みのせいで、メイド達のライブ中もずっと気持ちが悪く、別の意味でも楽しめなかった。


《ねぇ、訊きたかったんだけど、どうして探偵やってるの?》

「やってるというか、形だけ家業を継いでるだけだよ。これでも明治時代から続く老舗で。一応、オレで四代目」

《探偵に老舗なんてあるんだ。旅館みたい。人知れずひっそりやってます、的なイメージなのに》

「ひっそりやってても食べていけねえだろ。親父の代までは警察とも繋がりがあって、色々派手だったみたいだけど。それこそ捜査を手伝ったり。ドラマみたいなことがあったらしい。今はもう、そういう時代じゃないから全然だけどな」

《それで猫探しと浮気調査なんだ》

「オレも今は無職だけど、前は定職に就いてたから。こっちは副業っていうか片手間なんだ。そもそもお客も少ないから仕事として成り立ってないし」

《ふうん……》

「納得いかないって顔だな」

《やり方がいけないんじゃないかな。『探偵事務所』なんてカッコつけてるから、みんな一歩引いちゃうんじゃない? 変えたらいいのに》

「変えるって、どう変えるのさ?」

《どうせ猫探しと浮気調査だけなんだから『何でも屋』とか『便利屋』のほうがしっくりこない?》

「百年続いてる屋号、そう簡単に変えられるもんじゃねえだろ。伝統と重みがあるし」

《無いわよ、重みなんて。『~何でもやります~便利屋本舗』とかのほうがよくない?》

 何だ『本舗』って。アカチャン本舗じゃねえんだよ。

 ったく。呆れてまともに話す気にならん。


《じゃあ、せめてキャンペーンでもやってみたら?》

「キャンペーン?」

《そう。私がいる間はペット探しは鉄板でしょ。だからペット探しのキャンペーンをやってみるとか》

「探偵事務所でキャンペーンなんて聞いたことないぜ」

《だからいいのよ。今の時代、何がヒットするかわからないんだから》

「ペット探しキャンペーン?」

《いいじゃない。成仏のお礼に協力してあげるわよ。それにこんなにカワイイ子がパートナーなんて最高でしょ?》

 カレンが小悪魔チックにウインクしてみせる。


 たしかに今は、ペット探しの依頼を受ければ、すぐに見つけられる確変状態だ。

 こんなことは二度とないだろう。


《そうと決まれば、まず、何から始める? ホームページとか無いの? この事務所》

 どんどん話を進めようとするカレンだったが、オレの顔を見て全てを悟り、

《ホームページなんて、今、誰だって簡単に作れるんだから作ればいいじゃない》

 残念そうに口をへの字に曲げた。

《じゃぁ、SNSで情報飛ばすしかないわね》

 ……。

《ウソでしょ!? それもやってないの? SNSもやらずにどうやって生きてるの?》

「うるせぇな。女優の深津絵里はな、携帯電話すら持ってないって言うじゃねぇか」

《深津絵里、関係ないでしょ、今。じゃぁ、仕方ないわね。アナログだけどチラシね。あとキャラクター作ったほうがいいわよ。ペット探しに合うようなカワイイキャラがいいわね》


 カレンの指示があれこれ飛び、それに合わせて動かされる徳之進。

 せわしなく振り回される中で、いつの間にかある種の活気のようなものを感じ始めていた。

 それは求職活動では当然感じ得ないし、プライベートでもしばらく忘れていた感覚だった。

 そして、それがけっこう居心地のいいものだった。

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