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さぁ、ステキなご臨終の話をしよう  作者: カジセイ
第二章 カレンさん①

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3.『死ぬまでにしたい十のこと』、の話(前半)

《成仏って言っても、そんなに大袈裟に捉えなくても大丈夫です》

「それは何、成仏できなくても別にいいってこと?」

《そんなわけないでしょ! 成仏は絶対にできないと困ります! 一体、何のために出てきたと思っているんですか!?》

「なんで急に怒んだよ。情緒不安定かよ? あ、そうか。それが原因で自殺したとか」

《違いますよ。自殺なんてしてません。……轢き殺されたんです》

「ひ、轢き殺された……?」

《交通事故、ひき逃げです》

 言い方。轢き殺された、じゃ殺人じゃねぇか。

「てことは、その犯人捜し?」

 いやいや、そりゃムチャだって。

 そんなの警察に任せるべきだろ。日本の警察、優秀なんだからすぐに犯人見つけてくれるっつうの。

 テレビの『警察24時』でも見事に犯人追い詰めてるじゃん。


《いえ、犯人のことはもういいんです。呪い殺したんで》


 なるほど。

 呪い殺したから、犯人捜さなくてもいいってわけだ。

 そりゃ、手間が省ける。よかった、よかった。

 ……て、なるかいボケ。


「……呪い?」

《そう! 呪い殺してきました》

 その口調はまるで「差し入れにプリン持ってきました」みたいなノリだ。

 なに、爽やかな顔して言ってんだ、こいつ。頭おかしいだろ。


 この能天気というか天然なノリ、どこかで見覚えがある。

 誰だっけ?

 胸の奥でザラついた感覚が一瞬湧いた。


《だから犯人捜しとか、そんな重々しいことじゃないんで、安心して下さい》


 いや待った。『呪い殺した』件、もっと詳しく説明しろよ。

 何、「だから」の一言で片づけてんだ。

 めちゃくちゃ気になってんだよ。


《私がお願いしたいのは、やり残したことをやり遂げたいんです》

 だから、どんどん行くなっつうの。

 オレまだ『呪い殺した』とこ、消化できてねえから。

《ちょっと前に『死ぬまでにしたい十のこと』って映画あったじゃないですか……》

 彼女は更に話を進めていくが、オレの耳には届いていなかった。


 こいつがどういう経緯で殺したのかはわからないが、動機さえあれば殺しちゃうわけだ。

 しかも感覚的には、比較的サラッと殺してる印象だ。

 殺したことについて何とも思ってないというか。

 ……この感覚、ヤバいだろ?

 オレが断ったり、成仏させられなかったら、今度はオレが殺されんじゃねぇの?

 逆恨みで。

 しかもたこ焼き買いに行く、みたいな軽いノリで。

 いや、死ぬのはいい。死のうとしてんだから。

 でも苦しまずに死にたい。

 呪い殺されるなんてまっぴらだ。彼女のさっきの爽やかな顔が脳裏にチラつく。


 あ――。

 思い出した。

 ケンちゃんだ。

 この能天気で天然なノリ。


 幼稚園から仲の良かったケンちゃん。

 頼んでもいないのに、いつもお昼に「購買からラスク持ってきたぜ」と、みんなに配っていた。

 ケンちゃんはあくまで「買ってくる」のではなく「持ってくる」のだ。で、先生に見つかっては一人怒られていた。

 バカだけど、底抜けに明るいケンちゃんはみんなの人気者だった。

 そんなケンちゃんとの別れは突然やってきた。

 中学二年のある日、一家で無理心中したのだ。

 両親がやっている食堂が潰れて数か月後のことだった。

 店が潰れたことが原因かはわからなかったが、厨房に居ついていたずらしていた幽霊について黙っていたことを、オレは猛烈に後悔した。

 そして今、そのことについてすっかり忘れていた自分に気がついて愕然とした。

 あんなに悔やんで自責したのに。


《……ねぇ、聞いてるの?》


「え?」

《やっぱり……》

 溜息をついて軽く睨まれた。


《人の成仏が懸かってるんだから、ボーッとしないでくださいね。どこまで聞いてました?》

「呪い殺したってところは聞いてた」

《そっから?》


 彼女は呆れたように大きく目を見開いて《ちゃんと聞いてなさいよね》と口を尖らせた。

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