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さぁ、ステキなご臨終の話をしよう  作者: カジセイ
第一章 ヤナギさん①

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7.ヤナギさん邸にて、の話(後半)

 ……サスペンスドラマの遺産分割会議でひと悶着起きるシーンにそのまま出てきそうな広間だ。

 そして、あれ? って思った。


「トオルは、もともとあんまり帰ってくる子じゃなかったから、いなくなっても同じようなものなんでしょうけど。でももう話もできないと思うと、やっぱり淋しいものよね」

「そうですよね」

「でもね。こうやってお友達がいらしてくれると嬉しいんですよ。何だかトオルも一緒に帰ってきたような気がして。変ですよね」

「いや、そんなことないですよ」


 今まではどうか知らないけど、今日に限っては本当に帰ってきてるんだから。

 ねぇ、ヤナギさん。

 あれ?

 ヤナギさんは……後ろか? 


 ……いない。


 仏壇?

 ……違う。


 天井、欄間、飾り棚……。


 まさか。


 床の間、襖、千明の周り……。


 やっぱり。


 いない――。


 あのヤロー、いねえ。


 どこへ行っちまったんだ、こんな時に。

 玄関までは一緒だったのは覚えてるんだけど、そのあとはどうだったっけ。

 何やってんだよ、あの人。

 久しぶりの帰省で、家の中うろうろしちゃってんのか……。

 ったく、しょうがねえな。呼んでくるか。

「あの。トイレ、お借りしてもいいですか」

「どうぞ。ご案内しますよ」

 トイレに行くすがら家の中を見回してみたが、どこにもいない。

 ホントにどこ行っちまったんだ、ヤナギさん。

 これ以上時間引き延ばすのは、正直キツいぞ、オレ。


 ヤナギ母と話すことなんて何もないもの。

 まいった、どうする?


 とりあえず、見つけないと……。


 考えろ。

 オレだったらどうする?

 実家に帰った時、いつも最初にどこへ行く?


 自分の部屋だ。


 何よりもそこが一番落ち着く。

 ヤナギさんもそうなのか。

「あの、ヤナギさんの部屋、見せてもらってもいいですか」

「トオルの部屋……ですか?」

「はい。ヤナギさんがどんな部屋で育ったのか、気になって」

 苦しい……。こんな恋人みたいな言い分、通るのか。

「ええ、まあ、構いませんけど」

 通った! 優しい人でよかった。

 和室に戻り千明を連れて、部屋のある二階へ上がった。

 しかし、そこにもヤナギさんはいなかった。


 成仏したってことか?


 成仏するなら、ひと言くらい何か言ってからでもいいじゃないか。

 それもなく消えちゃうなんて、勝手なヤツ……。




「今日は突然お邪魔しちゃって、すみませんでした」

「いいえ、とんでもないです。わざわざ遠くから、ありがとうございました。それと、これ……」

 そう言って、ヤナギ母は封筒を差しだした。御車料と書いてある。

 もらえません、そうおっしゃらずに、いやでもそんなつもりじゃ、ほんの気持ちですから、の押し問答を三十秒ほど繰り返して、結局、タダクニはそれを受け取った。

「なんか、かえって気をつかわせてしまって、すみませんでした」

「いいえ。こちらこそ大したお構いもできませんで……。気をつけて帰ってくださいね」

「ありがとうございます。失礼します」

 タダクニと千明は深くお辞儀をして、タクシーに乗り込んだ。

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― 新着の感想 ―
ん?ん?せっかくたどり着いたのに、ヤナギさんはどこにいっちゃったんでしょう? このまま…帰れないですよね〜^^;
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