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さぁ、ステキなご臨終の話をしよう  作者: カジセイ
第一章 ヤナギさん①

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7.ヤナギさん邸にて、の話(前半)

 宇都宮駅からはタクシーで移動した。

 ヤナギさんの指示のもと三十分ほど走って、何だかよくわからない住宅街で車を降ろされた。


 目の前は、古いが立派なお屋敷だった。

 旧家とか地主とか、そんな冠が似合いそう家だ。塀はその先が見えないほど左右に続いている。


 冗談だろ。

 こんな豪邸、ドラマじゃないんだから。


 タダクニは千明と顔を見合わせた。

 そんな二人を気にせず、ヤナギさんが屋敷の門へ進んでいく。

 タダクニは慌てて後を追った。千明もそれに続く。


 冗談でも何でもなく表札には『柳』の文字。

 タダクニは戸惑いながらも呼び鈴を押した。

 門に設置された防犯カメラがジーッとこちらに向いていて、緊張感をあおる。

 少しの間をおいてインターホンから、

「はい。どちら様ですか」

 優しそうな女性の声がした。


「あの。トオルさんの友人で五十海と言います」

「トオルの……」

「突然すみません。お線香を立てさせてもらえないでしょうか」

 一瞬の間があって、「どうぞ」という返事とカチャッと門の鍵が開く音がした。


 広い庭を抜けると、玄関先では品の良さそうな中年の女性が立っていた。

 母親だとヤナギさんが教えてくれた。

 どうやら彼女にはヤナギさんは見えていないようだ。

 タダクニと千明は簡単に自己紹介を済ませた。


 玄関を上がってヤナギ母について長い廊下を通る。

 古い造りのせいか歩くとミシミシ床が鳴る。

 案内されたのは突き当りの和室だった。襖を開けると線香の匂いがした。

 二十畳はありそうな広い部屋の奥に大きな仏壇と、ひと回り小さな仏壇が置いてある。

 横の鴨居には遺影がいくつか並んでいた。

 ヤナギさんの遺影は小さな仏壇の中央に置いてあった。


 遺影を見て、ヤナギさんが死んでいることを、タダクニは改めて実感した。

 千明は自分の守護霊の顔がわかって、何か思うところがあるのか、ふーん、と言いながら遺影を眺めている。


 線香をあげ終わるタイミングで、ヤナギ母がお茶を出してくれた。

「ありがとうございます。あの子、友達とかあんまり連れてこなかったら。びっくりしちゃった。今日は、どちらから?」

「東京です」

「それじゃあ、新幹線で?」

「ええ、まあ」

「それはわざわざ。トオルも喜んでいると思います」

「いえ。ヤナギさんには生前、お世話になったので」

「トオルが? 本当ですか、あの子がねぇ」

「え、ええ……まあ、色々と、なあ」

「う、うん」

 タダクニに求められて千明が相槌を返す。

 すごく気まずい。話すことが何もない。


 こういう時は、故人との思い出話のひとつでもするものなんだろうが、いかんせんヤナギさんと会ったのは昨日が初めてだ。

 ヤナギさんのことで知ってることなんかほとんどない。

 知っていることと言えば、おかまになったということくらいだ。

 それは今、オレから言っちゃまずいだろう。


 まいった……。タダクニは気まずさを紛らわすようにお茶をすすって辺りを見渡した。

 それにしてもホントに立派なお屋敷だ。

 窓から見える庭も広い。池が見える。確実に錦鯉が泳いでいるはずだ。

 部屋の造りも上品だ。

 欄間には見事な鳳凰の彫刻が施されている。

 飾り棚に置かれた壺も、おそらく高価な品だろう。

 サスペンスドラマの遺産分割会議でひと悶着起きるシーンにそのまま出てきそうな広間だ。


 そして、あれ?


 って思った。

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― 新着の感想 ―
ヤナギさんめちゃくちゃいいとこのおぼっちゃんやーん! そういうのもあって余計にカミングアウトできなかったんですかね…
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