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さぁ、ステキなご臨終の話をしよう  作者: カジセイ
第一章 ヤナギさん①

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5.ぼくが成仏できない理由、の話(後半)

……親の前で嘘つくのがどんどんしんどくなってきて、結局帰るのやめちゃったわ。だからぼく、大人になってから親とまともに話した記憶がほとんどないのよね……》


 タダクニは自分のことを思い返した。


 タダクニの実家は愛媛にある。

 お盆休みや年末年始、そういう大型連休には基本的に帰省するようにしている。

 ただ、帰ってすることは、地元の仲間と会うばかりで実家でゆっくりしている時間は少ない。

 そんなだから親と話す時間などほとんどない。

 そりゃもちろん、久しぶりに顔を合わせるんだから少しは言葉を交わす。

 仕事は順調なの、特に変わらないよ、身体の調子はどう、元気だよ、そっちこそもう歳なんだから無理すんなよ、くらいのやり取りはある。

 あるが、逆に言えばそれだけだ。およそ会話と呼べるほどのものじゃない。

 ましてやヤナギさんの言うような大人の会話なんて、ほとんど記憶にない。


「じゃあ、成仏できない理由っていうのは、その大人の会話……」

《うん、それもあるんだけど。それよりも、本当の自分のことを話せなかったっていうのが心残りなのよ。ぼくね、今度、自分の店を出すことが決まってたの。そしたら腹が据わったっていうのかな、ふっ切れたのよね。それまで親には後ろめたい気持ちがあったけど、今なら全てを話せるような気がするっていうか。とにかく、覚悟ができたのよ。親が理解しようがしまいが、どっちでもよかったわ。とりあえずカミングアウトしようって決めたの。胸に引っかかってる罪悪感を取っ払って、ここからがホントの意味でぼくの第二の人生のスタートなんだって。そう思ったわ》


「そしたら交通事故。死んじゃった……」


《なんであんたが言っちゃうのよ。ぼくに言わせなさいよ。でも、その通り。第二の人生の幕が開けたと思ったら、それは死後の世界でした、なんてあまりにもマヌケじゃない? 笑っちゃうわよね》


 笑えない。

 ヤナギさんは明るい口調だったが、言葉が見つからなかった。「人生、いつどこで何が起こるかわからないんだから」さっきのヤナギさんの言葉が頭の中をぐるぐる回っていた。


《だからね、ぼくを両親の所に連れてって欲しいの。全てを伝えるために》

「ていうか……自分で飛んでいけばいいじゃない。幽霊なんだし。そのほうがよっぽど早いでしょ」

《出た、その考え。それができたら頼んでないわよ。幽霊ってね、なってみてわかったけど、意外と無力よ。ほとんど何もできない。貞子みたいにテレビから這い出てくるなんて、できたら神よ、神。実際は移動すらロクにできない。ぼくは千明ちゃんに憑いてるから、この子と一緒じゃないと移動できないのよ。ね、だから協力してくれるでしょう》


 面倒くさっ。

 今会ったばかりの、どこの誰かもわからない人(幽霊だが)の頼みを聞いてあげる理由や義理はどこにもない。


「もし断わったら?」


《え、ダメなの?》

「いや、一応、訊いておこうと思って。断ったらどうなるの」

《そうね……》

 ヤナギさんが人差し指を唇に押し当てて、しばらく考える素振りを見せる。

 そして何か思いついたのか、ニコッと笑った。


《決めた。もし断ったら……》


「断ったら?」




《――呪うわよッ》


 き、汚えっ……。

 タダクニはベッドで眠る千明をチラッと見て、恐る恐る訊いた。


「どっちを?」


《もちろん二人に決まってるでしょ!》


 ヤナギさんはピシャリと言い放った。

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― 新着の感想 ―
まさかの千明ちゃんも巻き込むことになるなんて…w しかも千明ちゃんは見えてない状態w どんな旅になるんでしょうね〜(^^) あ、去年に愛媛県の道後温泉に旅行行きました♪ なかなか楽しかったです(*…
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