本を開いた日
物語において、あまり描かれることのない"原点"をテーマにしました。
「おかーたん!これよんでー!」
「ふふっ、ほんとに絵本がだいすきねぇ、いいわよ」
「わーい!」
「どれどれ…オホン、むかーしむかしあるところにふしぎなちからをもったあかんぼうがうまれました------」
「おぎゃあーおぎゃあー」
「産まれたぞぉ」
「身体に異常はないか⁉」
「無い成功だ!」
「なんて尊いのかしら…生まれてきてくれてありがとう…」
~七年後~
産まれてから、母と思わしき女性に抱かれていた時、どこか温もりだけじゃない心地悪さを感じたのを今でも覚えている、同じ日に生まれた兄妹がいたけど、誰に聞いても共感は得れなかった、本人(母)に直接聞かないのは、それ以来誰も母に会ったことがないからだ。
「気のせいじゃないの?大体そんな赤ん坊の頃の記憶あるわけないじゃん」
「誕生記憶ってやつらしいよ、生まれた瞬間のことを覚えてるって」
「頭いいもんなぁアーリは」
「記憶力が特別優れているからな、最近瞬間記憶能力も判明したって」
「知能テストじゃ敵わねーよな」
「でも、みんなの方が遥かに優秀だよ…僕は"それだけ"だ」
「何言ってるのアーリくん…確かに私たちは…"特別な力"をもってて…身体能力も優れてるけど…頭が良いのは…凄いことだよ…"それだけ"だなんて言わないで…」
「まーたこの子はフォローしてるのか煽ってるのか分からないことを…」
「でもよ、まだ7歳だぜ"それだけ"なんて言うには早すぎるぜ」
「もう7年かぁ、かあーちゃんどこに居んだろーなぁ」
「今年こそは迎えにきてくれるかな」
僕たちは今いるこの、"Sイーブン施設"というところで産まれて、母がすぐに行方をくらましてしまってから、そのままここで育った、7人もの子供を引き取って育ててくれた寛大すぎる施設だ。
引き取ることが決まった時に僕らには"・S・イーブン"の姓が付いた
そしてこの施設では毎日決まってすることがある…
「そろそろか」
「えーやだ、もうちょっと遊びたーい」
「だめだよ…アルマちゃん…もういかないと…」
「あんたはもうちょっと堂々としなさい、そんな感じなのに気は強いんだから」
「アーリも早く行こうぜ」
「あっうん!今行く」
決まってすることとは訓練である。
知能強化、身体強化、能力強化、この三つの訓練を決まった時間に決められた時間分こなす。僕たちのこれからを思っての訓練らしい、何があっても一人でも生きていけるようにと。
薬を摂取するところから始まる、脳や身体への負荷を軽減する薬だとドクターは言ってた。
まずは知能強化。
"ピーー"
合図が鳴ると一斉に問題用紙に取り掛かった、1時間が経つと
"ピーー"
再度合図が鳴り終了する
次に身体強化。
基礎的な身体作りだ、1時間みっちりと鍛え上げる
最後に能力訓練。
個々の得意を伸ばしていく訓練で、アマナが言っていた"特別な力"の開発、強化をしていく。
「アマナ、能力を使う時余計な事を考えちゃダメだよ、想像力がブレたら能力が安定しない…から……」
「…分かった…」
僕には"特別な力"は無かったが、自分の記憶の良さと鍛えた知能を活かしてみんなの"力"を見極め、分析、助言をしていた。
"特別"にはなれなかったが、みんなの訓練の役に立っている感覚は心地よくて好きだった
"本日の訓練はここまで、みんなお疲れさま。"
今日の全ての訓練が終わった
「あ”ぁ”終わったぁー」
「疲れたねぇー」
「早くかぁーちゃんに会って、この勇ましい姿を見てもらいたいぜ!」
「逆に可愛げなくて嫌われちゃうんじゃない?」
「ハハハハハ」
「さっ、ご飯食べに行こうぜ」
食堂に向かう途中コソコソとアルマが話しかけてきた。
「ねぇアーリあんた本好きでしょ…あたし見つけちゃったんだぁ、ついてきて!」
「えっ⁈ちょっとまってよー⁈」
「ホラここ」
「いやでもここって…入っちゃいけない場所でしょ…?ドクターに怒られるから戻ろう?」
「あんた今日誕生日でしょ、万が一バレたってそれでなんとかなる!」
自分が入ってみたくて、その口実の為に連れてこられたのかと思ったが、確認するには勇気がなく、口に出すのはやめた。
「わかったよ…」
「開けるわよ」
その空間には部屋一面に張り詰められた何かの資料と、天井まで伸びたカプセルに得体の知れない"何か"が入っていた。
この部屋から出なくてはならないと本能が悟った。
部屋から出ようとした瞬間、誰かが部屋に近づいてくる事に気づいた
咄嗟にアルマを抱いてカプセルの裏に隠れた。
入ってきたのはいつも優しくしてくれたドクターだった
誰かと話していたが、しばらくすると会話を辞め何か一作業してからドクターは部屋を出て行った。
「……ねぇ……アーリ……ドクターが今……作ってたのって…」
いつも強気なアルマが体を震わせていた
「………うん……あれは……いつも訓練前に飲む薬だ…」
失敗したと思った…もう少し気を遣えばよかった…
瞬間記憶能力を持つ僕にそれを言われたら確信を持たざるを得ない
だが僕は現状を理解することで頭がいっぱいだった
今確かにドクターはカプセルにいる"何か"の欠片で薬を作っていた。
「"オ”エ”ェ”ェ”ェ”"」
「大丈夫!?アルマ!?」
僕は吐き気を必死に堪えて、アルマを抱きしめた。
しばらくして落ち着いてから、僕は自分の服を使ってアルマのゲロを拭った。
「立てる?」
アルマは横に首を振った
「おぶうからおいで」
そっとアルマを乗せた時、心地悪さに似た違和感がせなかをなぞった
「(こんなに弱々しいアルマは初めてだ……元気を取り戻してくれるといいけど………)」
動けないアルマを担いで部屋を出ようとした時に、一枚の資料が目の前に落ちてきた、その資料には僕ら兄弟の詳細が載っていて、資料の名前にはこう書かれていた。
「0ver. Seven Project…………?」
まずはみつけくれてありがとうございます!
世に出すことなく、自分の中だけで留めておく世界だと思っていましたが、タイトルを見てもらえば察していただけると思いますが、一生に一度の今日という日に出さないわけにはいきませんでした!!
時間も7で揃えたかったのですが、訂正を繰り返しているうちにみるみる時間が過ぎていき…(言い訳)
そんなことは置いといて。
物語というのは誰かに書かれて生まれるものではない、見てくれる、読んでくれる人がいて初めて世に生まれるのだと私は思います。
改めて、読んでくれてありがとうございます!!