【肆拾肆】祭りの予感
__かき氷機をもらった次の日の朝。
神社の前の階段でお狐様はいつものように日課の掃除をしていた。今日の夏の風は少しだけ涼しく吹いている。
ふと掃除の手を休めながら
「もう少しで夏も終わりなのね…。」と
夏の終わりを感じながら、
ふわふわのしっぽも小さく下に弧を描いて。
掃除の続きを始めようと下その時に、階段のしたから
聞き馴染みのあるあの声が聞こえてくる。
今日は少し忙しそうに、何かに向かって話しかけていて
「はい。えぇ…そうです。少しでも町おこしにでもなればと思いまして。ぜひ、ご検討を…」
いつもの青年の声、待ちわびたその声に
夏の終わりの寂しさで下を向いたしっぽはすぐに上向きに向いていて
「あ、やっと来たわね?もう掃除始めてるわよ!」
階段の上から大きな声で青年に声をかける
「ではまた、ご連絡します。失礼します。」
「…ごめんごめん!今行くよ!」
青年は耳に当てていた何かをしまって、お狐様のいる境内へ駆け上がる。
上がってきた青年を見ながら、お狐様は不思議そうに聞いた
「ねぇ、さっきは何をしていたの?しまったそれは何?」
「あぁ、これか?スマホって言うんだ。離れていても声をかけらるんだよ。」
青年はポケットからスマホを取り出して、
お狐様に見せる。初めて見るのか、お狐様は目を輝かせながらじっとみて
「へぇ…これがすまほ?なのね。人間って凄いわね、
離れていても伝えられるなんて、念力みたい。」
「神様はできるのか?念力。」
「できないこともないけど、そんなに都合よくないのよ。私はそんなに力が強くないから…」
少し頭を傾けて、うーんと考える素振りをする
「まぁ…せいぜい、身体に触れながら伝えたり聞いたりするのが限界ね。見えない人には聞こえないし…それなら話した方が楽でしょ?」
「なるほどな。以外と不便なんだな。神様って」
「違うわよ。世の中が便利すぎるの。」
お狐様は少しツンとしてそっぽを向く
まぁまぁと、青年がなだめると
お狐様は少し不服そうに青年を見る
「で、誰と話をしていたの?」
お狐様は青年の方をじっと見つめる。
青年は眼差しに苦笑いをしながら口を開く
「実はな。神社で夏祭りをできないかって、町長さんに聞いてみたんだ。集まり次第になるけど、前向きに検討するって言ってくれたよ」
それを聞いた、お狐様の耳がぴんっと立って
興奮に尻尾は何度も廻る。
「そ、それ…ほんと?…本当ならたくさん人が来てくれるわよね?」
「そうだな。神社の事を知ってもらえるきっかけになるといいなって」
「まぁ…いい返事をもらえればだけど」
青年は後ろ髪に手を当てながら、苦笑いをする。
そんな青年を後目に、お狐様は浮かれた様子で
「きっとできるわ!あー胸のところが落ち着かない…久しぶりのお祭り…」
「おいおい、まだ決まったわけじゃ…」
「いいえ!ゆっくりなんてしてられないわよ!」
「ほら!倉庫から浴衣出すから、あなたも手伝って!」
「わっ!おい!」
お狐様はいたずらな笑顔を見せながら、青年の手を引いて走る
青年も振り回されながら、まんざらでもないような表情をして。
笑い声を響かせながら二人は境内を後にした




