【弐拾捌】工作
──数日は勢いを潜めていた雨が、再び降り始める日の昼頃。
「また、降ってきたな。」
青年がぼそっとつぶやいたとき、
お狐様はすでに床に正座し、何やら紙を折り始めていた。
「見てのとおり、今日も屋内ね。ということで……」
ぱん、と手を打ち鳴らす。
「今日は“雨の日工作大会”です!」
「工作?」
「そうよ。紙、糸、木の実、布──
いろんなものを使って、ふたりで“なにか”を作るの。」
「なにかってなんだよ。」
「それは、作ってからのお楽しみ。」
お狐様はにやりと笑って、
古びた葛籠から色とりどりの紙や鈴、布きれ、小さなガラス玉を取り出した。
青年は苦笑しながらも、彼女の横に座る。
「……小学校以来だな、こういうの。」
「わたしは毎年やってるわよ?神社の飾り付けは大事な仕事だから。」
「神様、手作業なんだな……」
「信仰がないと、力が足りないの。」
ふたりは、雨の音を楽しい音楽にしながら、
ていねいに紙を折り、糸を通し、鈴をくくりつけていく。
──そうして出来上がったのは、小さな風鈴の飾り棚だった。
布きれで作った台座に、数本の細い枝を立て、
そこに紙風船やガラス玉、鈴が下がっている。
風はないのに、どこかからふわりと、心地よい音が鳴る。
「……想像より、いいものができたな。」
「雨の日に飾ると、音が響くでしょ。
外は濡れてても、心に風が吹くように。」
青年はしばらく黙って、それを見つめていた。
そして、ふと言った。
「また雨が降っても、悪くないな。」
お狐様は、そっと微笑んだ。
「そうね。あなたがいるなら、どんな雨も、飾りにできるわ。」
雨脚はやや強くなったが、
神社の中には、やわらかく澄んだ鈴の音が響き続けていた。
まるで、ふたりの静かな想いを揺らすように。




