【弐】約束
「あぁ。よく見えるよ。」
オレンジの長く綺麗な髪に取ってつけたような狐の耳
時々ピクピクと動いてそれが本物だと一目でわかる。
「なんてこと…私が見える人間なんて何年ぶりかしら…」
本来は自分は見えないはずの高域の物。それが見えてしまっているのが驚きを隠せず一瞬の沈黙の後に
ハッとして
「わ、私は神様なのよ!すっごく偉いんだから!」
人間に舐められないように自分を大きく見せるような事を言う。胸を張りながら威厳を見せるように
「はぁ…本当かねぇ?」
ため息を紛らせながら半信半疑で彼女に話す。
狐の特徴を持った人間などいるはずが無い
本当の事なのだろうがどうにも現地味を得られずに
「い、いいわ。神の力を貴方にみせてあげる!」
一瞬ムッとした表情をみせ
青年に少し離れるように手で合図すると、鳥居に向かって右手を突き出す。彼女の手の平に少しずつ炎が集まる…が。すぐに消えてしまって
「えぇ!?そんな…嘘…」
力は現れることなく、その事実に彼女は少し下を向いてしまう。
「たまたま…今回はたまたまできなかっただけよ!」
そう呟いて口を「キュッ」と閉じてしまう。余程悔しいらしいく、そんな捨て台詞を吐いてみせて
「ふーん。たまたま…ね。」
「じゃあ、毎日来れば君の本当の”力"が見れるのか?」
青年は少し顔をニヤつかせて、試すように。いや少し茶化すかのように彼女に言った。
「当たり前じゃない!私は古くからこの里を見守るお狐様よ!人間なんかじゃできないことがたくさんできるんだからっ!」
狐の耳をぴんと立てて、むっと頬を膨らませる。
ムキになって自分が如何に凄いのか語ってみせた
「ははっ…それは面白い。なら約束だ。
君が"本物"の力が戻るまで俺は毎日参拝しにくるよ。…
そうだな、いなり寿司でも持って。…まぁ、俺はまだ信じてないけどな?」
ちょうど暇を持て余していたところだ。彼女がどんな事をできるのかにも興味がある。
「信じなくてもいいわ。でもね、一度約束したからには、ちゃんと毎日来なさい。…そのうち、私が"本物"だってイヤでもわかるんだから!」
毎日来る。そんな事が何故か嬉しくて照れくさく。
でも正直に認めるのはプライドが許さなくて…。
彼女はぴんと尻尾を立てた。
「そうか。」
それだけ答えて青年は神社の鳥居をくぐり、階段を下る。少しだけ口元をニヤつかせ、階段を軽やかに下っていく、その足取りは少し浮かれていて。
青年のそっけない返答に
彼女はしばらくその背中を見つめていた。
口をとがらせて「ふんっ」と鼻を鳴らしながらも
尾はほんの少しだけ揺れていて、どこか嬉しそうだ
まだ力は上手く使えないけれど、
「明日も来るんでしょ?」
と、ぽつりとつぶやき、階段を下りる青年を眺めながら、鳥居の下でそっとほほ笑んだ。