表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/43

【拾】狐火


__春もいよいよ終わりを迎え初夏の到来

を感じさせる、ある日の昼。


花は落ちて、木々は青々と葉をつけている。

お狐様は木の木陰に座り、”力”を扱う為に集中している。

青年もそれに付き合って隣で眺めていた。


「…見てなさい。今日こそ神様らしい所を見せてあげるわ。」


手の平に力を込める。

…手の平の中心が少しずつ熱くなってくるのを感じる。紅色の光が、すこしずつ、すこしずつ。


ゆっくりと集まって小さな狐火に…。


「おぉ…今日は調子いいな。」


「…当たり前じゃない。私はこの神社のお狐様よ?」


耳をぴんと立てて、青年にどうだ、とアピールする

しかし、気を抜いた瞬間に狐火は消え失せてしまう。


「あっ…うそ…」


明らかな失敗に、お狐様は、耳と尻尾をだらりと下げて、しゅんとした顔をする。


「…お狐様ねぇ。」


くすりとひとくちだけ笑うと、青年は振り返って、

賽銭箱に賽銭を投げ入れる。


二礼二拍手一礼。そして、お狐様の為に祈る。

お狐様のもとに、紅橙色の光が集まってきて

優しい狐火が生まれて、辺りをゆっくりと漂う。


「これって…」


「…君のペースでいいんじゃないか?

俺は…君の…君らしいところを、見たくなる。」


「そんな君が、一番”神様”らしい。」


お狐様は目を見開いて、耳をぴくりと動かす。

顔を赤らめ、視線をそらしながらも、尻尾はいつにもまして、すばやく何度も弧を描く。


「…ば、バカ…私は神様なんだから、当然よ。」



視線をゆっくりと、青年の方に向けたあと、

手の中に残る狐火を見つめて。火の光に触れると

暖かくて優しい気持ちになってくる。


「…ありがとう。」


「どういたしまして。」


「凄いでしょ、私。」


「少しだけ見直した。」


「ほんと、バカ。」


ふたりの楽しそうな笑い声が境内に響いて。

夏の匂いのする風が、そんなふたりの間を、そっと吹き抜けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ