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空色杯「五百文字未満の部」参加作品

春に感じた恋の味

作者: 野中 すず

 

 カチャリ……。

 

 開いていたドアが、春の風で優しく閉まる音。

 その音によって、雅晴(まさはる)が去っていく足音は途切れた。


 麻衣(まい)は一人、玄関前のフローリングに立ち尽くしている。

 小さなアパートの狭く薄暗い自室。淡いピンクの家具とぬいぐるみが詰め込まれている。


 数ヶ月ぶりに逢えたというのに雅晴は10分といなかった。


 雅晴が好きなビール、麻衣が好きな酎ハイを用意していたのに。

 連絡を貰ってから毎日楽しみにしてたのに。

 

 なぜ?



 雅晴に違和感を覚えた理由はそれだけではない。

 誠実な男性(ひと)だったのに、ひどい嘘ばかり言っていた。


 もう、俺につきまとわないでくれ。

 俺達は終わったんだ。

 奈緒(なお)に脅迫メールを送ったのも知っている。


 麻衣は再び思う。


 なぜ――?


「あっ……。そっか」

 一つの結論に至り、思わず声が出た。


 ちょっと私達、マンネリ気味だったもんね。

 何か刺激が欲しくなったの、雅晴? 

 私にやきもち焼いて欲しくなったの、雅晴?


「ゴメンね。気づけなくて」


 麻衣はゆっくりドアに向かう。


 ドアノブを見つめる。

 雅晴が握ったドアノブ。


 麻衣は腰を曲げ、顔を寄せる。


 麻衣は舌を伸ばし、ドアノブを舐め続ける。



 ――そんなワガママなとこも大好きよ。


 ピチャリ……。

 ピチャリ……。


 

 

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― 新着の感想 ―
恋の味……金属臭い恋の味ですね…… 一途なのは結構なことなのですが、ここまでくるとヤバいですね……野中さんのヤバい女だなあと思いました。 俺たちは終わったんだって言われてもわからないくらい想われること…
恋の味って……そ、そっち……?(´;ω;`) 奈緒ちゃんに脅迫メール送ってる時点で頭のどこかではわかっているのかな、いや単純に私の男にちょっかい出すなと思ってるんだな……。 一途を通り越すとこういう事…
油断して読んでたら最後が怖い! 思わず作品情報を確認しに……え?ホラーじゃない……??
2025/04/05 12:34 退会済み
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