0.プロローグ
(まずい、まずすぎるわ……!)
「あら、あのご令嬢一人ぼっちじゃない」
「惨めだな、どうするんだろう」
煌びやかなお城のダンスホール。夜の始まりにシャンデリアの灯りが映える。これから最初のワルツが始まるため、人々は色めき立っていた。
沢山の着飾ったカップルたちの中に、公爵令嬢アイスローズはたった一人で立っていた。明らかにこの場から浮いている。
アイスローズはシャンパンイエローのドレスとガーネットの宝飾品で着飾っており、それら全てが最新流行のデザインで、名門店で作られた一級品だ。ここが異国であっても、社交界の人間なら一眼見ただけで彼女がかなりの身分だということがわかるだろう。そのことが、パートナーのいないアイスローズがダンスホールの中心からつまみ出されない理由になっている。
とはいえ、周囲のヒソヒソ声が、彼女のメンタルを着実に削っていく。
(どうする? もう諦めてしょんぼり壁際に立っておく?)
アイスローズは自問自答する。
さすがに背中に一筋、汗が流れた。
(……いいえ。私は今までエドガーに助けられてきた。だから今度はエドガーを、エドガーの「あの人」を守らなければ。それができるのは、前世の記憶がある私しかいないのだから)
アイスローズはお腹の底から息を吸い、顔をホール正面へ向けた。バイオリンの音色から、ダンスが始まろうとしていた。
5/2、5/3 複数誤字報告いただき、ありがとうございます。助かります!