ありがちな桃の中
桃の中にいる、、、これはいったいどういうことなんだ??
いつもなら原因を探り、なぜ今の状況になっているのかを考えていただろう。でも今はそんな気力もない。どんぶらこと揺られるまま、ただその流れに身をまかせている。
なぜだろう、意外なほどに冷静だ。刺されて、おそらく死んで、今は桃の中で揺られている。そんな中で冷静だなんて、我ながら可笑しい。
まあでも、現実だって大概おかしいだろ。
生まれながらに不平等があり、気づいたら社会という大河に流されている。
同意した覚えなんて無いのに、、、、
そう人間の根底には不同意がある。誰が産んでくれと頼んだのか、誰の同意を得て存在を許しているのか。誰に聞けばいいんだろうか、聞いたところで狂人扱いされるのが関の山だろうけど。
そういう不満をぐっとこらえて生きていくのが大人だろうか?存在させられることの不同意は問うてはいけない問題なんだろうか?
俺の興味はそこだけだ。その一点が俺を生かしてきた。
ヒーローにはなりたかった、漠然と。ただそれは、宇宙に行きたいってみんなが思うようなレベルでの願望にすぎなかった。なんとなくそうなればいいなってだけで、心の底から思っているわけではないんだ。それで、したいこともないから、いつ死んでもよかった。ただ、根底にある不同意が俺を生かし続けた。
別に人類が滅べばいいとか、人間は地球にとって害悪だなんてことが言いたいんじゃない。これはどこまでいっても、俺自身の問題なんだ。
ただ現状の生き方を肯定できなかっただけかもしれない。怠惰で怠惰を覆い尽くすような生活が、自分では受け入れられなかっただけかもしれない。弱い自分がそのままでいることが恐ろしくて、それを生まれてくる時の不同意に全て押し付けて、自分の人生を生まれの問題という一点にしたかったのかな。そうすれば直視ができるんだ。突き詰めれば、弱さも人類普遍の問題になるでしょう?だってみんな不同意のまま生まれてくるんだから。
そうだ、きっとそうだ。これは俺だけの問題じゃない。人類の生まれを肯定できるかどうかっていう、人類を代表した、神みたいな問題なんだ。俺だけがその問題の重要性に気づいている。ああ、なんて俺はすごいんだ!!、本当に本当にみんな馬鹿で、どうしようもない奴らだ。こんなにも重要で大切な問題に気づいていないんだから。それでいてみんな大人ぶっている。さぞ社会の一員として相応しですよという顔をしながら、のうのうと生きてやがる。「いやいや、私はお金や人間関係でとても苦労しているんです」ってね、苦労してる風に生きるんだよ、みんな。俺はそういう連中の分まで、俺の問いを誠実に生きている。誰も気づいていないなら、俺がやるしかない。馬鹿どもへの愛が少しくらいあったっていいじゃないか、これは俺なりの優しさであり、愛なんだ。
こうやって誰よりも苦労してる風に装うのが、俺という人間だ。哀れだと感じるか?
でもしょうがないだろ、そうやってでしか俺は自分の不同意を乗り越えられないんだよ。そんな馬鹿なやり方でしか、生を肯定できないんだよ。
あいにく大層な頭は持ってないから、俺の問いにたいして理論的にも考えられない。さらに、大層な人生経験もないから、自分の生を肯定できるだけの、パーツがない。
ただ問い続けることでしか、生きていくことができない人間なんだ。
不平不満を漏らしているだけにすぎない、そんなことはわかっている。誰よりもわかっている人間がこの問題を抱えることのできる人間だ。
ああ、醜い。とことん醜い人間だ。
それでいて誠実だ。俺は真正面に受け止める。
自分に嘘を付いているなんてことも、わかってる。わかってると言ってしまうことの矛盾もね。全部知ってんだよ。知ってるという矛盾もね。
なーんて、思っても考えてもいないことを巡らしてみる。
桃の中は案外退屈だ。
自分が置かれた状況なんてほったらかして、どうでもいいことを考えている。どうでもいい濁流が頭からダダ漏れで、困ってしまう。考えとも言えないような産物だ。
どうしてしまったんだろうか、自分は、、
(どんぶらこどんぶらこ)
川のリズムでだんだんと眠くなってくる。一度寝てみよう。たぶん色々なことがいっぺんに起こって、頭がショートしているんだろう。
そういうところだけは冷静な自分に、またしても可笑しさを感じた。
続く