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【53】仰々しい技名だからといって強力だとは限らない

現在「第八部分」と「第九部分」に割り込み投稿したため、話数の総数がずれております。

あと数話ほど付け足すことになりますが、ルシア視点での心情描写がメインであり、ストーリーの本筋には影響ございません。すでに【52】までお読みいただいた方も、時間があれば覗いてみていただけると嬉しいですm(_ _)m


 ソウルを使い果たし朦朧としたシュリの前に、俺は【スピードステップ】で瞬時に移動した。


 そんな俺の前に、グレーターデーモンが放った攻撃魔法――氷の槍が高速で迫ってくる。


 すでに右手に持つ武器にソウルを込め終えていた俺は、迫り来る槍先へ合わせるように右手を振り抜いた。


 ――パキィイイインッ!!


 と。


 澄んだ音色を響かせて氷槍が粉々に砕かれる。


 いま俺がやったのは、チャージアタックによるパリィ。


 そしてパリィの成功率を上げるため、小回りの利かない槍ではなく、いつものククリ刀を装備していた。


 回避だけならともかく、やはりパリィを素早く連続で、かつ安定して成功させるには、双剣装備の方がやりやすいのだ。


「むッ!? ……ふぅむ、ただのギャラリーかと思っていたが、参戦するのかね? まあ、良かろう。しかし、そこの愚かなエルフにも劣る分際で私に挑むとは、よほど命が要らないと見える。自殺志願者なのかね?」


 氷槍を砕かれて一瞬驚いたグレーターデーモンだったが、すぐに平然とそう返した。


 奴がどのように俺たちの力量を測っているのかは分からないが、もしもレベルやステータス、キャラクターのレア度などを、何らかの方法で参照しているのなら、俺たち三人は束になってもシュリ一人に及ばない強さに見えていてもおかしくはない。


 それはある意味で正しい認識だ。ただし、


「ご心配どうもありがとうよ。だが、宣言してやるぜ。今からお前は、俺たちに手も足も出ずに殺られることになる」


 戦いはステータスだけでは決まらない。


「ほう、随分と大口を叩くものだ。しかし哀れだぞ? 口先だけの者というのは――む!?」


 奴が悠然と口上を述べ、こちらに見せつけるように新たな氷槍を生成し始める。


 だがその瞬間、横殴りの嵐のように、無数の光の剣が奴に襲いかかった。


 ルシアの【シャイニングソードレイン】だ。


 本来は範囲攻撃であり広範囲にばら蒔かれる光剣を、ルシアは任意操作してグレーターデーモン一体へと集束する。


 ゲームでは不可能だったスキルの応用ゆえに、その威力を正確に把握することはできないのだが、単純に敵一体に与えるダメージ量としては数倍に跳ね上がっているだろう。


 だが、そんな攻撃を受けても、グレーターデーモンは文字通り小揺るぎもしなかった。


「……今、何かしたかね?」


「……ッ!」


 遠間からスキルを放ったルシアが動揺するように顔をひきつらせる。


 だが、俺たちではろくなダメージを与えられないことは、最初から分かっていたことだ。


「ルシア、その調子でいけ!」


「――はい!」


 俺が声をかけるとルシアも作戦を思い出したのか、動揺を鎮めて油断なく剣を構える。


「ふむ……何やら作戦があるようだな。ならば……」


 奴はゆらりと両手を左右に広げると、その指の先から「爪」を生やした。


 もちろんただの爪ではない。


 影よりも濃い漆黒の、ソウルによって形作られた闇色の長く大きく鋭い爪だ。


「一人ずつ確実に仕留めてやろう。下らん時間稼ぎなどできぬよう……まずは貴様からだッ!!」


 瞬間、こちらを向いていたグレーターデーモンが踵を返す。


 向かったのはルシアの方だ。俺よりも若く華奢なルシアの方が御しやすいと判断したか。


 確かに接近戦ともなれば、今のルシアにグレーターデーモンの爪撃を回避し続けることはできないだろう。無論、パリィも同じことだ。


 だからルシアには、「遠くから牽制し続けろ」と指示していた。


 つまり、


「お前の相手は俺だ!」


「――むうッ!?」


 アクションスキル――【シャドウエッジ】


 奴がルシアへ距離を詰めるよりも先に、こちらから視線を逸らした奴の背後へ瞬時に移動する。


 そうしてそのままスキルによる一撃を延髄に叩き込んだ。


 相手がただの人間なら間違いなく致命の一撃だが、グレーターデーモンの漆黒の肌には傷一つ付かない。


「何だその攻撃はぁッ! 軽すぎるぞ!!」


 だが、攻撃されたグレーターデーモンは予想通りに移動を止めて、瞬時にこちらへ振り返る。


 振り向き様に五本の闇爪が空間を抉るようにヒュゴッと音を立てて振るわれた。


 当然、そのカウンターは予測しているから、俺はすでに背後へ跳び退いた後だ。


「良いだろう!! そんなに死にたいのなら、まずは貴様から殺してやる!!」


「お断りだ!」


 近づいて来るグレーターデーモンから、【スピードステップ】を発動してさらに距離を取る。


 そんな俺に追い縋るグレーターデーモンへ、再びルシアが無数の光剣を飛ばした。が――、


「無駄だと言っているだろうが!」


 もはや光剣が当たろうが気にする様子もなく、奴はこちらに距離を詰めてきた。


【スピードステップ】を発動すれば俺の方が遥かに速く動けるが、素の敏捷性ではグレーターデーモンの方が勝っている。加えて【スピードステップ】を発動し続ければこちらのソウルがすぐに枯渇してしまうのは目に見えていた。


 いつまでも逃げに徹しているわけにもいかない。


 ゆえに、俺は足を止めて奴と相対した。


「ズタズタに切り裂いてやる!」


 両の闇爪を、空間に残像が焼きつくような速さで何度も振るう。


 俺はその攻撃を背後へ回避し、ククリ刀でパリィしてからさらに回避。グレーターデーモン相手にカウンターアタックではノックバックを狙えないため、無理に反撃を狙わず奴の攻撃を回避することだけに専念する。


 ステップで回避しパリィして回避し、【シャドウエッジ】で奴の背後に回って攻撃を回避する。


「ふははははッ! どうしたどうしたぁッ!! 逃げるばかりか!? 貴様の攻撃は全然効いていないぞ!?」


「チィッ!!」


 ほとんどダメージが与えられないことに苛立っているわけではない。


(ソウルを回復する暇がねぇッ!!)


 パリィするにも【シャドウエッジ】で回避するにも、多くはないとはいえソウルを消費するのだ。回避の間に通常攻撃を挟めれば十分に回収できる消費量でしかないのだが、想像以上にグレーターデーモンの手数が多く、ソウルの回復が難しかった。


『歴戦のホブゴブリン』の時は、相手は長槍を使っていた。そのため近接で攻撃を回避してしまえば、十分に反撃する余裕があったのだが、両手の爪を素早く振るうグレーターデーモンには隙が少ない。


 それでもゲームであれば失敗を恐れず僅かな隙に斬り込むこともできた。


 だが、現実では奴の攻撃を一撃でもまともに食らえば、即死するかもしれないという事実が俺の足を鈍らせる。


 結果、ただ回避しているだけでソウルが減っていくことになる。


 このままソウルが枯渇すれば、回避が間に合わず奴の一撃を受けることになるのは確実だった。


「――いきますっ!!」


 だが、それは俺が一人で戦っている場合だ。


 叫んだのはリィーン。


 アクションスキルの中でも魔法スキルには、「詠唱時間」が必要となる。SSRキャラであればパッシブスキルの「詠唱破棄」を持っている者がほとんどだが、Rキャラであるリィーンにそれはない。


 そのため、リィーンがスキルを発動するまで時間が掛かってしまった。


 とはいえ、それは織り込み済みだ。


 リィーンの合図があった瞬間、俺は再び【スピードステップ】を発動して奴から大きく距離を取る。


 そこへリィーンの魔法が叩き込まれた。


 スペシャルスキル――【セイクリッドピュリフィケイション】


 神聖さを感じる白々とした光が、グレーターデーモンを中心に半球状の結界として展開される。


 同じく光で出来た無数の文字や幾何学模様が高速で結界表面を蠢いている様は、思わず畏怖を感じるほどに美しい光景だ。


 だが、その効果は仰々しい技名とエフェクトに反して、Rキャラの性能を超えるものではない。


【セイクリッドピュリフィケイション】――「効果:範囲内の敵に250%の聖属性ダメージを与える」


 聖属性が弱点となる魔物は限られており、多くのエネミーに対して、このスキルでは大きなダメージを与えることができない。


 また、聖属性が弱点となる魔族や悪魔、アンデッドなどに対しては倍の500%ダメージを与えることができるが、リィーンの元々の性能から、やはりグレーターデーモンに大ダメージを与えることはできないだろう。


「聖属性魔法か……! だが、この程度ならば……!!」


 事実、頭部を腕で庇うような防御姿勢を取ったグレーターデーモンは、浄化の光を耐え凌ぎ――、


「クフハハハッ!! もしや、今のが貴様らの奥の手だったのか? ……大して効かんがね?」


 ふらつくこともなく、ダメージなど無さげにしっかりと立っていた。


 事実、奴の「再生」を度外視しても、【セイクリッドピュリフィケイション】で倒し切るには、五回ほどは叩き込まないといけないはずだ。


「再生」を加味すれば、最速でスキルを連打しても八回以上は必要となるだろう。


 それほどにダメージソースとしては使えないスキル。


 ――だが。


 サービス開始初期、最初の二年間ほどは、ゲームでも序盤から中盤頃までは、Rキャラにも拘わらず、リィーンはとある理由から良く使われるキャラクターでもあったのだ。


【セイクリッドピュリフィケイション】に秘められた、もう一つの効果がその理由だ。


「効果:範囲内の敵に250%の聖属性ダメージを与える。敵が弱点属性の場合、スキル終了後に耐性脆弱を付与する」


 浄化の光が消え去った後、余裕を見せるグレーターデーモンへ、俺は【スピードステップ】で奴の背後へ移動し、怒涛の如くスキルを叩き込んだ。


 アクションスキル――【ポイズンエッジ】


 アクションスキル――【ファントムペイン】


 アクションスキル――【カースエッジ】


 全てのスキルが奴の耐性を貫いて、その効果を発揮した。



お読みくださりありがとうございます!

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