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【39】相応しい強さと更なるチート


 魔族が四体に対して、こちらも四人。


 数の上では同等だが、リンネの巫女であるリィーンは魔法使いキャラにして回復特化のスキル構成だ。今のレベルが幾つかは分からないが、少なくともSRキャラを倒すような強敵相手に、戦力として期待するべきではないだろう。


 となれば、四対三でこちらの分が少し悪いか。


「――来るぞっ!」


 冷静に彼我の戦力を分析していると、魔族の男たちが一斉に動き出し、エルフ少女が叫んだ。


「ルシア、防御に専念しろ!」


「はいっ!」


 咄嗟に俺は、ルシアにそう指示を出す。


 ゲームでは魔族と初めて遭遇した時、その魔族の強さはレベル30程度の主人公だけでもギリギリ勝てるくらいの強さだった。


 しかし、目の前の魔族たちは明らかにそれよりも強い。


 その理由は、何てことはない――これまでもそうだったように、ゲームと現実は違うということだろう。


 ゲームの魔族たちが弱かったのは、それがゲームだったからだ。序盤の主人公の弱さとつり合うように、弱く設定されていただけのこと。


 だが、この世界ではそうではない。魔族は魔族に相応しい強さを備えているらしい。


 魔族たちがそれぞれの武器を手に、凄まじい速さで間合いを詰めて斬りかかって来る。単純に高い身体能力から繰り出される強力かつ高速の連撃だ。ルシアはそれに対して反撃することは出来ず、俺に言われずとも防御に専念するしかない。


 淡い期待を抱いてエルフ少女をちらりと見れば、こちらも魔族一体で手一杯のようだ。強さ的には今のルシアとそうは変わらないくらいだろう。魔族の攻撃を武器で受け流しながら時折反撃に転じているが、実力が伯仲しているのか、どちらも決め手に掛けていて、ある意味膠着状態に陥っていた。


(まだ低レベルってことか!)


 如何に強いキャラクターと言えども、レベルが上がらなければ有用な各種スキルを覚えることはできないし、そうであれば本来の強さを発揮することもできないのだ。


 せめてエルフ少女のレベルが40もあれば、彼女一人で目の前の魔族四体くらいは簡単に倒すことができるはずなのだが。


(無いものねだりしても、仕方ねぇか!)


 ならば、この場は俺が何とかするしかないだろう。


「おらぁっ!」


 俺は目の前で相手をしていた一体の魔族に蹴りをぶちかまし、強引に距離を取った。


 魔族は当然のように防御しており、ダメージなど存在しない。


「ふっ、どうやら焦る必要もなかったようだな。お前たちが現れたところで、私たちには勝てんようだぞ?」


 対する魔族の男は余裕綽々の様子で、ニタリと笑って告げる。


 その理由というのも明白だ。俺が相手をしているのは魔族が一体。ならば残る一体の魔族はどこにいるのか?


 そいつは迂回するようにして背後のリィーンへ接近していた。


「くッ!? リィーン様、お逃げください!!」


 それを見たエルフ少女が焦燥に駆られて叫ぶが、三体の魔族によって釘付けにされた俺たちに為す術はない――わけではない。


 アクションスキル――【シャドウエッジ】


 本来ならば最も近くにいるエネミーの背後に自動的に高速移動して攻撃するスキルだが、この世界のスキルはゲームのように融通の利かない技術ではないと、すでに俺は知っていた。


 孤児院で狼藉を働いていたガッゾファミリーの下っ端ども相手に、スキルを途中で中断し、攻撃しないこともできたのだ。


 ならば、スキルを発動した後に高速移動する方向も場所も、それどころか動きさえ、自分の自由にできるはずではないか。


 スキルを発動するように念じてソウルを全身に巡らせる。強化された身体能力で、消えるような高速移動を実現する。


 スキルとは違う動きも実現できそうだが、しかし今回は、その必要はない。


 リィーンに接近していた魔族の背後に一瞬にして移動し、右のククリ刀を薙ぎ払うように振るった。


「ッ!?」


 しかし、敵もさる者。


 背後に出現した俺に気づき、前方宙返りするように跳躍して回避した。


 そして着地と同時にこちらに振り返る。


 だが、その間に、俺は魔族を倒すための準備を終えていた。


 ククリ刀を手放してアイテム袋の中から一本の長槍を抜き出す。


【歴戦のホブゴブリン】から盗んだ、SSRランクの武器「牙骨槍ビーストスピア」だ。


 おそらく俺の攻撃力では、目の前の魔族たちに一撃で致命的なダメージを与えることは不可能だろう。そして魔族を倒すために何度も攻撃をしていたら、先ほど俺が相手をしていた魔族がこちらに来て、俺は前後から挟み撃ちにされてしまう。


 だが、この槍を装備していれば話は別だ。ゲームと同じ理が適用されるのであれば、単純計算にして、俺の攻撃力は数倍にも跳ね上がっているはずなのだから。


「なにを……!?」


 魔族の男は俺の武器が変わっていることに僅かに戸惑い、声をあげようとした。


 しかし、その言葉は途中で中断される。


 槍を構えた俺の姿が、目の前から消えたからだ。


 俺は一瞬にして魔族の背後へ再び移動していた。


 当然ながら【シャドウエッジ】による高速移動だ。だが、ソルオバの世界におけるスキルというのは、キャラクターが装備する武器によって左右される。ゲームではそもそも他人のスキルを使うことはできなかったが、幾つかの別スキンを持つキャラクターでも、たとえば槍を装備している時に使えるスキルを、弓を装備している時に使うことはできない。


 しかし、この世界におけるアクションスキルは、モーションとエフェクトが固定されているわけではないのだ。スキルという名称の通り、それはキャラクターが鍛練の末に身につけたり閃いたりした技術に過ぎない。


 ならば【シャドウエッジ】の高速移動だけを切り離し、それだけを独立して扱うこともできるのではないか? 他の武器を持っていても、特定の武器を必要としない、たとえば純粋なバフスキルのようなものならば、どんな武器を装備していても使うことができるのではないか?


 ――その通りだった。


【シャドウエッジ】から高速移動の効果だけを抜き出したアクションスキル。


【シャドウエッジ】であって【シャドウエッジ】ではない、名付けるならば【スピードステップ】とでも言うべきか。


 オリジナルスキル――【スピードステップ】


「無駄だッ!」


 高速移動によって魔族の背後を取る。


 だが、魔族はこちらの動きに瞬時に反応し、背後を振り向きざま、右手に握る長剣を横薙ぎに振るった。


「!?」


 しかし、俺が装備しているのは長槍だ。剣の間合いまで近づいてはいない。


 そのために空振りし、隙の生じた魔族へ向かって槍を突き出す。


 アクションスキル――【オーラスラスト】


 槍の先に生じた巨大なオーラの穂先が、ドリルのように回転しながら魔族の胴体を捉えた。


【歴戦のホブゴブリン】相手には火力不足でしかなかったこのスキルだが、如何に魔族とはいえ、直撃して耐えられるものではなかったようだ。


「ぐごぼぁああッ!?」


 オーラの穂先が爆発したように破壊の力を撒き散らす。魔族の上半身は下半身と泣き別れとなり、くるくると宙を舞った。



お読みいただきありがとうございます!

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