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【38】魔族

大変お待たせいたしましたm(_ _)m

原因は不明なのですが、なぜか全身に蕁麻疹が発生して、しばらくダウンしていました。

四日くらいで蕁麻疹は治まったのですが、一度時間が空くとなぜか筆の進みが遅くて苦戦しておりました、すみません。

ぼちぼち更新再開していきます。


 大広間を出て先へ進むと、すぐに剣撃の連なる音が響いてきた。


 金属が打ち合う音、荒々しく走り回る足音、気合いと怒号の入り交じった叫び声――戦いの音だ。


「ヴァンさん!」


「ああ、この先だ!」


 廊下の角を曲がって走り抜け、五階層の守護者が待つ最奥の間の前へと辿り着く。


 悪魔の軍勢が彫刻された巨大な扉がある場所は広場のように開けた空間になっている。その場所で、今も戦闘を繰り広げているのは六人。


 その内、二人は少女だ。


 一人は長い銀髪を靡かせた水色の瞳をした少女。


 もう一人は黒髪をポニーテールにしたエルフの少女。


 そんな少女たちに対するは、黒いフード付きのローブを身に纏い、フードの下に顔を隠した如何にも怪しげな風体の者たちが四人だ。


 立って戦闘を繰り広げているのは彼ら六人だが、その周囲には黒ローブと冒険者らしき者たち含めて、五人ほどが床に倒れ伏している。


 流れ出ている血の量から察するに、おそらくはもう死んでいるだろう。


「ルシア、加勢するぞ! 黒いローブたちを殺る!」


「はい!」


 目の前の光景を見るなり、すぐにそう決意した俺の言葉に、ルシアも躊躇いなく頷いた。


 普通ならば、どちらに加勢するかなど、すぐに判断できるものではない。一見すれば華奢な少女たちを囲む黒ローブたちが悪者と思えてしまうが、確実にそうだという保証などありはしないからだ。俺たちは彼女たちの事情など何も知らないのだから。


 しかし、俺はあの銀髪の少女が『ソウル・オーバーライト』におけるヒロイン、リンネの巫女リィーンだと知っている。


 であるならば、リンネの巫女に敵対する黒ローブたちの正体も、自ずと知れようというものだ。


 だが、俺と違って判断するための一切の知識がないルシアも、黒ローブたちを敵にすることに疑問すら抱いていないようだった。


 その理由は、実に単純だろう。


 少女たちを囲む黒ローブたちの姿を、かつて義父を殺した者たちと重ねているのだ。


 そしてそれは正しく、義父を殺した者たちのとの関連をルシアはすぐに知ることになる。


「ぁああああああ――ッ!!」


「ッ!?」


 後先を考えないような、愚直な突進。


 突然の闖入者であるルシアの姿に、黒ローブたちは驚愕のためか動揺の気配を発する。


 その隙を上手く突く結果になった。


 アクションスキル――【ブレイブインパクト】


 横薙ぎに振るわれた剣から光の刃が飛翔して、黒ローブたちを弾き飛ばす。


 とはいえ、黒ローブたちは咄嗟に防御体勢を取り、かつ自分から後方へ跳躍したため、ダメージはほとんどないだろう。


 それでも無理矢理に距離を取らせた隙に、俺たちは二人の少女たちの傍へ滑り込み、守るように黒ローブたちと相対した。


「貴殿らは……?」


 油断なく反りのある片刃の剣――この世界では大剣分類である刀を構えたエルフ少女が、訝しげに問いかける。


 ルシアのことを知っているのか、それとも偶然の出会いなのか、俺はちらりと銀髪の少女――リィーンへ視線を向けた。


 するとリィーンは何もかも承知したような微笑みを浮かべながら、


「お待ちしていました」


 と告げる。


 どうやら、巫女様は俺たちがここに来ることを「知って」いたらしい。


「リィーン様、では、この者たちが……!?」


 巫女の言葉にエルフ少女が驚き、こちらを見る。


 だが、今は悠長に自己紹介などをしている場面ではなさそうだ。


「話は後だ。とりあえず今は、あいつらを殺る。異存は?」


「――ないッ! 助太刀感謝する!」


 表情を引き締めて頷きながら、エルフ少女は一歩前に出た。


「何者だ、貴様らは?」

「リンネの巫女の犬どもか?」

「邪魔立てしおって」

「誰でも良い。どうせ巫女以外はいらんのだ。全員殺すぞ」


 対する黒ローブたちは俺たちへ警戒したような視線を向けつつ、口々に疑問と文句を発する。


 その姿を見て。


「あい、つらは……ッ!?」


「嘘でしょ……!?」


 ルシアとベルが大きく目を見開いた。


 ルシアの【ブレイブインパクト】によって、黒ローブたちが深く被っていたフードは脱げていた。そのフードの下から現れた奴らの姿を見て、ルシアたちは動揺と驚愕により声をあげたのだ。


「気を抜くな。見ての通り奴らは普通の人間ではない」


「あれを見て油断するほど馬鹿じゃないぜ」


 エルフ少女の忠告に当然とばかりに頷き返す。


 黒ローブたちは顔立ちこそ凡庸な男たちであったが、明らかに異常な点が二つだけあったのだ。


 まず一つ。


 奴らの眼球だ。普通は白目の部分が漆黒に染まり、瞳の部分が自ら発光しているかのように怪しげな赤色をしている。


 そして二つ目。


 前髪の生え際辺りから、左右一本ずつ、計二本の角が生えていたのだ。


 どうふざけて見ても安っぽい仮装には見えない。明らかに本物の眼球だし、本物の角だろう。ソルオバはエルフや獣人など、多種多様な種族が混在する世界観ではあるが、奴らのような特徴を備えた人種はいない。


 いや、正確には、人類の枠組みから外れた種族だ。


「魔族か」


「ほう、我らのことを知っているのか?」

「ということは、やはりリンネの巫女の犬だったか」

「知っているならば、なおさら生かして返すわけにはいかんな」

「どちらにせよ殺すのだ。問題はない」


 俺の言葉に黒ローブ――魔族たちが反応する。


 しかし俺は、こちらを挑発しているとも思えるその言葉を無視し、ルシアに声をかけた。


「親父さんを殺した奴らに似てるか?」


「はい……同じです……ッ!!」


 激しい怒りを隠そうともせずに、ルシアが言う。


 黒いローブというだけではなく、ルシアの義父を殺した連中もまた、魔族だったのだろう。そしてルシアは、奴らの禍々しい姿を目撃していたのだ。


 だからこそ、目の前の連中と義父を殺した連中に関連があると悟り、激しい怒りを燃え上がらせているのだ。


 だが、今にも飛び出しそうなルシアを制するため、俺は強い口調で窘めた。


「ルシア、一人で飛び出すなよ。冷静になれ。――じゃないと、死ぬぞ」


「ッ! ……はい、すみません」


 僅かに冷静さを取り戻したルシアが頷く。


 俺の言った言葉は嘘でも方便でもない。本来なら――ゲームでのヒロインとの邂逅イベントは、今のルシアならば一人でも蹴散らせる程度の敵しか出て来ない。しかもその相手というのは目の前の男たちと同じ魔族だ。


 だが――。


(……ザックにベイル……それからララか……)


 俺はちらりと周囲に倒れ、事切れている冒険者たちの顔を確認した。


 それはどの顔も知っている顔――すなわちソルオバにおけるガチャキャラたちだった。しかもザックとベイルはRキャラだが、ララ・イーストウッドはSRキャラだ。


 本来のイベントで相手をする初めての魔族は、SRキャラならたとえ1レベルでも負けるはずがない程度の強さであるはずだった。


 だが、そんなキャラクターが逆に屍を晒しているという現実。


 つまり目の前の魔族たちは、ゲームで初めて戦う魔族よりも間違いなく強い、ということだ。



お読みいただきありがとうございます!

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