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【33】独立都市パンデモニウム


 ソルオバの舞台となる大陸において、主な国は三つある。


 一つはゲーム開始時にいる大陸西側の大国ミッドガルド王国。


 王国とは反対に大陸東側に広がる、商売人の多い国であるサンディライト共和国。


 そして大陸の北側に広大な版図を持つアルペディア帝国だ。


 この三つの国々は三大国と呼ばれ、それぞれが国境を接している。


 だが、中には緩衝地帯とでも言うべき、特殊な都市があった。


 三大国の国境が交わる中心地点に、その都市はある。


 世界でも有数の巨大迷宮『万魔殿』を擁する迷宮都市――パンデモニウムだ。


 パンデモニウムは遥か昔からその領有権を巡って三大国が争っていた経緯がある。理由は『万魔殿』そのもので、この迷宮は大陸でも最大の魔石産出量を誇るからだ。


 どの国も是が非でも欲しい土地である。それゆえに領有権を巡る争いは激化し、三大国の間で100年戦争と呼ばれる超長期の戦争が勃発した。


 だが、一国が『万魔殿』を占領すれば他二国が手を組んで取り戻し、取り戻した二国がまた争い、その隙を突いて奪われた国が進軍し――といった有り様で、結局は一進一退を繰り返しながら、どこも安定した統治下に置くことができなかった。


 いたずらに国力を消耗する戦争に終止符が打たれたのは、戦争の結果ではなく、三国による妥協の産物だった。


『万魔殿』を擁する迷宮都市パンデモニウムを、三国のいずれにも属さない独立都市とし、この都市に対する不可侵条約を結ぶことで合意したのである。


 対するパンデモニウムは迷宮から産出される魔石を三国へ優先的に売却することで、独立を許されることになった。


 そんなわけで、この特殊な成り立ちの都市には国家の枠組みに属さない冒険者ギルドの総本部を始め、様々な組織が本部を置いている。


 で、俺やルシアたちが向かっているのも、このパンデモニウムだった。


『万魔殿』に発生する魔物は例外なく魔石をドロップするが、一定階層ごとに出現する守護者と呼ばれるボスモンスターは、「虹魔石」というアイテムをドロップする。


 この虹魔石は使用することでレベル限界を四回まで突破してくれるアイテムであり、一回で5レベル分のレベルキャップ解放となる。


 なので、Rランクキャラであれば80レベル。


 SRキャラは90レベル。


 SSRキャラであれば100レベルまで限界突破することが可能となるのだ。


 60レベルでカンストに達してしまっている今の俺たちに必要なのが、この虹魔石なのである。ゆえに俺たちは徒歩にて一ヶ月は掛かるという長い道のりを、王都からパンデモニウムまで行かねばならなかった。


 そして出発から早一週間が経過した頃、俺たちは小山の上から巨大な円形都市を見下ろしていた。


 王都ミッドガルドにも負けない規模の、途轍もなく巨大な都市だ。


「あれが……パンデモニウム、なんですか?」


「でっかいわね~!」


 ルシアとベルが感嘆して言うのに、俺は頷いた。


「そうだ。あれがパンデモニウムだ。……思ったより早く着いたな」


「ボクもちょっと信じられません。一ヶ月は掛かるって話だったので」


 ルシアと顔を見合わせて互いに苦笑する。


 眼下にパンデモニウムが広がっていることから分かるように、本来ならば一ヶ月は掛かる道のりを、俺たちは一週間で踏破していたのだ。


 我がことながら、信じられないくらいの移動速度である。馬車で移動するよりも遥かに早い。その理由というのが――、


「ずっと走ってたもんね」


 と、ベルが言う通りなのだ。


 俺たちはレベルが上がって上昇した身体能力に任せて、昼間はずっと街道を走り通しだったのだ。普通ならばそう何時間も走れはしないのだが、体力の消耗はそれほどでもなく、途中で休むこともほとんどなかった。


 加えて走る速さも人外染みていたのが、ここまで時間を短縮できた理由だろう。


 ともかく、三週間も時間を短縮できたのは望外の幸運だった、というべきか。


 移動時間が延びるよりは、短くなるに越したことはないのだから。


 だがまあ、それにしてもゲームなら最初以外はワールドマップから一瞬で移動できるのだが、それは言ったところで仕方ないか。ゲームのようなワープ機能など、この現実の世界にはないのだし。


「まあ、とりあえずさっさと中に入っちまおう。それから宿を探して、今日はもう一日休もうぜ」


「そうですね」


「さすがに疲れたもんね」


 体力的に、というよりは、強行軍染みた移動で精神的な疲労も溜まっている。柔らかいベッドで眠る誘惑には抗えないのか、ルシアたちも強く同意して足早に歩き出した。



お読みいただきありがとうございます!

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