【28】ランク昇格とパーティー登録
「…………」
「あら? 冒険者カード? 依頼票がないって事は、依頼完了手続きかしら?」
ルシアには口を開くなと言われてしまったが、昨日請けていた依頼の完了手続きはしないといけない。
俺は黙ってミランダに冒険者カードを差し出した。
「……」
「……黙ってないで、何か言ってくれないかしら?」
「……」
チラリ、とルシアを見る。
ルシアはため息を吐いて仕方なさそうに言った。
「……ヴァンさん、喋って良いですよ」
どうやら許可も出たようなので、ミランダに詳細を告げる。
「ああ。昨日請けた照明石十個の納品依頼の完了手続きを頼む。それと、俺とルシアのパーティー登録と、俺の討伐履歴を確認してくれ」
続けてアイテム袋から照明石を取り出し、カウンターの上に置いた。
ミランダはそれらを手早く確認していく。
「了解。照明石十個……全て本物ね。依頼の完了手続きはこれでオーケーよ。報酬を持って来るわね」
「いや、最初に討伐履歴を確認してくれないか? 二度手間になるからな」
依頼の報酬を持って来ようと席を立ったミランダを引き留める。彼女は素直に再度着席しながらも、事情を問うようにこちらを見返してきた。
「討伐履歴って、何か倒したの?」
「いや、さっき言ったろ? 【歴戦のホブゴブリン】を倒したって」
【歴戦のホブゴブリン】を初めとして世界中に存在するワンダリング・エネミーたちには、その被害の規模に応じて高額の賞金が掛けられているのだ。ゆえに、冒険者カードを提示して討伐したことを証明すれば、その賞金を受け取ることができるのである。
――っていうか、ミランダはいったい何を聞いていたのか。さっき【歴戦のホブゴブリン】を倒したってちゃんと説明したはずなんだが?
ミランダは最初「?」と首を傾げ、徐々に言葉が脳に浸透したのだろう。驚愕するように両目を見開くと、
「えええええ!? あれって本当だったの!? 冗談じゃなく!?」
ギルド中に響き渡るような大声で叫んだ。
「何でだよ。冗談なんか一言も喋ってなかっただろ」
俺はずっと真面目に会話してたんだけど?
「ヴァンさん……」
だからなぜルシアが胡乱な目つきで見てくるのか、さっぱり分からないんだ。
一方ミランダは、ロビーにごった返す冒険者たちから注目を集めてしまったことに気まずそうに笑うと、
「お、おほほ、お騒がせしました……何でもないのよ」
周囲にそう告げてから、慌てて俺の冒険者カードを機材に通す。
「ほ、本当に倒したのね……!」
今度は幾分小さな声で驚愕を露にした。
「だから何回もそう言ったじゃねぇか」
「今まで誰も倒せなかった賞金首よ? 倒したって言われてそう簡単に信じられるもんですか」
「まあ、でも、確認は取れただろ? さっきの依頼報酬と一緒に賞金もくれ」
冒険者カードに記録される討伐履歴は非常に信憑性が高いものだ。普通ならば疑われることさえない。なので明らかにランク不相応な強敵を倒したとしても、それが本当かどうかなど、討伐履歴を見せれば一発で証明できるし、面倒な事実確認などもないのだ。
本当にお前が倒したのかと、ギルド長直々にお出ましになる展開もないのは、少しばかり残念ではあるが。
突然ギルドに現れた信じられない実力を持つルーキーに、あいつはいったい何者なんだと戦慄され、同時に疑惑の目を向けられる……そんな展開も俺は好きなのだが。
ここら辺、この世界だと淡々としたものである。
「分かったわ。今、賞金と報酬を持って来るわね」
そうしてミランダは席を立ち、しばらくすると大量の金貨を載せたトレイを持って戻ってきた。
とは言っても、流石にゴールドゴーレム50体討伐した時には及ばない。せいぜいが金貨100枚程度であり、神貨150枚までの道のりは遥か遠いようだと実感する。
「はい、確認してちょうだい」
「……確かに」
俺は金額を確認してからアイテム袋へ仕舞った。
「それで、後はルシアちゃんとのパーティー登録だったかしら?」
「ああ、頼む」
「よろしくお願いします、ミランダさん」
何を言われるまでもなく、ルシアが自らの冒険者カードを差し出す。
それを受け取って俺のカードと共に何やら機材に通して作業すると、あっという間に登録は完了だ。
「はい、これで良いわ。あ、それと」
返却されたカードを受け取ると、ミランダがついでとばかりに告げた。
「ヴァン、今回の依頼と賞金首の討伐で、あなたのランクが上がったわ。おめでとう、今日からCランクね」
「わあ、おめでとうございます、ヴァンさん!」
「ああ、ありがとう」
二人に礼を返す。
遂に冒険者ランクもCランクにまで上がったようだ。あと一つ上がれば、ゴルディアス鉱山の深い場所まで入っていけるようになる。
冒険者ランクは依頼と討伐の実績によって上がっていくから、このまま活動を続けていけば、そう遠くない内にBランクまで上がれるだろう。
ちなみに、現在のルシアのランクはEランクである。
ともかく、その後、ギルドでの用事を終えた俺たちは依頼を請けることなく外へ出た。
今日向かう場所は、すでに決まっている。
「じゃ、行くか」
「はい! 『魂の修練場』ですよね?」
「そうだ。そこで今日中に、ルシアのレベルを最大まで上げる」
向かうのはルシアと初めて出会った思い出の場所でもある、『魂の修練場』だ。
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